長崎大学大学院 移植・消化器外科 江口 晋 教授 / 山之内 孝彰 講師|医療法人同仁会小林病院 大野 毅 副院長

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臨床研究がスタート
圧迫療法の可能性

【えぐち・すすむ】 1992 長崎大学医学部卒業 1994 米国CedarsSinai医療センター外科 2003 オランダGroningen大学病院 2012長崎大学移植・消化器外科教授
【やまのうち・こうしょう】 1996 長崎大学医学部卒業 1997 長崎県立島原温泉病院外科 2003 米国Albert Einstein医科大学Researchassociate 2015 長崎大学移植・消化器外科講師
【おおの・つよし】 1992 大分大学医学部卒業 1994 麻生飯塚病院1999 大分大学附属病院 2002 長崎大学移植・消化器外科 2006 五島中央病院 2010 長崎市立市民病院外科医長 2014 長崎県島原病院外科医長 2015 医療法人同仁会小林病院副院長

 長崎大学移植・消化器外科では「乳がん患者におけるドセタキセル誘因末梢(しょう)神経障害に対する圧迫療法」をテーマに臨床研究を進めている。同研究について移植・消化器外科の江口晋教授、同科の山之内孝彰講師、客員研究員で医療法人同仁会小林病院の大野毅副院長が語った。

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―臨床研究の内容は。江口教授(以下・江口)

 乳がんの患者さんに抗がん剤「ドセタキセル」「アブラキサン」などを投与すると、手足のしびれなどの末しょう神経障害が生じることが報告されています。

 今回の臨床研究ではドセタキセル治療を受ける患者さんに医療用スリーブとむくみ防止用ストッキングを投与直前から24時間、両腕両脚に装着してもらいます。そしてスリーブ・ストッキングを装着していない患者さんと比較して、末しょう神経障害の発症頻度や程度を比較します。

―研究開始の経緯は。

江口 この圧迫療法は、大野先生が2012年から長崎市立市民病院で取り組んできました。これまで7例を実施しています。

 当科の山之内先生がチームリーダーとなり、大野先生と共同で6月から、研究を開始しています。

大野副院長(以下・大野)

 2010年に抗がん剤「アブラキサン」が発売されました。私も患者さんに対して使用していたのですが、投与後に末しょう神経障害を起こす人の割合が、それまで使っていた抗がん剤よりも多いとの印象を受けました。

 私が圧迫療法の存在を知ったのは2011年に名古屋で開催された「第49回日本癌治療学会学術集会」です。ポスターセッションで圧迫療法について発表されていました。

 当時、患者さんの中にはアブラキサン投与後、手足がしびれて動けなくなってしまう人が数多くいました。「副作用で困っている人を助けたい。効果があるかもしれないものは何でも試してみよう」と考え、そのころ勤務していた長崎市立市民病院で開始したのです。

 私が実施したのは、抗がん剤投与の直前から24時間、加圧ストッキング(Stoking)と弾性スリーブ(Sleeves)を着用し、かつ予防薬(Selected Prophylatic Drugs)である牛車腎気丸エキス顆粒やメコバラミン、ラフチジンなどを投与するというものです。

 私はこの治療法を三つの頭文字を取って「3S」と名付けました。

 抗がん剤投与が3週間に1度。それを1クールとして、4クール12週間にわたって、3S療法を提供した群と何もしていない群とで末しょう神経障害のグレード(重症度)を比較しました。

 すると3S群の方が何もしていない群より末しょう神経障害グレードが低いという結果が出ました。コントロール群のCTCAEでの末梢神経障害グレードにくらべて、3S群の末梢神経障害グレードが優位に抑制されており、その効果が表れている可能性を示しました。(表)

 また抗がん剤の使用によって末しょう神経障害が生じると、回復に長い時間を要するため、抗がん剤の投与量を減らさなければなりません。しかし、3Sを実施した患者さんに関しては、理想量の96.6%投与できたという結果も出ています。

 末しょう神経障害は血流に関連していると言われています。そこで私は皮膚血流を計測することにしました。

 下肢皮膚ドップラー血流計で、抗がん剤治療中の患者と治療をしていない人とでストッキングを履く前と履いた後の皮膚血流を測定。

 すると抗がん剤治療中の人もそうでない人も、ストッキングを履くと皮膚血流が回復するという結果が出ました。特に抗がん剤治療中の患者さんは、その結果が顕著に表れました。

―大野先生の研究と今回の研究で、異なる点を。

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山之内講師(以下・山之内) 今回の臨床研究で使用する抗がん剤は「ドセタキセル」です。大野先生が使用していた「アブラキサン」と同じタキサン系の抗がん剤で、作用機序はほぼ同じ。今回は私たちの施設で頻用されているドセタキセルを対象としました。

 圧迫療法は市販のスリーブ、ストッキングを用いることができるので、医療用に特別に開発されたものと比較して価格が安いというメリットがあります。乾燥によってまれに皮膚にかぶれが出ますが、非常に低侵襲な療法だと言えるでしょう。

 抗がん剤の投与によって神経組織が損傷します。すると血流量が減り、足のむくみが生じ、そこに抗がん剤が滞留してしまうことが考えられます。

 さらに抗がん剤を投与することでむくみが悪化し、末梢神経障害を発症してしまう。そんな考察を立てました。

 ストッキングを履くことで、むくみが取れ、抗がん剤の滞留もなくなる。とてもわかりやすい構図だと思います。

 大野先生が実施した3Sは7症例で、圧迫療法と予防薬の併用でしたが、今回の臨床研究では圧迫療法のみでの効果を検証します。2020年3月までの間に40症例を集める目標です。

 抗がん剤による末しょう神経障害に悩むのは、乳がんの患者さんだけではありません。

 圧迫療法が抗がん剤投与後の末しょう神経障害の緩和に効果があることが立証されれば、肺がん、胃がん、頭頸部がんなど、さまざまながんと闘う患者さんの苦しみを和らげ、さらには予定通りの治療の完遂にもつながると思っています。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/surgery2/


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