佐賀大学医学部 歯科口腔外科学講座 山下 佳雄 教授

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キーワードは「咬合」医科歯科連携の強化を目指して

【やました・よしお】 福岡県立明善高校卒業1992 九州大学歯学部卒業 1996 医学博士(佐賀医科大学大学院医学研究科免疫血清学) 米Oklahoma Medical ResearchFoundation勤務 1998 佐賀医科大学医学部(現:佐賀大学医学部)附属病院歯科口腔外科 2003 独Friedrich-Alexander大学Erlangen-Nuremberg顎顔面外科2008 佐賀大学医学部歯科口腔外科学講座准教授 2016 同教授

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―歯科口腔外科の役割は。

 「歯科口腔外科」が携わる疾患は、口腔内に発生した良性・悪性腫瘍、顎(がく)変形症、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)、交通事故などによる顎顔面外傷、歯性感染症、顎関節症などさまざまです。

 これら疾患の治療には、いずれも顎骨や歯が関与します。また「咬合」が重要なポイントとなります。われわれは「歯科医師」ですので、治療に当たって機能・審美性の回復はもちろん、「咬合」にも十分、配慮しています。

―得意とする分野は。

 デンタルインプラントを使った顎骨再建です。

 例えば、口腔がんのため顎骨、歯肉、歯を欠損した患者さんは、そのままの状態では咀嚼(そしゃく)や発音といった機能に問題が生じてしまいます。

 そこで機能回復のために患者本人の骨や人工材料を使って顎骨を再建。喪失した歯の代わりにデンタルインプラントを再建骨に埋入し、機能と審美性を回復させています。

 あごの骨は、非常に複雑な形態をしています。術後に、できるだけ生理的な形態に近づけられるよう、コンピューターや3Dプリンターを使って顎顔面模型を作製し、手術のシミュレーションをして、手術の精度を高めています。

 当科がデンタルインプラントを導入したのは1989年で、約30年の臨床経験があります。特に口腔外科疾患の治療に積極的に活用してきました。

 2012年には、口腔外科疾患の一部(顎骨再建が必要となった症例など)に対してインプラント治療が保険適用となりました。保険での症例は多くが口腔がんや口唇口蓋裂の患者さんです。

 もう一つ、他県からも治療依頼があるのは顎顔面補綴(ほてつ)治療です。特に顎顔面インプラントを活用したエピテーゼ(人工物)による顔面修復治療に注力してきました。

 同治療では、がんなどで眼窩(がんか)部や鼻に欠損が生じた患者さんの整容性とQOLを高めるために、特殊なシリコンで作った皮膚、鼻、目を装着します。

 従来は、接着剤や両面テープで貼りつける方法が主流でしたが、維持力が低く、安定性にも欠けるといった欠点がありました。当科では装着するエピテーゼの安定性を確保するために顔の骨に特殊なインプラントを植え込み、維持に用いています。

―全国で医科歯科連携が進んでいます。

 当院でも、2009年に横断的診療班として「口腔ケアサポート班」を立ち上げました。歯科医師、歯科衛生士、看護師、薬剤師、栄養士で構成され、主に人工呼吸器関連肺炎や術後の感染症予防を目的に活動しています。

 寝たきりの状態や、人工呼吸器を装着している患者さんの口腔管理が必須であることは周知されてきましたが、技術的に難しい。適切なケアがされないと、重大な事故につながります。

 現在、週1回、ICU(集中治療室)、ECU(救命救急治療室)をラウンドし、ベッドサイドでの口腔ケアを実践しています。さらに、院内の看護師のスキル向上のため、定期的に勉強会も開いています。

 一方で、手術、抗がん剤、放射線治療を控えている人、顎骨壊死の副作用を起こしやすいビスホスホネート(BP)製剤を使う予定の入院患者さんに対しては、できるだけ外来で口腔内をチェックし、必要に応じて治療しています。

 佐賀県には、当院を含め四つのがん診療連携拠点病院があり、医科歯科連携の中核をなしています。県歯科医師会と協力して口腔環境改善に努めているほか、口腔医療に関する勉強会や市民向け講演会を通して、啓発活動にも努めています。

―医局の今後については。

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 3代目教授となって、9カ月ほど経ちました。世界に通用する、水準の高い医局にしたいと夢を持っています。しかし、現実はなかなか厳しい。「口腔外科」への入局者が年々、減っていることに危機感を覚えています。

 近年、疾患の多様化、高度技術の導入と大学病院としての役割、責務は増える一方です。今後、人材の確保が急務だと考えます。

 歯科医師は、卒後1年間の臨床研修が義務付けられています。研修終了後、多くが開業医の道を選んでいるのが現状です。

 「口腔外科学」に興味を持ち、大学に残ってもらえるよう、学生のころから「口腔外科の魅力、やりがい」を伝えていく責任があると思っています。また大学が魅力ある働き場であるよう、環境を整えなくてはならないとも思います。

 1883(明治16)年に歯科医籍が作られるまで、歯科は医学の中の一つでした。「なぜ歯学だけが医学の分野から離れてしまったのか?」「医科と歯科の教育カリキュラムを見直すべきだ」と唱える人もいます。

 将来、日本の医療現場において医科と歯科がどのような変貌を遂げていくのか興味がつきませんが、少なくとも今まで以上に連携を強めた、チーム医療が求められると考えます。そのチーム医療の歯車の一つとして、われわれ口腔外科が役割を担えればと願っています。

佐賀大学医学部 歯科口腔外科学講座
佐賀市鍋島5-1-1
TEL:0952-34-2397(医局)
http://www.saga-u-oms.jp/


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