愛媛大学大学院 医学系研究科医学専攻 病態制御部門 外科学講座 消化管・腫瘍外科学分野 渡部 祐司 教授

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患者さんにとって最適な低侵襲治療を提供

【わたなべ・ゆうじ】 1983 愛媛大学医学部卒業 同附属病院研修医 1988 愛媛大学大学院医学系研究科博士課程卒業 ドイツGöttingen 大学生化学研究所Hannover医科大学で臨床・研究1990 愛媛大学医学部附属病院第二外科助手 1997 同講師2004 愛媛大学医学部附属病院助教授 2009 同消化管・腫瘍外科教授 2011 同副病院長(経営管理担当)

 愛媛大学消化管・腫瘍外科学分野では、低侵襲治療に積極的に取り組んでいる。

 消化器がんに対する低侵襲手術や現在の取り組みなどについて渡部祐司教授に聞いた。

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◎縦隔からアプローチ

 食道がんの手術は開胸手術も内視鏡下手術も通常、胸部右側からアプローチします。すると、右肺が食道への機器到達の妨げになる。そこで、一般的な食道がんの手術では、右肺を一部虚脱させることでスペースをつくり、食道を切除。同時に、リンパ節を郭清し、最後に胃を吊り上げて残った食道とつなぐのです。

 ただ、この手術はあくまでも肺が十分に機能している患者さんにのみ適用可能です。呼吸機能が低下した人は、片肺状態での手術に耐えられないからです。

 その場合は、抗がん剤や放射線治療などで対応してきました。

 現在取り組んでいるのが頚部、及び横隔膜をつなぐ「縦隔」経由で内視鏡を使ってアプローチする手術方法です。この手術法を用いれば、肺に侵襲を加えず食道を切除できます。

 このアプローチは、従来学んできた手術法と異なることから、新たな解剖学的理解が必須となるため、現在、キャダバー(献体)を用いて、術式の安全性を確認中です。年内の臨床での導入を目指しています。

◎来年、4月に保険適用も

 昨年、手術支援ロボットを用いた胃がん手術を先進医療Bで実施できる施設として厚生労働省から認可されました。

 当科を含む全国約10施設での臨床試験により330例のデータ集積が終了し、現在解析が進められています。

 おそらく来年4月には保険収載されるでしょう。そうなると、これまで以上にロボット手術の件数が増えると予想されます。

 ただ、当院は手術支援ロボット「ダビンチSi」による前立腺がんの手術件数がとても多く、胃がんの手術件数が増えてしまうと対応できないおそれがあります。

 そこで最新式の「ダビンチXi」の導入に向けたワーキンググループを立ち上げ、話し合いを進めている最中です。

 私は日本ロボット外科学会が定める「Robo-DocPilot(ロボット外科専門医)」に 認定されています。胃がんのロボット手術が保険収載となり、手術件数が増えることで合併症が増えないように、安全で確実な手術が提供できるように努力していきたいと思います。

 今後、当教室は直腸がんと食道がんのロボット手術を安全に実施できる施設を目指したいと考えています。

 直腸がんが先進医療に認定され、将来的に保険収載されるようになれば、前立腺がんのようにロボット手術が直腸がんの標準的な治療になることが予想されます。

 現在、ロボット支援手術の指導的施設である静岡がんセンターに教室員を派遣しており、来年戻ってくる予定です。来年からは直腸がん手術にもこれまで以上に力を入れようと思っています。

 今後、ダビンチを用いた手術が増加するので、開腹手術、内視鏡だけでなく、ロボット手術の講義にも時間を割く必要があるでしょう。

 しかし、ロボット手術が普及したからといって従来の手術がなくなることはありません。従来の手術手技に、ロボット手術が選択肢の一つとして加わるといったイメージの方が正しいでしょう。

 新しいものが出たから、すべてそれにシフトするというのではなく、患者さんにとって最適な治療を選択し、提供することが必要だと思います。

◎子どもは国の宝

 現在、当医局の小児外科分野には医師が一人しかいません。九州大学小児外科学教室から派遣していただいていた医師は佐賀大学の小児外科開設のため7月に異動しました。

 少子高齢化の時代とはいえ、重篤な疾患のお子さんに対応するには小児外科の存在が不可欠です。

 子どもは国の宝です。学生には「一人のお子さんの命を救えば、その人の残りの長い人生を救うことができる。またその人の子ども、孫を含めたら数十人の命に関与する重要な仕事である」と言っています。

 ニーズは高いけれども、全国的に医師数が不足している領域です。ぜひ多くの人に小児外科に進んでいただきたいですね。

◎腹腔鏡下スリーブ胃切除術

 11月5日(日)に日本消化器病学会四国支部の第32回教育講演会を松山市のリジェール松山で開催。私が会長を務めます。テーマは「消化器疾患治療における内科・外科の協同と共同」です。

 同講演会では胃がん、肝臓がん、大腸がんの外科治療や化学療法、肥満治療についての講演を予定しています。

 がんの講演の中に肥満治療が交じっているので、違和感があるでしょう。しかし肥満はがん発症のリスクを高めてしまうのです。

 私たちは今年の1月、愛媛県で初めて肥満治療のための腹腔鏡下スリーブ胃切除術を実施しました。これは腹腔鏡で胃底部、胃体部、前庭部の外側を切除し、胃の容量を小さくする手術です。この手術をすることで、一度に摂取できる食事量を制限でき、体重の減少や代謝障害の改善につながるのです。

 腹腔鏡下スリーブ胃切除術をすれば糖尿病患者は、術後のインスリン投与が不要になるほどの著明な改善を見ることもあります。

 内科的治療を先導してきた日本糖尿病医療学学会も、手術を治療のオプションに追加しています。今後、従来よりも軽い肥満度の患者にも手術の適応が拡大されていくと思います。外科医が糖尿病などの代謝疾患治療の一翼を担う時代が来たわけですので、安全な治療を提供できる体制作りが必要になります。

 肥満手術は外科だけでは完結しません。リバウンドする場合もあるので、患者さんのメンタルサポートのために臨床心理士の力を借りなければいけないし、管理栄養士の介入も必要であることは言うまでもありません。

 当院では、胃外科のほか糖尿病内科、麻酔科蘇生科、整形外科といった各科医師と看護師などの多職種連携で患者さんのケアをする体制を整えています。

◎不可能はない

 外科は日々自分の成長を実感できる科だと思います。スキルアップを目指して努力すれば、症例ごとに進歩を実感できるはずです。

 一方、スキルアップに加え、自らが得た技を後輩に伝承して育てるというやりがいもあります。

 医療の世界は日進月歩です。今の常識が未来永劫(えいごう)続くということはあり得ません。それを理解し、常に前向きに一歩一歩前進していくことが必要です。

 私は医療で実現不可能なことは、ほぼないと考えています。今、不可能だと思われていることも、それは現時点での技術的な問題か、アプローチの仕方が誤っているだけなのです。

 アイデアは必ず形になります。そのアイデアを発展させることで、これまで治らないと思われていた病気を治すことができるはずです。

 一見、突拍子もないように思えるアイデアこそが医療の進歩につながっていくのです。

愛媛大学大学院 消化管・腫瘍外科学分野
愛媛県東温市志津川
TEL:089-964-5111(代表)
http://www.m.ehime-u.ac.jp/school/surgery3/


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