心を一つにして前進を
今年で100周年を迎えたIHI播磨病院。西川梅雄病院長に次なる100年に向けた思いなどを聞いた。
◎100年の歩み
1917(大正6)年6月に播磨造船所附属藪谷医院として開設しました。第一次世界大戦の真っただなかであり、ロシア革命が起こってロマノフ王朝が崩壊した年です。
その後、十月革命でソビエト連邦が成立、1991年には、そのソビエト連邦が崩壊し、現在のロシア連邦になったことを考えると当院が存続し続けてきた100年という時の長さを改めて実感しますね。
幸いなことに第二次世界大戦の空襲被害からも免れ、1959(昭和34)年には、当時、まだ珍しかった鉄筋コンクリート造りの病院に建て替えました。
1995年には阪神・淡路大震災があり、15人のけが人を受け入れ。2009年に病院を建て替えて現在に至ります。
7月8日には100周年記念式典を相生市文化会館「なぎさホール」で開催しましたし、6月26日には記念碑の除幕式、5月19日にはしだれ梅の記念植樹もしました。
梅は1月から2月という寒い時期に花を咲かせます。そして、5月に実がなります。しだれ梅は枝が下がり実がなればなるほど頭(こうべ)を垂れる。私たちもそんな謙虚な気持ちを忘れてはいけないと思い、植樹したのです。
梅の花ことばには「高潔」「忍耐」「忠実」などの意味があります。そんな病院にしていきたいとの思いが強いですね。
◎シームレスな医療を提供
急性期の一般病床130床、回復期リハビリテーション病床28床と地域包括ケア病床22床があります。患者さんに急性期から回復期までシームレスな医療の提供が可能です。
また急性期病院から回復期病院に移るときに患者さんが受ける「引っ越しうつ病」のような心理的負担を最小限にとどめることができます。
◎気軽に来てもらえる外来に
当院には16の診療科があります。内科では一般内科、呼吸器、循環器、脳神経領域を中心に糖尿病、血液疾患など幅広い領域を扱っています。
また従来の内視鏡よりも精密に見える拡大内視鏡を県内で初めて導入したのは当院の内科です。
私の専門でもある整形外科では一般的な外傷、骨折のほか、関節疾患、骨粗しょう症、末梢神経障害、スポーツ外傷などに力を入れています。
整形外科手術は年間約300例。手術の半数近くが65歳以上の高齢者です。
その他の科でも、地域の中核病院としての機能を十分果たしているという自負があります。
ただ、この地域はクリニックの数が少ないので、われわれがクリニックの役割も担わなければなりません。だから患者さんに気軽に来てもらえるような外来を目指しています。
◎出来高払い方式を採用
包括払い方式(DPC)ではなく出来高払い方式を採用しています。
DPCは疾病ごとに1日当たりの診療報酬が決まっているため医療の効率化や標準化が図れるという一方で、一定額の中で利益を出さなければならないので過少診療につながる可能性があります。
出来高払いの場合は実際に提供したサービスの報酬点数を1点ずつ積み上げて支払額を算出する方法です。
相生市の高齢化率は34.3%(2015年)と全国平均を大きく上回っています。当院にも高齢の患者さんがたくさんいらっしゃいます。
高齢者は合併症が多く、複数の科で治療を受けることもしばしばです。その場合、DPCだと効率を求めるあまり、過少診療にならないとも限りません。個人的には高齢者の患者さんが多い病院は出来高払いの方が良いと思っています。
医薬分業が進み、院外処方をする病院が増えています。院内での患者さんの待ち時間の短縮につながる反面、院内処方に比べて割高、薬局への移動を強いられる、高齢者は複数の医療機関を受診するため薬の管理が難しくなる、などのデメリットがあります。
そういった院外処方のデメリットを踏まえ、当院では院内処方をするようにしています。
もちろん、院外処方箋を依頼されればお書きします。しかし会社勤めなど、忙しい人以外は、院内処方の方がよいのではないかと思っています。
◎ペーロン競漕
当院がある相生市では毎年5月に「ペーロン祭」というお祭りが開催されています。そのペーロン祭のメインイベントとして龍船によるペーロン競漕があります。
当院はこれまで10回参加して、そのうち7回は私が艇長を務めました。
ペーロンの醍醐味(だいごみ)は乗り手全員の櫂(かい)のリズムがそろったときに初めてスピードが出ることです。
病院も全員が気持ちを一つにする必要があります。いくら良い設備が整った病院でも職員の気持ちがばらばらでは前に進むことはできません。医療従事者だけでなく清掃員から警備員まで全員の心を一つにしてこそ、患者さんに良い医療を提供できるのです。
◎たゆまぬ変化を
当院の経営状態は比較的良好な状況が続いています。それを今後も続けていく必要があります。ただ、今までと同じことをしていれば良いというわけではありません。
当院の親会社であるIHIは、かつては造船をなりわいとしていましたが、今は、航空機のエンジン、ボイラーなど多様な製品を造っています。
このように組織には絶えず「チェンジ」する姿勢が求められます。私たちも医療ニーズに応じて絶えず変化をしていくつもりです。
イギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンの名言に「生き残る者は賢いものでも、強い者でもなく変化できる者だ」という言葉があります。これは医療にも当てはまる言葉なのです。
IHI播磨病院
兵庫県相生市旭3-5-15
TEL:0791-22-0380(代表)
http://www.harima-hp.jp/