私の医師人生|第5回 永末 直文氏

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【ながすえ・なおふみ】 1942(昭和17)年、福岡県生まれ。1967(同42)年、九州大学医学部卒業。同大学医学部附属病院にてインターン。翌1968(同43)年、同大学医学部附属病院第ニ外科副手になる。済生会八幡病院外科医員を経て、1972(同47)年、スウェーデン・ルンド大学に留学。帰国後、九州大学医学部附属病院、広島赤十字・原爆病院第ニ外科部長。1986(同61)年に島根医科大学助教授就任。以降、同教授、同病院長。2003年、島根大学医学部長に就任。2005年に退官後、医療法人福満会ふくみつ病院院長。2012年からは同法人のみつみ介護老人保健施設施設長に就任。現在に至る。趣味は乗馬

 広島赤十字・原爆病院で、数多くの肝がんや食道静脈瘤(りゅう)の手術を手掛けた永末直文氏。多忙な日々の中、後の医師人生を左右する転機が訪れる。

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生体肝移植を受けた杉本裕弥ちゃんと永末医師

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島根医科大学赴任後、家族との1枚

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◎山陰へ

 永末氏は、広島赤十字・原爆病院での6年間の勤務で、約200例の肝がん手術を実施。これらの成績は、肝がん治療の向上に寄与したいと思い、すべて欧米の専門誌に寄稿した。

 着実に治療成績は上がり続けたものの、根本的な解決には、「肝移植しかないという思いが消えなかった」(永末氏)という。

 1985(昭和60)年12月、臨床に、論文執筆に、と多忙な日々を過ごしていた永末氏に、1本の電話が入る。

 九州大学第二外科入局当時に医局長を務めていた島根医科大学(現:島根大学医学部)の中村輝久教授(当時)から「助教授として来てくれないか」と依頼されたのだ。

 島根医大は、1都道府県1医科大学構想で1975(昭和50)年に設立されたばかりの新設校。永末氏は、42歳での助教授打診に、「ありがたい」と思う一方で「歴史の浅い大学で自分が思い描く医療ができるのだろうか」との不安もあった。

 そこで周囲の先輩や友人たちに相談。すると、返ってくるのは「田舎の新設医大になぜ行くのか。やめたほうがいい」という否定的な意見ばかりだった。

 しかし、そんな中、ただ一人賛成してくれた友人がいた。福岡市にある福満クリニック(現:ふくみつ病院)院長で、九大の同級生だった福満東馬氏だ。福満氏は「大学病院で宿願の肝移植に挑戦すべきだ」と言ってくれたという。

 「福満君のあの言葉がなかったら、きっと自分の人生は違ったものになっていただろう」。福満氏の言葉に背中を押された永末氏は、「このままでは臨床に追われて実験もままならない。肝臓移植は夢のまた夢だ。島根医科大学という新天地で肝臓移植に挑戦してみせる」という強い決意で、山陰の地に向かった。

◎日本のメイヨー・クリニックに

 1986(昭和61)年4月、島根医科大学助教授に就任。最初に立てた目標が「島根医科大学を日本のメイヨー・クリニックにする」ということだった。

 メイヨー・クリニックは1846年、ミネソタ州ロチェスターに開設された米国屈指の総合病院。治療内容が充実していることで知られ、米国の病院ランキングで毎年上位に名を連ねている。

 メイヨー・クリニック開院当時のロチェスターは、周囲にとうもろこし畑が広がる小さな田舎町だった。

 しかし、クリニックの評判が高まるにつれ、優秀な医師が集まるようになり、全米から患者も訪れるようになった。

 それに伴い、クリニックの前に患者向けのホテルが建ち、働く場所ができたことで人口も増え、クリニックを中心に町が栄えていったのだった。

 永末氏は「出雲という田舎であっても、良質で高度な医療を提供すれば全国から患者さんが集まる。それが町の発展にもつながる」と考えた。

 医局員たちに「出雲の地で大都市の病院と同等か、それ以上の最先端医療を提供しよう。メイヨー・クリニックはそのお手本だ」とことあるごとに言っていたという永末氏。

 「その考えが少しずつ浸透し、後に生体肝移植を実施する土壌が醸成されるきっかけとなったのではないか」と振り返る。


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