「課題は待機期間」
7月19日、国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)が、「7月12日に心臓移植件数が100例に達した」と発表した。
同一施設での心臓移植件数としては、国内最多。8月15日現在、さらに2例が実施され、いずれも経過は順調という。
同センターは、1999年、国内2例目、3例目となる心臓移植を実施。これまでに2例同日移植を2回、成人先天性心疾患患者に対する移植、6歳未満の小児への移植など、さまざまな症例に対応してきた。
心臓移植後の10年生存率は、95.2%。
同センターは、今後の課題に「待機期間の短縮」を挙げる。現在、移植希望者が登録してから、実際に移植を受けられるまでの待機期間は平均3年程度だといわれる。心臓移植の認知度が高まり「待機人数が増加し、待機期間が長期に及んでいる」という。
そのため、一刻も早く移植を受けるために海外へ渡るケースが、小児を中心に見られる。
同センターは解決のためには、「ドナーの増加が不可欠」(担当者)とし、医療関係者も含めた「ドナーを増やすための啓発が一層求められる」と強調している。
心臓移植を巡っては、1967年に、南アフリカで世界で初めて実施。国内では、翌年の1968年に札幌医科大学で実施されたものの、脳死判定や移植患者の選定などが議論となり社会問題に発展。それ以降、しばらく日本では心臓移植は行われなかった。
しかし、世界各国での臓器移植の実情を受け、国内世論も変化し、1997年に臓器移植法が成立、施行され、国循でも移植が始まった。
ただ、本人の同意が必須であるなど、その要件が厳しく、国内での移植件数は伸びなかった。
世界各国でも、臓器の提供者が足りず、2008年国際移植学会は「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言を発表。海外への渡航
による移植に頼っていた国内では臓器移植法の改正に弾みがついた。
2009年7月に改正臓器移植法が制定され、翌2010年に施行。家族の同意による脳死臓器提供や15歳未満の小児からの臓器提供も可能となり、国内の心臓移植の件数は大きく増加している。
公益社団法人日本臓器移植ネットワーク(東京都港区)のまとめによると、国内では、275件(1998年度〜2015年度)の心臓移植が実施されている。