一般社団法人 八代郡医師会 八代北部地域医療センター 吉田 光宏 院長

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つながることで存在価値を高める

【よしだ・みつひろ】 1989 熊本大学医学部卒業 熊本大学医学部附属病院第二外科入局 1990 熊本市民病院1991 熊本中央病院 1997 熊本大学医学部附属病院小児外科 2002 東京都立清瀬小児病院 2004 八代郡医師会立病院(現:八代北部地域医療センター)診療部長2010 同院長

 4月、八代郡医師会立病院は「八代北部地域医療センター」に改称。地域医療連携に不可欠なピースとして、機能強化を進めている。

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―地域での役割や、力を入れている点について。

 八代地域、芦北地域、球磨地域の熊本県南エリアでは、小児外科を標榜する医療機関がほとんどありません。

 この地域における小児の鼠径(そけい)ヘルニアの手術は、ほぼ全例を当院が手がけています。超音波検査による精度の高い診断、低侵襲手術など、「熊本県でナンバーワンの鼠径ヘルニア手術」を目指しています。

 2007年には「鼠径ヘルニアセンター」を開設。乳児から高齢者まで、専門チームによる手術を実施しています。引き続き、この強みを生かしていきます。

 今後の柱はリハビリテーションの強化だと考えています。ここ数年間、そのためのスタッフの増員も進めてきました。

 私自身、「熊本NST(栄養サポートチーム)研究会」の理事を務めるなど、栄養をしっかり管理するリハビリのあり方に大きな関心を寄せています。

 院長に就任後、最も苦労したのは医師の確保でした。一時は6人から3人に半減。熊本大学のバックアップにより、現在は常勤医師4人と非常勤医師で効率的に対応できる体制を敷いています。

 さらに深刻だったのが、看護師不足の悩みです。退職者が多いことで個々の負担が増したり、若い看護師が高度な医療環境を求めて基幹病院に移ったり、離職率は高まるばかりでした。

 私が視察した病院の中には、看護師不足によって、機能を縮小せざるを得なかった機関も少なくありませんでした。私としては当院がその選択をすれば、きっと先はないだろうと感じました。

 3年前に、熊本総合病院に勤務していた上村みき子看護師を看護部長として迎え、当院は職場環境の改革に乗り出しました。働く場としての魅力を高め、看護師を積極的に増やす方向へかじをきったのです。

 上村看護部長が中心となり、各種の研修や学会への参加、認定看護師の取得など、教育面のバックアップを充実させました。小規模な病院だからこそ、「自由に好きな勉強ができる」というイメージに転換していったというわけです。

 柔軟な勤務時間など、ワークライフバランスに配慮した仕組みも取り入れました。夜勤の体制も46床に対して4人の看護師を配置。最大で14%ほどだった看護師の離職率は2%強になりました。

―今回の改称の理由を教えてください。

 当院が立地するこの地域は、かつて宮原町といいました。

 隣町の竜北町、坂本村、千丁町、鏡町、東陽村、泉村との7町村で構成された「八代郡」の人口は3万人余り。同郡には病院がなかったことから、高度な医療を必要とする患者さんは、八代市内の八代総合病院(現:熊本総合病院)と熊本労災病院で治療を受けていました。

 そこで八代郡医師会は、2000年、地域医療を担う病院として前身の八代郡医師会立病院を設立したのです。

 熊本大学小児外科(現:小児外科・移植外科)の初代教授(1992〜2000年)を務めた世良好史院長のもと、一般病棟20床、療養病棟60床でスタートしました。

 小児外科をはじめ、がんの手術にも注力。急性期医療のニーズが高まるにつれて一般病床を増やし、回復期、慢性期にも対応するケアミックス病院へと転じていきました。

 2005年、「平成の大合併」で坂本村、千丁町、鏡町、東陽村、泉村は八代市に、宮原町と竜北町は「氷川町」となりました。

 現在も私たちの医療圏は旧八代郡です。しかし、いまや「八代郡といえば氷川町」とのイメージが定着。病院名と実際の役割との間にかい離が生じました。

 その溝を埋めようと今年4月、「八代北部地域医療センター」に改めたというわけです。

 もう一つ、「地域医療センター」という名称に込めた思いがあります。

 地域の医師会の先生方は、住民に寄り添い、生活に密着した医療を実践しています。

 当センターは旧八代郡で唯一の病院として、地域医療と基幹病院が提供する高度医療の架け橋となり、さらに医療サービス、福祉サービスをつなぐ役割が期待されています。

 地域包括ケアシステムの中で、私たちが「医療・介護連携のかなめ」になる。その決意を、あらためて表現したというわけです。

 当地域の特徴は、八代市と氷川町、八代市医師会と八代郡医師会の4者が、非常に親密な関係にあることでしょう。

 地域包括ケアシステムをつくるために、私たちは各地の先進的な取り組みを見学しました。共に考え、話し合いを重ねて距離を縮めたのです。

 4月、八代市役所の健康福祉政策課内に、4者の職員が常駐する「八代地域在宅医療・介護連携支援センター」を開設しました。医療、介護関係者の連携強化の拠点として、情報発信やネットワーク拡大に努めています。

―院長の医療への考え方を聞かせてください。

 もともとへき地医療に興味があり、熊本大学医学部に進みました。

 小児外科教授であった世良前院長の「子どものがんを治すことは次の世代、また次の世代と、未来永劫(えいごう)の命を救うことでもある」との言葉を聞き、小児外科医を目指そうと思いました。

 当院では高齢者の診療がメインとなり、旧八代郡で生まれる子どもの数は年間1000人ほど。小児だけ診る科は成り立ちません。これまでの経験とは、まったく違う医療と向き合っているわけです。

 2004年、当院に赴任した時、「地域が必要としている医療ができるようになろう」と決めました。リハビリテーション認定医やプライマリ・ケア指導医を取得したのもそのためです。

 当初、専門分野から離れることへの葛藤がなかったわけではありません。こだわりを打ち消し、やりがいを見いだすことができたのは、へき地医療を志していた原点があるからかもしれません。

 当院のコンセプトは「YCM(ヤツシロコミュニティーメディカルセンター)」です。「C」には、「Cooperation(連携)」の意味も込めています。

 自身で完結するのではなく、他者とつながることで存在価値を高める。私自身が持ち続けているテーマでもあります。

一般社団法人 八代郡医師会 八代北部地域医療センター
熊本県八代郡氷川町今151-1
TEL:0965-53-5111
http://ygmahp.ec-net.jp/


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