【眼科特集】浜松医科大学眼科学講座 堀田 喜裕 教授

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「医の心」を持った医師を育てたい

【ほった・よしひろ】 1983 順天堂大学医学部卒業 同医学部眼科学専攻生 1984 同眼科助手 1985 日本赤十字社医療センター眼科 順天堂大学医学部助手(東京大学脳研究施設へ研究員として出向)1986 米国国立保健研究所Visiting Fellow 1987 同Visiting Associate1989 順天堂大学医学部眼科助手 1991 東京自動車連合健康保険組合柳橋病院眼科医長 1993 順天堂大学医学部眼科非常勤講師1996 同講師 1999 名古屋大学医学部眼科講師 2000 浜松医科大学眼科学講座教授 2007 静岡県アイバンク理事長兼務 2008-2010浜松医科大学附属病院副病院長兼務 2010 順天堂大学医学部眼科客員教授兼務 2016 浜松医科大学保健管理センター長兼務

 浜松医科大学眼科学教室は1976(昭和51)年開講。2000年に就任した2代目の堀田喜裕教授は「眼科全般にわたる質の高い医療」「地域貢献」を教室の目標に掲げる。特徴や今後の取り組みについて聞いた。

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◎幅広い領域に対応

 大都市の大学病院の中には、眼科の一分野のみに重点を絞っている病院もあります。しかし、われわれは、角膜移植、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、斜視手術など、眼科のあらゆる領域に対応できる体制を整えています。年間手術件数は1300件弱です。

 当教室の佐藤美保病院教授は、世界斜視学会副会長とアジア小児眼科学会副会長を務め、斜視分野におけるアジアのリーダーと言っても過言ではありません。全国から患者さんがお見えになります。また、国内および海外からもたくさんの医師が研修に来ます。

 私が専門としている網膜色素変性症は遺伝性疾患で、現在のところ治療法がありません。当教室では次世代シーケンサーを使って、原因遺伝子の解析を進めています。

 2012年には、わが国の網膜色素変性症に最も頻度の高い原因遺伝子を発見することができました。解析をさらに進めて、治療の方向性を見いだしたいですね。

 私が眼科医になったばかりの30数年前は、網膜色素変性症は遺伝性疾患だということ以外、何も分かっていませんでした。

 しかし、今は網膜色素変性症の原因遺伝子の3割ぐらいは分かる時代になりました。

 原因遺伝子が分かれば、患者さんと、そのご家族に対して遺伝カウンセリングができますし、ある程度の予後予測もできます。患者さんの中には原因が分かっただけでも前進だと言って、すごく喜んでくれる人もいるんですよ。

 私の次の世代にはぜひ、網膜色素変性症の原因遺伝子別の治療薬を開発してほしいと思います。そうすれば、たくさんの患者さんを救うことができるでしょう。

◎人を育てる

 41歳の時、教授に就任しました。それから17年、一貫して「人を育てる」ことに注力してきました。

 今年も昨年も入局者は4人。教室員は総勢40人。県内各地の病院に医師を派遣しているので、地域の眼科医療に微力ながらも貢献していると自負しています。

 私の好きな言葉は「患者さんを離れた医学はない」です。患者さんと接点がない診療、研究は、医学部においてはありえないと考えます。

 医師は、どうしても治療が可能な患者さんの方を向きがちです。しかし、眼科疾患の中には、網膜色素変性症のように現代の医学ではどうしても治療できない疾患があります。

 治療法がある患者さんだけでなく、ない患者さんにも寄り添えるような「医の心」を持った医師を育成したいと思っています。

◎単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ

 白内障の眼内レンズには単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。考え方はそれぞれだと思いますが、当教室では単焦点眼内レンズを使用しています。

 単焦点眼内レンズの焦点は一点ですので、どこにピントを合わせるか最初に決めます。例えば、近くにピントが合うようにした場合、遠くを見る時はメガネを着用する必要があります。

 一方、多焦点眼内レンズは、遠くも近くも見ることができます。しかし、単焦点眼内レンズに比べると誰にでも適応になるわけではないという欠点があります。多焦点眼内レンズが気に入らずに単焦点眼内レンズに入れ替える例があると聞きます。

 また多焦点眼内レンズは先進医療なので、単焦点眼内レンズよりも費用がかかりますが、通常、お金を余計に払ったら、クオリティーが高くなければ納得いかないでしょう。多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズはそれぞれ、利点、欠点があります。患者さんにとって料金に見合ったメリットが十分にあるか、ご検討のうえで選択されることをお勧めします。

◎献眼眼球数日本一

 眼科学講座の教授とともに、静岡県アイバンク理事長や当大学の保健管理センター長などを兼任しています。 静岡県アイバンクの理事長には2007年に就任。10年が経ちました。静岡県アイバンクは、献眼者と、移植希望者の橋渡し役です。たくさんの方々のご協力により、静岡県アイバンクは、ずっと日本で一、二を争う献眼数です。2015年度は全献眼数の15%を占める231の献眼が、静岡県からなされました。

 ただ、移植待機者はまだ全国に1900人余りもいます。引き続きたくさんの方に角膜を供給すべく、努力していきたいと思っています。

 大学の保健管理センター長には、昨年就任しました。当大学で働く職員と、学生の健康管理の責任者ということになります。個人情報保護の見地から詳しいことはここで語ることができませんが、ざっくり申し上げれば、健康診査による疾病予防等よりも、ストレスチェックの導入に代表されるように、メンタル不調のケアの重要性が増しています。

◎眼科の奥深さ

 眼科のいいところは、外科的な診療も内科的な診療もできることです。また手術手技が幅広く魅力的で、結果がいいと患者さんに喜ばれるところもやりがいですね。

 手術技術の差がはっきりと結果となって表れるので、日々修練を積んで、技術を磨く必要があります。高齢者が増えると眼科の需要、特に手術ができる人の需要が増します。

 一生かけてもマスターしきれないくらい奥が深いのが眼科です。一人でも多くの人に眼科を志してほしいというのが私の切なる願いです。

◎次世代の指針になる仕事を

 教授に就任して17年。任期は後7年弱です。

 この17年で眼科の手術件数は倍以上に増えました。大学病院には、広い外来、手術室、十分な設備があります。高度な診療、研究を可能にしてくれた浜松医科大学にはとても感謝しています。

 残る期間で、お世話になった浜松医科大学に何らかの恩返しをしたい気持ちが強いですね。

浜松医科大学眼科学講座
静岡県浜松市東区半田山1-20-1
TEL:053-435-2111(代表)
http://hama-med-ganka.jp/


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