【眼科特集】佐賀大学医学部 眼科学講座 江内田 寛 教授

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地域眼科医療のプロフェッショナルを育成

【えないだ・ひろし】 1994 福島県立医科大学卒業 1998 同大学院修了 2002 九州大学医学研究院助手(眼科学分野)2007 同講師( 眼科学分野)国立病院機構九州医療センター眼科医長・科長 2011 九州大学医学研究院講師(眼科学分野) 2014 佐賀大学医学部眼科学講座教授

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◎教室員が増加中

 佐賀県の眼科医数は80人弱で全国最小規模。人口比でみても全国37位。そのうちの約半数は佐賀市および、その周辺地域にいます。

 当院が担当する診療圏は佐賀県の中でも比較的、眼科医の多い佐賀市に加え、伊万里市、武雄市エリアや県南部が中心です。県北部の唐津市の患者さんの多くは、交通事情からどうしても福岡市を紹介受診することが多く、同様に東部の鳥栖市は久留米市への紹介が多くなります。

 3年半前、教授に就任した時、当教室の関連病院を含む教室員総数は18人と全国の大学の眼科では最小でした。その後、この3年で7人の新人が入局してきて、徐々にですが医局員も増加の傾向にあります。

◎複数のサブスペシャリティーを持つ

 隣の福岡県には四つの大学病院があります。福岡大学は角膜領域が強く、九州大学はぶどう膜炎や眼腫瘍に強いなど、それぞれが比較的、専門領域を前面に押し出して診療している傾向にあります。

 しかし、佐賀県には大学病院が一つしかありません。このような地方の大学では、オールマイティーな診療と、そのための教育が求められます。ですから教室員には、個人が複数のサブスペシャリティーを持つようにとすすめています。

 一人で幅広い領域を担わなければならない反面、臨床能力に長けた医師が育ちやすい土壌だと言えるかもしれませんね。

◎臨床に応用できる研究を

 大学病院の使命は診療、教育、研究の三つですが、地方の大学では特に最初の二つ、「診療」と「教育」に力を入れる必要があります。

 地方の大学病院に課せられた使命は、まずは地域医療を充実させることです。そのためには、地域医療に従事するプロフェッショナルを育成しなければならないのです。

 旧帝国大学など大規模な大学だと人と時間を研究に割ける余裕があります。しかし、地方大学の場合、そうはいきません。研究については、現状では、マンパワー不足や経済的な事情などもあって後手にまわってしまっている状況です。

 ただ、そんな中でも臨床に直結する可能性のある研究には力を入れています。日々の臨床の中で、自分たちが感じた「こういうことができたら」「こういうものが欲しい」との思いを研究に結びつけることは大切なことです。

 実際に必要なものを自分たちで作っていく。それが、今の私たちの「研究」のスタイルであるのかもしれません。

 現在、九州大学工学部と連携で無侵襲の「眼底酸素飽和度測定装置」を開発中です。通常、眼底の血流動態の測定には造影剤を使用し、時にアナフィラキシーなど重篤な合併症に遭遇することがあります。

 この装置を用いることで造影剤を用いることなく、眼底の酸素飽和度のマッピングが可能になり、患者さんへの負担が著しく軽減されます。この開発には、日本医療研究開発機構の助成や、九州大学病院ARO次世代医療センターからの研究支援も受けています。

 また佐賀県発のIT企業との産学連携で、人工知能(AI)、特にディープラーニング(深層学習)を用いた眼底診断支援システムも開発しています。

 現在、大学当局とも折衝をしながら研究開発を推進しています。本システムについては数年以内の実用化を目指しています。

 どちらも他大学や企業と共同研究することによって、臨床の現場で必要なものを効率よく、かつ経済的に研究開発することを念頭に置いています。

◎AIと共存共栄

 今後、医療の現場でもAIの活用が進むでしょう。医師に求められる役割も変化してくることが予想されます。

 それでも手術のセンスや、経験に裏打ちされた勘、人間が持つ微細な手術手技などは人工知能にはまだまだ再現できません。

 これからは眼科医とAIが補完しあい、共存していくことが求められてくるかもしれませんね。

◎地域完結型の眼科医療を目指す

 佐賀大学に赴任して驚いたことの一つに、開業医の先生方と一堂に会する会合が年に1回しか開催されていなかったことがあります。へたをすると、退官まですべての先生の顔を覚えられない可能性もあります。

 この状況を改善しなければと思い、さまざまな会合にもこちらから積極的に参加するようにして、コミュニケーションの深化を図っています。実際に、今では多くの開業医の先生からさまざまなご支援やご意見をいただき診療に反映させています。

 また、ICTを使って、患者さんの診療情報を、連携医療機関が相互に閲覧できるようにした「ピカピカリンク」(佐賀県診療情報地域連携システム)を駆使し、密度の高い地域連携を構築中です。

 あたりまえのことですが、大学病院に患者さんが集中してしまうと十分な対応ができません。そのため地域の開業医の先生方とこのような技術を活用し、高度で、かつ密な連携をとることで、地域完結型医療を目指さなければなりません。

◎QOLを維持する科

 眼科は、整形外科や耳鼻科とともに「患者さんのQOL(生活の質)を維持する科」だと言われています。

 健康寿命の延伸に「見える」「動ける」「聞こえる」というのは大事な要素です。

 外界から入ってくる情報のうちの8割強は視覚から得られています。

 今まで見えていたものが見えなくなると想像したら怖いですよね。患者さんを一人でも救い、QOLを維持することが私たちの役割です。

 これからの少子高齢化社会を考えるとわれわれの活躍の場もさらに多くなることが予想されます。

◎土台づくりの時期

 私が教授に就任した3年前、ある尊敬する先輩から「5年を1スパンとして教室運営をするとよい」とアドバイスされました。

 まず最初の5年は、新たな教室の土台をつくることを目標に取り組むことにしました。具体的にはまず教室員増員と教育と眼科診療の充実です。3年半が経って、ようやくその土台が固まりつつあると感じています。

 次の5年は、この土台をもとに安定した医療を提供すると同時に、われわれが今、研究開発しているものが市場に出るなど、飛躍を期待できる期間だと考えています。

 そこからさらに新しい研究開発に取り組むことが先の目標です。そして、最後の5年は、次の世代にバトンタッチするための期間になると思います。

 今の大学病院のおかれている状況や環境は、私が若いころと比べて大きく変化してしまいました。大学の勤務医の負担も年々、増しているのが実情です。

 その中でも熟成された種が芽を出し、大輪の花を咲かせる。そのための土壌をつくっているのが今の私の仕事です。

佐賀大学医学部 眼科学講座
佐賀市鍋島5-1-1
TEL:0952-31-6511(代表)
http://www.ganka.med.saga-u.ac.jp/Site/Top.html


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