【眼科特集】社会医療法人きつこう会 多根記念眼科病院 櫻井 寿也 院長

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国民の視覚を守る

【さくらい・としや】 1988 奈良県立医科大学卒業 同眼科学教室入局 1994 同大学院修了 1998奈良県立医科大学眼科学教室医局長 2001 多根記念眼科病院 2005 同診療部長 2010 同副院長 2017 同院長

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◎手を痛めてひらめいた

 小学2年生のころ、遊んでいて手を痛めました。母親に連れられて整形外科医院を訪れたのですが、あいにく休憩時間。診療が再開するまで、数時間待たなければなりませんでした。

 母親に痛みを訴えていると、だんだん相手をするのが面倒くさくなってきたのでしょう。「そんなに痛いなら、自分が医者になって治したらええやん」―。

 変な話ですが、「その手があったか」とひらめいたのです。「じゃあ、ぼくお医者さんになるわ」(笑)。病気やケガを治すなんて、面白そうな仕事だなと感じたのです。

 目が治った患者さんは、次に来院されたとき、服装や髪形の雰囲気が変わっていることが多いのです。特に女性は、びっくりするほど華やかさが増します。

 人間の五感の中で、視覚から得る情報量は80%以上もあると言われています。

 目が見えるか、見えないかによって、1人あたりがもたらす経済効果にも差が生じるでしょう。日本国民の視覚を守ることで消費を上げたり、高齢者が活躍する社会づくりに貢献できたりすると思うのです。

 眼科が扱う疾患は生死にかかわるケースが少なく、手術も短時間で終わるものが多い。

 そのため、眼科医は「目だけをみている」「あまり重圧がない」というイメージを持つ方が多いと思います。しかしながら、視覚を失ってしまったら、患者さんやそのご家族の人生におよぼす影響は非常に大きいはずです。

 私たちが背負っている責任は、決して小さくはない。眼科医への理解がもう少し深まってほしいというのが、私の正直な思いです。

 現在、残念ながら眼科医は減少傾向にあります。

 眼科医は「目の総合医」として、診断から治療まで、1人の患者さんと深くかかわることができます。自分がメインの術者になる時期も、他科と比べると早いと思います。

 日本の眼科は世界屈指のレベルです。若い医師には、ぜひ技術を受け継ぐとともに、海外に発信していく役割も期待したい。

 2018年にはミャンマーの眼科医が、当院で研修します。その後、今度は当院のスタッフが現地に行って指導します。このような活躍の場の広がりもあるのです。

 眼科を魅力的だと感じてくれる方が増えてくれることを望みます。

◎高齢化を見据えて開院

 多根記念眼科病院は来年創立30周年を迎えます。

 当時、日本にはまだ欧米のような眼科専門の病院は数少なかった。

 グループ病院の多根総合病院を創立(1949年)した多根要之助・前きつこう会理事長が、「高齢化社会を見据えて眼科は近代化しなければならない」と考え、1988年に当院は誕生しました。

 認知度が高まるとともに、白内障、緑内障、涙道、網膜・硝子体など、あらゆる専門分野を充実させていきました。

 私自身は2001年に赴任しました。日本の眼科医療をけん引する存在だった大阪大学眼科学教室の田野保雄教授から、「人手が足りないから手伝ってくれないか」と声をかけられたのがきっかけでした。

 現在、当院の手術件数は年間で6000例余り。網膜剥離や糖尿病網膜症といった疾患は急激に症状が悪化しますから、救急医療にも柔軟に対応できる体制を整えています。

 土曜日にも十分な数のスタッフをそろえ、スムーズに受け入れていることで、地域の信頼につながっていると思います。

◎精密な「穴」

 2時間かかっていた手術が1時間に、1時間かかっていた手術は30分にといったように、機器の進化によってきわめて短時間、そして低侵襲の手術が可能になりました。

 例えば白内障手術も無縫合での実施が可能です。最新の治療法では、フェムト秒(セカンド)レーザーという特殊なレーザーを使用します。

 白内障手術は、レンズにあたる水晶体の「にごり」を解消するために人工レンズと入れ替えるものです。まず、水晶体の前方にある前嚢(ぜんのう)に数ミリの穴を開け、超音波で賽(さい)の目のように細かく砕いた水晶体を吸引します。

 従来は術者によって穴のサイズに多少のバラつきがありました。フェムト秒レーザーなら、確実に均等な穴が開きます。切開の精度が上がることで吸引効率が高まり、人工レンズもより正確に固定させることができます。手術は10分程度で終了します。

 私の専門分野であり、当院では年間約1000例を手がける硝子体の手術も変わりました。

 硝子体は眼球の大部分を占めるゼリー状の組織です。硝子体に異常が生じると、網膜を引っ張って網膜剥離を起こしたり、炎症などによってものが見えにくくなる黄斑上膜になったりする可能性があります。

 以前は、切開に使用するのは先端が20ゲージ(約0.9mm)の器具でしたが、現在は25ゲージ(約0.5mm)など、小切開化が進んでいます。

 目にかかる負荷は大幅に軽減されました。症状の度合いによっては無縫合でも問題ありませんし、安全性も高まっています。

 年末には、新しい顕微鏡システムも導入予定です。

 目の内部の画像をコンピューターに取り込んで、鮮明に加工したものをモニターで見ながら手術をするのです。感覚としては内視鏡手術に近いと思います。

 視野も広くなり、これまで見逃していた変異を発見できる可能性があります。また、どの術者でも一定の水準で成績を残せるようになるというメリットも期待できるでしょう。

◎埋もれている患者たち

 近年、感じる傾向の一つは、成人の失明原因の第1位である糖尿病網膜症の患者さんが二極化しているのではないかということです。症状が軽い人と極端に重い人にわかれ、特に後者の多さには驚いています。

 なかなか上向かない経済状況と無縁ではないと思います。例えば非正規雇用でちゃんと健診を受けていないがために、長く放置されてしまったケース。当院で自分が糖尿病になっていることを知る患者さんが、実に多いのです。

 また、一人暮らしの高齢者が増え、どんどん目が悪くなっているのに、体が動かなかったり、おっくうだったりして病院に来ない。そうした方々が埋もれてしまっている現状があります。

 緑内障の治療も、まだまだ必要な方に届いていません。早い段階で治療を始めれば症状をコントロールできますが、失明に至ってしまう患者さんが増え続けているという印象です。

 目の病気は予防が難しい側面がありますから、「悪くならないと病院に行かない」という意識が根強い。高齢化や社会的な情勢を考えても、早期の眼科受診を後押しする仕組みが出来上がることを願っています。

社会医療法人きつこう会 多根記念眼科病院
大阪市西区境川1-1-39
TEL:06-6581-5800
http://tanemem.com/


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