大阪豊能圏域のリハビリテーション医療をリードし続ける
2005年の開設から10年余りにわたり、大阪府北摂の回復期リハビリテーション医療をけん引してきた関西リハビリテーション病院。超高齢社会を迎え、リハビリテーション医療の課題などを坂本知三郎病院長に聞いた。
◎リハビリ病院を開設
法人本部の坂本病院が設立されたのが1955(昭和30)年。関西リハビリテーション病院を開設したのは、それからちょうど50年を経た2005年でした。
きっかけは、高齢化による社会のニーズに対応するためでした。坂本病院は、一般的な内科、外科はもちろん、救急にも対応する総合病院でした。しかし、高齢者向け病棟の需要が高まっていたのです。
ひとたび、病棟に目を向けると、3分の1は脳卒中の患者さん。急性期の治療は終わっていましたが、ほとんどの人は後遺症による能力低下をきたしていました。
しかも、3分の2は寝たきり、というより、寝かせきりの状態というのが現実でした。その状況に疑問を抱いたのが、救急を学んだ後、現在法人の理事長を務める兄と、消化器外科を学んだ私でした。
ちょうど2000年には回復期リハビリテーション病棟と介護保険制度がペアでスタート。現場を見て、リハビリテーション医療が重要だと考えていた私たちは、、兵庫医大の道免和久先生のご協力を得て、新病院開設の準備を進めました。
クリニックや病院を含めたグループ内の複数の施設で、亜急性期から回復期そして慢性期までをトータルで診るというのが構想でした。
また、回復期リハビリでは嚥下(えんげ)能力の維持や口腔ケアが重要だと考え、開院時から歯科を設けました。リハビリには患者さんが使う自助具など工学的な研究の必要性も感じ、リハ工学研究所も院内に併設しました。
◎病院施設への思い
当院は5階建てですが、リハ室は、2階から4階までの3層にわたる吹き抜けになっています。一見無駄にも思える造りかもしれませんが、この吹き抜けには理由があります。
まず、リハビリをする患者さんにとって、やる気が出るような、広くて、明るいリハ室にしたかった。
当院に来る患者さんの多くは、昨日まで動いていた手足が、突然動かなくなったという状況にあります。その精神的な落ち込み、肉体的つらさを、少しでも軽減したいと考えたのです。
また、この病院は、リハビリテーションのみの単科病院です。総合病院などとは違い、すべての設備が入院している人のためにあります。それであれば、患者さんが、病棟など、院内どこからでもリハ室を見てリハ意欲を高められるようにしたいと思いました。
送り出す側の医療者にとっても、リハ室の様子が常に見えることは重要です。つまり、医師や看護師、療法士は、受け持ちの患者さんのリハビリがどれくらい進行しているのかを、病棟、詰所などあらゆるところから見ることができます。
患者さんの能力が上がっていたら、それをさらに病室での動作に般化。リハビリの成果を、みんなで共有したかったのです。
◎リハ病院を取り巻く厳しい状況
現在、回復期リハ病床は、全国で八万床を超えています。なかでも当院のある豊能医療圏は、府内7医療圏の中でも、激戦区です。
豊中市には、回復期の病床が831床。周辺の地域連携パスを共有する病院の病床も含めると1726床となります。これを、人口10万人当たりで換算すると172床。全国平均は、50床ですから、3倍以上になります。
しかも、リハビリに対する診療報酬は、改定のたびにより厳しさを増しています。2006年には、1日のリハの上限が9単位と定められました。
大きな節目となったのは、2008年。成果主義が導入され、重症患者受け入れ義務や在宅復帰率も算定基準に盛り込まれました。単にリハ単位の提供に終わるだけでなく結果を出さなければならなくなったのです。
ある意味当たり前なのですが案外難しいものです。2016年には、成果主義がさらに強化されました。実績指数評価で効果が基準を満たさないと、施行したリハの単位の一部が入院料に包括されることになりました。
加えて、大阪府国保連合会では、ローカルルールとして、回復期リハ病棟へ診療報酬の上限も定められています。
これらに対応すべく、課題指向型訓練やトランスファーパッケージなどを取り入れた「篤友会リハメソッド」やロボットリハ、磁気やボトックスを使った治療を取り入れることで、短期間で従来に近い能力を獲得できるように取り組んでいます。
リハビリによって良くなった機能的自立度を示す「FIM利得」を見ても、昨年度は全国平均を大きく上回る結果を出せました。
現在リハ科の医師は11人、理学療法士と作業療法士、言語聴覚士で110人です。
特徴的なのは臨床心理士によるカウンセリング。当院の調査では、脳卒中の患者さんの3分の2にうつ症状がありました。昨日まで動いていたものが動かないのですから、その状況は想像に難くない。つまり、リハをするのに、心のことは無視できない課題であり、リハの阻害因子をどれだけ取り除けるかで結果は大きく変わるのです。
これらのことから、急性期病院からの評価も高まり、当院への転院希望は毎年増加しています。その期待と患者さんの「家に戻りたい」という気持ちに応え、患者さんのQOLを上げていくことが、われわれが目指すリハビリテーションです。
◎ISPRM誘致に一役
2019年6月に、リハビリテーションの分野では、世界一の学会ISPRM(International Societyof Physical RehabilitationMedicine)が日本で初めて神戸市で開かれます。
誘致のためのプレゼンテーションに使う資料の撮影地の一つとして当院も参加することができました。本命はシドニーと言われていたのが最終プレゼンで逆転誘致に成功し、当院も微力ながら貢献できたと思うと大変うれしかったです。
医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
大阪府豊中市桜の町3-11-1
TEL:06-6857-7756
http://www.kansai-reha.jp/