島根県立中央病院 小阪 真二 病院長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

4月に病院長就任 総合力のある医師を育てたい

【こさか・しんじ】 1986 京都大学医学部卒業 京都大学胸部疾患研究所胸部外科研修医 高知市立市民病院胸部心臓血管外科研修医 1989 倉敷中央病院呼吸器科医員 1992 京都大学医学部医学専攻科外科系胸部外科学 1996 フランス・トゥールーズ大学ピュルパン病院胸部外科医員 1998 島根県立中央病院呼吸器外科部長 2004 高知県・高知市病院組合立高知市民病院呼吸器外科科長 2005 高知県・高知市病院企業団立高知医療センター呼吸器外科科長2006 島根県立中央病院呼吸器外科部長 2009 同診療部長 2010 同診療部長兼情報システム管理室長 2011 同医療局次長兼情報システム管理室長 しまね医療情報ネットワーク協会理事 2014 島根県立中央病院薬剤局長兼情報システム管理室長 2016 同副院長兼情報システム管理室長 2017 同病院長

c15-1-1.jpg

 島根県立中央病院は、高度先進医療を担う島根県の基幹病院。

 4月1日に就任した小阪真二病

◎ICTを活用した地域連携

 私は1999年、総合病院としては当院が国内初となった電子カルテ導入にかかわり、2004年に高知へ移ってから、高知医療センターの電子カルテの導入にかかわりました。

 その後、診療情報管理士の資格も取得。2010年からは当院の情報システム管理室長として、看護、検査、経営分析、物流管理等のペーパーレス運用を可能とした電子カルテシステム「統合情報システム(IIMS)」への移行にかかわりました。

 また、しまね医療情報ネットワーク協会への参加、患者さんの情報を地域の医療機関で共有する医療情報連携ネットワーク「まめネット」の構築・普及の仕事などをしてきました。

 地域医療構想が掲げる病院完結型医療から地域完結型医療への転換を実現させるためには、患者さんに安心して地域に戻っていただける環境を整備しなければなりません。そのためには患者さんの情報を病院内と同じように地域内でも共有する必要があるのです。

 今後は「まめネット」などのICTを駆使して地域の医療機関と連携していくことが必須になってくるでしょう。

◎地方の課題

 当院はドクターヘリの基地病院で、年間約600回運航しています。また救命救急センターもあります。このように島根県立中央病院は高度急性期、急性期を担う「地域の急性期の砦(とりで)」の役割を果たしています。

 地域完結型の医療を推進するために、高度急性期、急性期に、より特化していきたいのですが、島根県の医療情勢を考慮すると、そんなことばかりは言っていられません。

 地域医療構想で政府がモデルにしているのは、病院がたくさんある都市部です。病院が数多くあれば、機能分化も可能でしょう。しかし、島根県のように病院が少ない地域では急性期だけを担うわけにはいかないのです。

 隠岐諸島の二つの島には、それぞれ病院が一つしかありません。急性期以降、すべてを一つの病院が担わなければならない。その方法でしか、地域医療を支えられないのです。

 しかし地方の課題は中央で十分に考慮されているとは思えません。数年前、地域別に診療報酬を定めようとの議論もありましたが反対論が多いようです。

 島根県の病院数は約50。当院のような急性期病院から患者さんを送る後方病院も豊富にあるわけではありません。この病院が公的病院である以上、地域医療を支えるために、急性期以降の患者さんに対する医療も一部担う必要があるのです。

◎適正な病床数に

 現在の病床数は634床。しかし、今後この病床数が本当に必要なのかを考えなければなりません。 人口が増えている地域であれば病床数を維持してもいいでしょう。しかし、島根県の人口は年々減少。ついに70万人を切ってしまいました。

 今後、増加に転じるとは考えづらいので、人口動態を考慮しながら適正な病床数を考えるべき時期に来ているのかもしれません。

◎エビデンスとナラティブの融合を

 若い人は合併症がなく、一つの疾患を治療すれば、元の生活に戻れます。その場合は「エビデンス・ベースド・メディスン」(エビデンスに基づく医療)でいいでしょう。

 しかし慢性疾患が複数ある高齢の患者さんには、その人の周囲の環境を含めた人生の物語を考慮した「ナラティブ・ベースド・メディスン」(物語と対話に基づく医療)を提供するべきです。

 ただ、医療である以上「ナラティブ・ベースド・メディスン」の中にも必ずエビデンスがなければなりません。

 これからはエビデンスとナラティブを融合させた「エビデンス・ベースド・ナラティブ・メディスン」が求められてくるでしょう。

◎医師不足解消のために

 紆余(うよ)曲折あった新専門医制度ですが、ようやく来年度からスタートしそうです。

 私は病院長就任時、職員に「総合医的な能力を持った医師を育てる」と言いました。高齢の患者さんは複数の疾患がある場合が多く、専門的な医療をするにしても患者さんの全身の状態を把握する必要があるからです。

 現在、医師の偏在が問題になっています。専門医志向の強い現況では、患者さんが合併症を有する場合、複数の専門医が診なければなりません。

 しかし、総合的な診断能力があれば、ある程度までは1人で診ることが可能でしょう。1人の患者さんを1人の医師で診られるようになれば、医師不足も解消されるのではないでしょうか。

 専門領域を究めたいという気持ちはよく理解できます。しかし、10年後、20年後、その需要がどれだけあるかを慎重に考えるべきでしょう。

 イギリスでは、病気になったら最初にGP(GeneralPractitioner)を受診しなければなりません。GPとは総合的な診断ができる医師のことです。GPが、専門医の治療が必要だと判断すれば、専門病院へと紹介するシステムです。

 近年は、専門領域をもったGPも誕生しているようです。専門的な見地が必要な場合は、その専門のGPが担当になって診るというシステムも構築されています。

 日本もこのようなシステムを採用すれば、地域包括ケアがスムーズにいくのではないでしょうか。

◎地方の魅力

c15-1-2.jpg

 一度は地方での医療を経験すべきだと思います。分業制ではないので、バラエティー豊かな症例を経験できます。医師と患者さんの距離が近いのも地方の病院の特徴です。

 総務省の調査では当院のある島根県は若者の就業率全国1位、余暇時間1位、育児中の有業率1位、など生活するにはとても良い環境だということが分かります。

 長岡秀人出雲市長も「仕事さえ見つかれば、島根はとても住みやすいところだ」と言っていました。

 地方の病院は医師不足で困っているので、仕事は確実にあると言えます。地方の病院で働くと、視野が広がります。たとえ、一時的でもいい。地方医療を経験することは、長い医師人生において、決してマイナスにならないと思いますよ。

島根県立中央病院
島根県出雲市姫原4-1-1
TEL:0853-22-5111
http://www.spch.izumo.shimane.jp/


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る