【11月 徳島県】第27回日本乳癌検診学会学術総会
女性ヘルスケアからみた乳癌検診
-「第27回日本乳癌検診学会学術総会」のテーマは。
タイトルを「女性ヘルスケアからみた乳癌検診」としました。
特に中高年以降の女性の健康維持において、乳がん検診がどのように位置付けられるのかを明らかにします。
例えば、「デンスブレスト」の話題を扱います。
デンスブレストとは、乳腺が密集している「高濃度乳房」のことです。マンモグラフィー検査は、脂肪組織を黒く、腫瘍部分を白く写すことでがんを検出します。
しかし、乳腺の密集度が高いと全体が白く写るため、腫瘍を発見するのが難しいのです。
米国では、受診者に乳房の構成を通知する動きが広まっています。日本ではどのように対応していくべきかを考えます。
およそ10人に1人の女性が乳がんになると言われる中、いまだ検診率の向上は大きな課題です。
現状の乳がん検診率は3割台(国民生活基礎調査)。乳癌検診学会では、まずは5割程度に引き上げることを目指しています。
国民皆保険制度の日本では、「病気になったら病院に行く」という意識が根強い。忙しくて検査する時間が取れなかったり、疾患が見つかることを恐れていたりすることも、検診率が伸びない要因でしょう。
疾患が早く見つかれば、治療による体への負担も軽くて済む。「女性の一生のヘルスケア」の観点から、疾患予防と検診を捉えようというのが本学会のねらいです。
講演は、内閣官房参与として少子化対策、子育て支援に取り組まれている吉村泰典先生(産婦人科医・慶應義塾大学名誉教授)に、女性ヘルスケアを題材にしたお話を依頼しています。
また、乳がん・子宮頸がん検診促進国会議員連盟の会長でもある野田聖子議員には、国の検診に関する取り組みを伝えていただきます。 早期発見・治療が重要視される一方で、米国では過剰診断が問題視されています。
まだ症状が出ていない段階での治療は利点だけとは限りません。その後の健康状態や精神的、金銭的な面に負担を与える可能性もあります。近年の過度な診断が生む問題も検討します。
本学会の重要な役割として、HBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)の医療システム確立に向けた啓発活動があります。
乳がん、卵巣がんの中には、遺伝性のものが5〜10%ほど存在すると言われています。
2013年、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、将来的に乳がん、卵巣がんになる確率が高いと診断され、健康な乳房を除去したことでも話題になりました。
日本には疫学的なデータが少ないこともあり、HBOCの診断・治療の指針がまだ整備されていません。HBOCと診断された段階で、医療介入をどこまで図るべきか。本学会での問題提起が、今後の議論を深めていく一助になればと思っています。
-大学としてはどのような取り組みに力を入れていきますか。
徳島大学大学院医歯薬学研究部長としての主なミッションは、まず優秀な研究者を養成すること。大学内の研究環境向上を図る取り組みの一つとして、技師のレベルアップを目的とした研究支援部を創設しました。
もう一つは国際貢献など、海外とのつながりを強くしていくことです。
JICA(国際協力機構)が進めている「日本モンゴル教育病院建設計画」に参画しています。
計画は、モンゴル国立医科大学に同国初の大学附属病院を建設するプロジェクトです。モンゴルの医療サービスの質の向上、卒後研修環境の充実に寄与します。来年の9月に完成する予定です。
建物はJICAが無償資金協力で建設。私たち徳島大学と愛媛大学がタッグを組んで運営管理を担当します。私たちに求められているのは、「日本式」の医療システム、高度医療を提供できる病院にしていくことです。
この6月から、医師、看護師、事務スタッフがモンゴルから来日し、当院での研修がスタート。
研修後、今度は私たちがモンゴルに赴き、日本で学んだことが実践できているかどうかをチェックします。
開院後も、長期にわたって徳島大学のスタッフがモンゴルに常駐します。運営が軌道に乗るまでサポートしていく予定です。
モンゴルの人口は約312万人で、面積は日本のおよそ4倍です。首都のウランバートルに人口の半分が集中し、もう半分は、広大な草原などで生活している。
このような環境に、どうやって日本式の医療を広げていくのか、これからさらに話し合いを重ねることになります。
モンゴルの医療レベルは、日本の1980年代と同等と言っていいでしょう。医療制度もまだ整っていません。いずれ、日本の健康保険制度そのものを輸出してはどうかというのが私のイメージです。
もともと徳島大学とモンゴル国立医科大学は、2005年から大学間交流を継続しています。今回のプロジェクトが、両大学、両国の関係をさらに深められればと思っています。
-教育面のポイントは。
厚生労働省の医師需給分科会の報告にもあるように、2030年には、医師の供給数が過剰になると推計されています。
医師免許を持っているだけでは、働く場所がなくなるかもしれないのです。特に、医師が集中している都市部では、その傾向が顕著になるでしょう。
そこで、当医学部が教育方針として掲げているのが「ドクタープラスワン」です。 例えば、海外で医師免許を取得して活躍する。法律や経営の知識を身に付けて、医療行政や、病院の管理に携わる。
一般企業に勤務する「企業内弁護士」が増えているように、「企業内医師」を選択肢に加えてもいいでしょう。
英語以外の語学に精通すれば、他の医療機関では対応が難しい国の人々に特化した医療の道も切り開くことができます。
医療の技術と、もう一つの「働ける能力」を持つ人材を養成したいという希望があります。
おそらく東京オリンピックにピークを迎える日本経済のその先は不透明です。国立大学の医学部にも、難しい決断を迫られる変化の波がやってくるでしょう。
それでも生き残ることができる「ダブルの強み」を持っていてほしいと思っています。
プログラム
【講演】
吉村泰典(産婦人科医/慶應義塾大学名誉教授)
野田聖子(国会議員/乳がん・子宮頸がん検診促進国会議員連盟会長)
日程: 11月10日(金)~11日(土)
会場:あわぎんホール、ホテルクレメント徳島(徳島市)
大会事務局:徳島大学大学院医歯薬学研究部産科婦人科学分野
TEL:088-633-7177 FAX:088-631-2630
学会HP:http://www.congre.co.jp/jabcs2017/
大会事務局:徳島大学大学院医歯薬学研究部 産科婦人科学分野内