【9月 熊本市】第42回日本大腸肛門病学会九州地方会第33回九州ストーマリハビリテーション研究会 「情報を九州から全国へ」
第42回日本大腸肛門病学会九州地方会/第33回九州ストーマリハビリテーション研究会が9月16日(土)、ホテルメルパルク熊本(熊本市)で開かれる。
例年、医師、看護師など約500人が訪れる地方会/研究会。会長を馬場秀夫・熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学教授が務める。
―大腸肛門病学会九州地方会のプログラムで特徴的なものをいくつか教えてください。
一つ目は、大腸がんの腹腔鏡下手術を取り上げた二つのビデオシンポジウムと一つのパネルディスカッションです。
大腸がんの中の右結腸がん、横行結腸がん、直腸がん、それぞれについて、アプローチやリンパ節郭清の方法や注意点などを共有する試みです。
大腸がんは、腫瘍ができる部位によって、予後も、腹腔鏡下手術で必要な工夫も変わってきます。部位別に検討する意義は大きいと思っています。
二つ目は、ワークショップ「炎症性腸疾患の内科・外科治療の進歩と連携」です。
現在は、食生活など生活習慣の変化の影響もあり、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患が増えています。一般的には内科的治療で対応しますが、場合によっては、大腸全摘などの外科的治療が必要になります。内科と外科の連携が大事になってくる。そこに焦点を当てました。
パネルディスカッション「切除不能大腸癌(がん)に対するコンバージョンセラピーの現状」も企画しました。
大腸がんで転移がある患者さんに対して、抗がん剤治療後に根治手術をするコンバージョンセラピーは、薬の種類が増え、よく効くようにもなってきたことで、広がりを見せています。選択する治療薬、手術の適応やタイミング、術式など、さまざまな観点から議論を深められたらと考えています。
このほか、痔核、裂肛、痔ろうといった肛門疾患について現状や課題を討論するシンポジウム「肛門疾患治療の最前線」もあります。
―九州ストーマリハビリテーション研究会としては。
昨年、熊本地震がありました。九州は、地震、火山の噴火、台風などによる豪雨もある。災害に見舞われやすい地だと言えるかもしれません。
そこで、ストーマをつけた人の災害時の対応などを話し合うセミナーを設けました。
例えば、ストーマをつけた人の避難所での生活の注意点は何なのか。断水などで水道水が使えない時、皮膚の洗浄などのケアはどうすればいいのか。そういった内容を、実際の経験も踏まえながら、検討していきたいと思っています。
―大会に向けて、願いは。
特別講演の演者には、日本大腸肛門病学会理事長の楠正人先生、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会理事長の幸田圭史先生をお招きしました。
地区の会に学会のトップの方がお越しになるのは、それほど多いことではありません。お2人の講演から学ぶことも多いと思います。
また、九州地区から全国に向けて、情報を発信する場にもできればと思っています。
熊本地震では、熊本城や阿蘇など観光名所も被災しました。観光客数はまだ地震前に戻っていません。この会に、多くの方に来ていただき、昼間は勉強、夜は熊本の街を楽しんでいただきたい。地方会/研究会への参加を通して、復興にも協力していただければと願っています。
―熊本大学消化器外科教室の大腸肛門病への取り組みを聞かせてください。
高齢化によって、「大腸がんで糖尿病がある」「認知機能の低下も見られる」など併存疾患がある患者さんが増えています。
治療を受ける側の患者さん一人ひとり、置かれた立場、環境、人生観が違う。その人の病状や全身状態、考え方、家族のサポート体制、認知機能、支払い能力...。それらを踏まえて適切な治療方針を立て、できる限り身体的影響が少ない治療を届ける必要があります。
治療手段も多様化しています。開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術。薬も、次々と新しいものが出ています。
患者さんの状況と提供できる医療の双方を見ながら、患者さん納得の上で「安全・確実・低侵襲」な治療を提供する。そして、合併症なく社会に戻すことを、臨床では目指しています。
研究では昨年、歯周病の原因菌のひとつ「フソバクテリウム」が、大腸がん、食道がんの進展や予後に関係している、とする論文をアメリカの科学誌「Clinical Cancer Research」に発表しました。
がん組織には、正常組織よりも多くのフソバクテリウムが存在すること、同じがんの患者さんであっても、フソバクテリウムが検出された患者さんは、されなかった患者さんに比べて、術後の生存期間が短いことなどが分かっています。
なぜ、そこにフソバクテリウムがいるのかなど、解明されていない部分も多くあります。しかし、この菌の役割が詳しくわかれば、がん治療の新たな薬の開発につながる可能性があると考えています。
―教育への考えは。
非常に重要視しています。来年度には、新専門医制度も始まります。次の時代を担う若手を、高いレベルを目指して育成したいと考えています。
キーワードの一つは、「国際化」。私たちの医局から、現在7人が海外留学に行っています。外の施設で学び、さらに高いレベルを目指してもらうというのが、この医局の方針です。
日本の外科は手術成績などで見ると世界トップです。しかし、研究は、海外のほうが進んでいる施設がたくさんある。留学して研究する価値は十分にあると思います。
若いときに外から日本を見て、日本がどういう国なのかを正しく理解することも大事です。そうでないと、考え方がどんどん狭くなってしまう。「一歩踏み出す」ことの大切さを、若い人に日々伝えています。
プログラム
【ビデオシンポジウム 午前9時10分~同10時20分】
「右結腸癌に対する腹腔鏡下手術の工夫」
【シンポジウム 午前9時40分~同11時】
「肛門疾患治療の最前線」
【ビデオシンポジウム 午前10時20分~同11時20分】
「横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術の工夫」
【パネルディスカッション 午前11時~正午】
「切除不能大腸癌に対するConversion therapyの現状」
【パネルディスカッション 午後2時40分~同3時40分】
「直腸癌に対する腹腔鏡下手術の現状」
【ワークショップ 午後3時40分~同5時】
「炎症性腸疾患の内科・外科治療の進歩と連携」
会期:9月16日(土) 会場:ホテルメルパルク熊本
事務局:熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学
準備室:日本コンベンションサービス
TEL:092-712-6201 FAX:092-712-6262
メールアドレス:42daikou33stoma@convention.co.jp