鹿児島大学病院 夏越 祥次 病院長

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進化を目指した英知の結集

【なつごえ・しょうじ】 1981 広島大学医学部卒業 鹿児島大学医学部第1外科入局 1996 ドイツ・ミュンヘン工科大学留学 1999 鹿児島大学医学部第1外科講師 2004 鹿児島大学医歯学総合研究科腫瘍制御学・消化器外科学准教授 2009 鹿児島大学医歯学総合研究科消化器・乳腺甲状腺外科学教授 2017 同病院病院長 同大学副学長

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◎現場の声を聞きアイデアを集める

 4月、病院長に就任しました。副学長、消化器・乳腺甲状腺外科教授との兼任となり、忙しい毎日を過ごしています。

 当院は鹿児島県内唯一の大学病院です。複数の合併症がある患者さんや難病の患者さんも多く来る、医療機関として最後のとりでとも言えます。どの患者さんに対してもベストを尽くし、質の高い医療を提供することが使命だと考えています。

 先日、院長になって初めての全体集会を開き、職員たちに二つの指針を話しました。

 一つ目は、「患者さんにとって、安心・安全な医療を目指した英知の結集」。二つ目は「職員の皆さんと一緒に大学病院の進化を目指した英知の結集」です。

 「英知の結集」という言葉には、現場の声を吸い上げ、職員のアイデアを採用し、いい治療、いい病院を目指すという意味を込めました。すべての職員がこのプロジェクトに積極的に参加してくれることを期待しています。

 患者さんに良い医療を提供できる環境、そして、若い世代が生き生きと働き、伸び伸びと学ぶことができる環境を整えたいと思っています。

◎病院再開発で高度医療・教育環境を整備

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特別室からの眺望

 地域中核病院としての機能を強化し、高度医療を実施するために、2007年に「病院再開発整備計画」がスタートしました。2009年には中央診療棟を増築。2013年には新病棟のC棟が完成しました。

 9階建てのC棟は294床。病室は4床部屋で、広いスペースを確保しました。各部屋にトイレを備え、廊下は幅2.4mとベッドが容易に通れるように設計。天井高も圧迫感を避ける目的で2.6mとっています。個室は38室に増床。部屋の窓から桜島を眺めることができます。

 各フロアに設けたスタッフステーションの面積も、従来の50平方㍍から80㎡に拡充。2階から7階までの各フロアにカンファレンス室や当直室も設けました。また、屋上にヘリポート、8階に総合臨床研修センターを設置しています。

 患者さんにとって過ごしやすく、職員には働きやすい環境が整ったと思います。私も回診しながら窓の外に見える桜島から元気をもらっていますよ。

 さらに、来年1月竣工(しゅんこう)を目指し、B棟を建設中です。

 B棟には、放射線検査装置などを入れて、BおよびC棟からすぐに検査室に移動できる動線を確保しました。

 心臓血管内科のカテーテル検査、アブレーション手術などがすぐにできるようにする計画です。

 医科診療棟から離れた場所にある歯科診療棟・病棟の機能もB棟に移します。医科の患者さんの口腔ケアなど周術期管理もしやすくなるでしょう。今後は、医科歯科連携も強固にしていく狙いです。

 B棟の完成後、建設するA棟には、外来と管理部門が入ります。現在の外来棟では、今年4月から、手術支援ロボット「ダビンチ」、ハイブリッド手術室が稼働しています。新しい外来棟には、さらに内視鏡などの新しい装置を導入し、高度医療の充実を図ります。

◎へき地・離島医療のモデルをつくる

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C棟7階のスタッフステーション

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C棟屋上ヘリポートにとまるドクターヘリ

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2013年に完成したC棟

 鹿児島県では、へき地・離島医療の問題が深刻です。そこで、当院からへき地・離島医療のモデルをつくり、国内だけでなく、東南アジアなどにも輸出し、広めていきたいと考えています。

 例えば、遠隔画像診断支援システムを使用するなど、大学病院と離島の病院をつないだ診療ができればと考えています。

 現地にいる外科医と連携し、当院から遠隔操作で手術をするのです。奄美大島などから鹿児島市内までは飛行機で約1時間もかかります。コンピューターシステムを駆使した治療・手術システムを作って、地域による医療格差をなくしたいと思います。

 当院では、学生に離島実習を課しています。地域医療の魅力ややりがいを伝えたい。そのうちの数%でもいいから、将来、へき地への赴任を希望する医師が出てきてくれることを願っています。

 私自身も学生時代は、奄美大島、薩摩半島、大隅半島、北薩、南薩などで地域医療を経験しています。そのときに学んだ診療や手術の経験は、現在の仕事に大変役立っています。若い人たちにも、そうした経験をしてほしいですね。

◎医師の診療科偏在

 医師の全体数は増加傾向にありますが、都市部に集中するという偏在が起きています。時がたてばいずれ飽和状態になって、徐々に地方の病院に分散されていくのではないかと思いますが、それを待っているだけでは解決しません。

 鹿児島県で見ると、鹿児島市内の病院は比較的医師が充足していますが、市外の医療圏はまったく足りていません。

 診療科偏在も問題です。厚生労働省のデータによると、1994年度から現在まで麻酔科や精神科などの伸び率が高いのに対し、外科や産科・産婦人科などの伸び率は低い傾向にあります。こうした診療科は、若い人たちからすると、QOL(生活の質)が低い診療科だと思われていることが原因でしょう。

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 当院では、2015年度から、外科医の緊急手術や時間外勤務に対し、インセンティブを支給しています。頑張って仕事をしている職員には、実態に見合ったサラリーを担保したいというのが根本にある考えです。お金がすべてだとは思いませんが、個人の努力や成果をきちんと評価しないと、本人のモチベーションにも影響します。

 職員のモチベーションを維持できれば、病院運営もうまくいきます。われわれが若いときは、スポットが当たらなかった部分ですが、その結果、今の若い人がついてこなくなってしまったのではないかと思います。

 将来的には、勤務状況に見合った形でインセンティブ制度などをさらに充実させたいと考えています。

 これは、当院だけの問題ではありません。国も診療報酬改定などで手術の技術料を上げたり、そのうちの一部を個人に還元したりするなどの具体的な策を講じないと、診療科偏在の問題は解決しないのではないでしょうか。

◎喜びを共有

 つきなみかもしれませんが、全職員が明るく仕事ができる雰囲気を大事にしたいと思います。医療職は、人の命を預かる仕事です。ときには、つらく、悲しい場面に遭遇し、落ち込むこともあります。

 しかし、患者さんやそのご家族から「ありがとう」と感謝されることも多い。その喜びや、やりがいを職員みんなで共有しながら、生き生きした職場をつくっていきたいと思います。

鹿児島大学病院
鹿児島市桜ケ丘8-35-1
TEL:099-275-5111(代表)
http://com4.kufm.kagoshima-u.ac.jp/index.html?jtpl=8


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