長崎大学医歯薬学総合研究科精神神経科学 黒滝 直弘 准教授(基幹型認知症疾患医療センター副センター長)/森本 芳郎 医師

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「病気の原因」を解明するのも医師の使命

【くろたき・なおひろ】 1992 長崎大学医学部卒業 長崎大学医学部附属病院第三内科研修医 1993 平戸市国民健康保険紐差病院内科医員 1994長崎大学医学部附属病院精神神経科医員 1996 長崎県離島医療圏組合五島中央病院精神科・神経科医員 1999 長崎大学原爆後障害医療研究所人類遺伝学教室(原研遺伝)大学院 2003 長崎大学大学院医学研究科博士課程修了 米国ベーラー医科大学分子遺伝学講座博士研究員 2005 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設分子医療部門助手 2006 同医療科学専攻展開医療科学講座助手 2 0 0 7 同講師2011 長崎大学病院精神神経科准教授 2012 長崎県基幹型認知症疾患医療センター副センター長 2013 長崎大学病院事業所産業医 2016 長崎大学医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座精神神経科学准教授
【もりもと・よしろう】 2003 長崎大学医学部入学 2010 長崎大学医学部卒業 長崎大学病院臨床研修センター初期研修2012 長崎大学病院精神神経科入局 2013 長崎大学医歯薬学総合研究科精神神経学入学 以降、大学院生として統合失調症の遺伝子研究を継続している

 長崎大学の精神神経科学教室で統合失調症の分子・遺伝子的研究に従事する黒滝直弘准教授(以下・黒滝准教授)と森本芳郎医師(以下・森本医師)に研究テーマについて聞いた。

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-統合失調症と遺伝子の相関関係について研究されています。

森本医師 病気と遺伝子の関係はとても複雑です。遺伝子疾患と呼ばれるものには、一つの遺伝子の異常によって疾患発症のリスクが大幅に上昇する「単一遺伝疾患」と、複数の影響力の弱い遺伝子が関係して発症する「多因子遺伝疾患」とがあると考えられています。

 近年、GWAS(ゲノム・ワイド・アソシエーション・スタディ)という解析手法が普及してきました。数多くのサンプルを基に統計的に病気のリスクに関連する遺伝子を解析する方法であり、特に多因子遺伝疾患の解析を得意とします。統合失調症に関してもGWASを使った解析が用いられています。

 これまで、統合失調症は影響力が弱い複数の遺伝子変異によって発症する多因子遺伝疾患だと考えられていました。2014年の「ネイチャー誌」において、GWASの解析で人間には統合失調症にかかりやすくなる108のゲノム上の変化が報告されています。

 一方、2、3年前から急速に普及してきたNGS(次世代シークエンサー)を用いた解析も広まりを見せています。NGSの開発により、従来では考えられないほどのスピードで遺伝子解析が可能になりました。NGSでの解析により、これまで原因のわからなかった単一遺伝疾患の原因遺伝子が次々と報告されています。

 統合失調症においてもNGSを用いた解析が始まっており、統合失調症のリスク遺伝子には、GWASなどで同定された影響力の弱い遺伝子だけでなく、発症のリスクを大幅に上昇させる希少な遺伝子変異が存在することが報告され始めています。

黒滝准教授 私たちは、長崎大学原爆後障害医療研究所と共同で、メンデル遺伝の研究を長年続けていて大きな成果をあげています。

 メンデル遺伝の観点から統合失調症の遺伝子にアプローチしての病態解析を可能にしたのが、NGSです。当教室ではNGSを用いた統合失調症の病態解析に力を入れています。

-遺伝子を解析することで、統合失調症が治るようになるのでしょうか。

黒滝准教授 残念ながら統合失調症の遺伝子が見つかったからと言って、統合失調症が直ちに治ることにはつながりません。しかし、患者さんたちは「なぜ自分が病気になってしまったのか」知りたいのではないでしょうか。

 病気を治療するのはもちろん大事ですが、その原因を解明するのも医師の使命だと私は考えます。新専門医制度が始まると医師は、これまで以上に臨床に熱心になると思います。それはもちろん大事なことです。しかし、「なぜ人は病気になるのか」を追究することも同じくらい大事だと思うのです。

 研究マインドを持った若い人が、もっと増えてくれることを願っています。

-原因を解明することで精神疾患への偏見も減るでしょうね。

森本医師 偏見とは「分からないもの」に対して向けられる側面が大きいと思います。残念ながら精神疾患への偏見はまだまだ根深いものがあると感じます。

 多くの精神疾患は、まだ原因が分かっていません。しかし、「分からないもの」を「理解できるもの」にしていくこと、少なくともそう努力していくことが、精神科医の社会的使命ではないかと思います。

黒滝准教授 当教室ではWHO(世界保健機構)と協力し、昔から精神疾患に対する世間の偏見をいかになくすかに注力してきました。その研究は本学の中根允文名誉教授から現在の小澤寛樹先生に至るまで綿々と引き継がれています。そういった先達の努力もあり、先ほど森本先生が言われたように精神疾患への偏見が薄れてきたように感じます。

 研究をすることで患者さん全員を救えるとは思っていません。しかし治療とは別の側面から、医療に貢献できることがあると確信しています。

-黒滝准教授は認知症疾患医療センターの副センター長を務めていますね。

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黒滝准教授 2012年に長崎大学病院の中に基幹型認知症疾患医療センターを設置、私は副センター長を務めています。

 当センターでは認知症の方が安心して暮らせる地域医療体制の構築を進めています。大きな問題の一つは離島での医療です。

 離島の上五島、対馬などは、専門医が不足しがちで、認知症の人が暮らすのは難しいと思われるかもしれません。

 しかし、田舎には昔ながらのコミュニティーが残っています。

 徘徊(はいかい)などをしていても、それが誰だかわかるので、声をかけて家に戻したりもしてくれる。だからことさら悲観的になる必要はないと思うのです。

 長崎市の場合、70代は「お年寄り」ですが、離島では「若い人」に分類されます。離島では90 歳の認知症の方を、少し物忘れが多くなってきた70歳の方がサポートするといった例も多々あります。

 政府は地域包括ケアシステムの構築を目指しています。それは裏を返せば日本の多くの地域に高齢者が安心して暮らせるシステムがないことの証左なのです。

 初めの話に戻りますが、患者さんに寄り添うことは臨床医として大事です。一方で認知症の原因を見つけ治療方法を確立することも大事なのです。医学研究と臨床は同じ方向を向いていると思います。

長崎大学医歯薬学総合研究科 精神神経科学教室
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/psychtry/


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