岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学 阿部 康二 教授

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現代型のアルツハイマー病とは

【あべ・こうじ】 1981 東北大学医学部卒業 1987 東北大学大学院修了 1988米国ハーバード大学神経内科学教室留学 1995 東北大学医学部附属病院講師1996 東北大学医学部助教授 2001 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学講座教授 2002 岡山大学医学部附属病院副病院長

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◎逆転現象が起こっている

 2011年に認知症専門外来を開設しました。現在までの患者さんの合計は約1500人。そのうちの約60%をアルツハイマー病が占めています。

 次に10%が血管性認知症、5%がレビー小体型認知症、3%が前頭側頭型認知症と続きます。

 75歳以上の後期高齢者に限ると、アルツハイマー病は約70%です。

 つまり超高齢社会における認知症対策は、「アルツハイマー病対策」と言い換えることができます。それほどアルツハイマー病が増加しているわけです。

 逆に、かつて主流だった血管性認知症は激減しました。平均寿命が70歳ほどだった約50年前は、血管性認知症が60%。アルツハイマー病は20%程度だとされていました。

 きれいな逆転現象が起こっているわけです。血圧をコントロールする薬の進化によって血管性認知症が減り、寿命が延びたことによってアルツハイマー病が増えたということでしょう。

 とはいえ、比率が入れ替わったという単純な話ではありません。

 現在のアルツハイマー病には、高齢化による脳血管の老化という問題が加わっています。当教室でも、75歳以上のアルツハイマー病患者の90%以上に脳血管の病変が認められました。

 脳細胞の老化と脳血管の病変が併存しているわけですから、症状も複雑化しています。血管の老化が軽度の50歳代と、老化が進んでいる75歳以上では、治療のアプローチも変えなければなりません。

 平均寿命が世界一で、超高齢社会の日本だからこそ見えてきた現象です。アメリカや中国、東南アジアなどでもアルツハイマー病は増加傾向にありますが、まだ超高齢社会特有の認知症には対峙(たいじ)していません。

 ただ、いずれ世界が追い付いてくるのは間違いない。現代の認知症の病態を解明し、治療の指針をつくっておくことは、後に続く国々にとってかならず役立つはずです。

◎分かれ目は50歳

 最新の研究で、どうやらアルツハイマー病の全経過は「35年」だと分かりました。

 50歳で始まったと仮定して、症状がはっきりと表面化するのが75歳。85歳で寿命を迎えるまでの計35年間、アルツハイマー病が続くわけです。

 やっかいなのは、50歳から75歳までの25年間に、多くのケースで自覚症状がないことです。МCI(軽度認知障害)の時点では、まだ先がどうなるかは分かりません。ある境界線を越えて、ひどい症状が出てきたときに、ようやくアルツハイマー病と診断されます。

 つまり、認知症対策の勝負は「最初の25年」で決します。50歳からどのような生活を送るかが、25年後を左右するということです。

 具体的には、早期から生活習慣病の対策に取り組んでおくことが重要です。特に糖尿病は、認知症の合併率が高い。

 当院の糖尿病専門外来との共同研究でも、200人の糖尿病患者さんの認知機能を調べたところ、25%が「問題あり」との結果でした。

 予防策としては、運動、食事を中心としたライフスタイル全般の見直しが基本です。統計的には、生活習慣病の改善が認知症予防につながるとのデータがあります。

 知的な活動が少なくてボーッと毎日を過ごしている人も注意が必要です。対人的な活動が少なくなると、認知症になりやすい。また、たばこなども危険因子とされています。

 もちろん、完全に予防できる確証はありません。生活習慣に気を付けていても、その裏側では進行しているおそれもあります。

 自分がどのような状態にあるかを早期に知るには、PET検査による脳内のアミロイドβの蓄積量のイメージングや、グルコースの代謝低下を診断する方法があります。

 ただし検査のことは一般的にはあまり知られていませんし、保険適用外ですから、気軽に受けられるものでもありません。

 治療としてはアミロイドβに抗体をとりつかせて排除する抗体療法が開発されましたが、世界中で失敗と言っていい結果に終わっています。

 なぜなら、先にも述べたように、勝負が決してしまった75歳から治療を始めても遅かったのです。

 イメージとしては、胃がんの治療と同じだと思ってください。症状が出る前に見つかれば、切除して予防することができます。

 認知症も早期に診断できるようになりましたから、症状が出ない段階で検査して進行を止める「先制医療」の考え方へとシフトしつつあります。抗体療法も、症状が出る前に実施すれば、効果が望めるかもしれません。

◎本物はどれだ?

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 運動は1日30〜60分くらいのウオーキングで十分。食事は毎日、DHA、EPAを含んだサバ、サンマ、イワシなどを食べるようにしましょう。

 お茶なら緑茶を1日に5杯以上。アルコールは瓶ビール1本、日本酒1合、ワインなら300ccで、ポリフェノールが多い赤ワインがお勧めです。

 睡眠も重要です。深い眠りは脳の炎症を抑えます。日中、適度に体を動かしておくことで、良質な睡眠が得られます。

 こうした根拠がある情報にまぎれて、世の中には「まことしやか」なものも含まれています。どこまで正しい情報なのか、疑問に感じませんか。

 私が学会長を務める第7回日本認知症予防学会学術集会(9月22日〜24日・岡山コンベンションセンター)では、「認知症予防の確かなエビデンス」をテーマに「本物かどうか」に焦点を当てます。

 例えば美容療法と呼ばれるものがあります。アルツハイマー病の女性に化粧を施すと、実に幸せそうな顔になるというのです。

 それが認知症の改善につながるというのなら、前後のデータを検証して、エビデンスをつくっていこうという試みです。私は認知症予防学会内のエビデンス創出委員会の委員長でもあります。

 サプリメント、ヨガ、園芸療法、音楽療法、アロマセラピー、大人の塗り絵...。どれも「いい」と言われているが、確証はありません。

 現在、申請された各種の療法について検証を進めています。評価はA、B、C、Dの4 段階。Aは「効果が認められる」、Dなら「効果なし」です。学会のシンポジウムで判定結果を発表します。

 海外にも例のない取り組みです。超高齢社会の日本にしかできない学会になると思います。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学
岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-223-7151(代表)
http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/shinkeinaika/index.htm


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