国立長寿医療研究センター(愛知県大府市) 柳澤 勝彦 研究所長

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アルツハイマー病期待される創薬の現場

 高齢者に焦点を当てた唯一のナショナルセンター「国立長寿医療研究センター」。中でも認知症先進医療開発センターでは、認知症の7割を占めるというアルツハイマー病に対する創薬の研究を進めている。柳澤勝彦研究所長に現状について話を聞いた。

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柳澤勝彦研究所長

創薬開発への道筋

 今後、75歳以上の後期高齢者の増加に伴い、「アルツハイマー病もますます増加する見通し」(柳澤所長)だ。このため、認知症先進医療開発センターが実施する研究、開発は国内外から注目されている。

 同センターが、アルツハイマー病に関して実施している研究のテーマは大きく分けて三つある。

 一つ目は、アルツハイマー病の発症メカニズムの解明だ。アミロイドβタンパクが、脳内に蓄積することで、老人斑となり、これが原因で神経細胞に障害を与えることはわかっている。しかし、なぜ、老人斑の出現によって、認知症を発症するのか。「その原理を解明することで、治療につなげたい」と柳澤所長はいう。

 二つ目の研究テーマが、アルツハイマー病の治療や予防のための新薬の開発だ。研究所は創薬のラボを所内に持っており、ここでは製薬メーカーで実績を挙げた河合昭好部長などが、研究にあたる。

 5年ほど前、脳の病理学的な変化が始まってから、認知症発症まで、約20年の時間がかかっていることが判明。同センターでは、発症に至る前に脳にアミロイドβタンパクがたまっていく変化に着目。そのタイミングに処方する薬を創ることで、脳が障害されない可能性は高くなる。

 同センターでは、これまでの研究から、老人斑をつくるアミロイドβタンパクの最初の分子形態の変化を明らかにしており、これをもとに新薬開発へ展開している。

 「創薬とは、いわば鍵穴の形を見つけて、そこに鍵のようにフィットする低分子化合物を開発すること」と柳澤所長。

 鍵となる低分子化合物を、450万種ほどのライブラリーの中からコンピューターでまず300種類に絞り込み、その後、試験管内でスクリーニング。さらにそのうちの100種類のうちの1種類か2種類を「現在動物実験で評価している」と柳澤所長。

 「今後は、製薬メーカーとの共同開発も含め、5年以内に人を対象とする臨床試験に持っていき、1日でもはやく新薬をつくり、2025年問題には間に合わせたい」と力を込める。

血液でアルツハイマー病を診断

 三つ目は、血液でアルツハイマー病を診断するという研究だ。現在、アミロイドβタンパクがたまっているかどうかを検査する方法は二つ。腰椎穿(せん)刺によって採取した脳せき髄液を検査すること、または、PET検査だ。

 しかし、いずれの方法も、体への負担や、コスト面から、大規模な臨床試験や将来の臨床現場での実用には向かない。

 一方、同センターでは、脳の中にアミロイドβタンパクがたまっているかどうかを、血液検査によって、高い精度で検査する研究を進めている。

 きっかけは、2002年に「質量分析システム」開発で、ノーベル賞を受賞した田中耕一氏だった。質量分析システムを医療に役立てたいという考えを持つ田中氏が、柳澤所長に共同研究を持ちかけたのだ。

 その研究は、血液中のタンパク質の大きさを質量分析システムによって寸分たがわず測ることで、アミロイドβタンパクの蓄積の状態を明らかにするというもの。確立すれば、わずかな血液(0.5ml)で、アルツハイマー病の脳内変化が予測できるという。現在、実用化へ向けた検証が進んでいる。

世界的な課題

 「アルツハイマー病は世界の課題となりつつある」と柳澤所長。新興国をも含めた人口の高齢化は、「医療だけの問題だけではなく、社会が成り立っていくのかといった深刻な事態にもなりかねない」(同)という。

 創薬についても、「国際的な競争もあるが、臨床試験など世界の研究者が協力しなければならない点も多い」(同)と、指摘する。


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