医療 福祉 地域の今、そしてこれから
脳の神経細胞が障害されていくことで起こる認知症。高齢化とともに患者数が増加し、介護や社会保障など、さまざまな側面の課題をはらむ。
日本で高齢者福祉の問題を初めて投げかけたとされる小説「恍惚の人」(有吉佐和子作)が1972(昭和47)年に発表されてから45年。
認知症医療に向き合う医療人たちの取材やインタビューを通して、認知症を取り巻く課題について考える。
2025年には約700万人と推計
厚生労働省がまとめたデータによると、2012年に462万人だった有病者数は、2025年には700万人(推計)にまで増加。
2012年の時点で65歳以上の高齢者の約7人に1人、15%だった有病率は、2025年には19%(各年齢の有病率が一定の場合)、約5人に1人に上ると予測されている。
当初の想定を上回るペースで増加する認知症患者、空きがなかなか出ない高齢者施設、ふくれあがる社会保障費...。さまざまな問題を背景に、厚生労働省は2015年、「認知症施策5か年計画(オレンジプラン)」を策定。2015年には「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を発表した。
住み慣れた地域でその人らしく
計画の柱は、「医療や介護の連携による認知症の人への支援」、「認知症の予防治療のための研究開発」、「認知症や高齢者などにやさしい地域づくり」の3点だ。
「住み慣れた地域で、その人らしく暮らし続けられる社会の実現」を基本的な考えとし、2018年度からすべての市町村で認知症初期集中支援チームを設置することや、かかりつけ医向けの「認知症対応力向上研修」の受講者数を2014年度までの約4万2000人から、2017年度末までに6万人にするといった数値目標も掲げる。
ただ、認知症の診断、治療を専門とする医師数は、十分とは言えないのが実情だ。現在、日本認知症学会と日本老年精神医学会が認定する認知症専門医は全国に延べ2071人。増加傾向にあるが、患者数の伸びにははるかに及ばない。