医療と法律問題㊸

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九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

 小学校4年生のA君は、土曜日の午後4時頃帰宅し、お母さんに頭痛を訴えました。聞けば、自転車で転んで頭を打ったとのこと。頭を冷やしてあげると、眠り込んでしまいました。目覚めてお風呂に入った後も頭痛を訴え、うとうとしている様子だったため、すでに時間外ではありましたが、お母さんは近所のB医院にA君を連れて行きました。

 B医院での頭部CTで、側頭部に線状骨折と最大幅18mmの硬膜外出血が確認され、A君は救急車でC総合病院に搬送されました。おそらく、B医院の医師は、緊急で血腫除去術を行うべきだと考えたのではないでしょうか。

 しかし、C病院の担当医は、保存的に経過をみることにしました。搬入時のA君の意識が清明であったのがその理由のようです。

 翌日未明から早朝にかけて、A君は嘔吐(おうと)を繰り返しています。カルテには頭痛自制不可との記載もあります。しかし、午前中の頭部CTでは、血腫は前日より少し消退しているとの判断であり、経過観察が続けられました。

 頭痛は、アンヒバ座薬でややおさまっていたようですが、その日の夕方から再び増強し、午後8時30分には、再び「自制不可」として座薬挿肛、その後ほぼ6時間おきに座薬が挿肛されています。それでも、入院3日目の午後10時には、「痛い、助けて」と大声で叫ぶほどの強い頭痛の訴えとなり、以降、激しい頭痛の訴えが続きます。

 意識レベルは、入院3日目の午前中に「若干ぼんやりしている」様子が観察され、看護記録ではジャパン・コーマ・スケールが「0〜」との評価になっています。それが同日午後10時には「もうろうとしている感じ」「〜10」との評価になり、日付が変わった入院4日目には意味不明な発語などがあり「3〜10」との評価になりました。

 このような経過の末に、入院4日目の午前6時に瞳孔不同が出現し、自発呼吸が減弱、消失しました。緊急CT、MRI等の検査で、脳圧亢進による中心性テント切痕ヘルニアと診断されました。この時点では局所的に血腫を除去しても効果はないということで手術は見送られ、A君はそのまま植物状態となってしまいました。

 一般に、厚さ1~2cm以上、または20〜30ml以上の急性硬膜下血腫がある場合には原則として手術とされています。また、神経症状が進行性に悪化する場合には緊急手術の適応といわれています。「瞳孔不動が出現したら手術が必要だと考えていたが、本件ではそこからの進行が速すぎた」というのが担当医のコメントでした。しかし、そもそも最大幅18mmの硬膜外血腫なのですから、最初から手術を選択してもいい大きさです。とりあえず経過を観察するにしても、入院翌日から3日目の頭痛の増強、3日目午後から明らかになってきた意識レベルの低下といった症状の悪化をみれば、すみやかに手術を決断すべきだったと思われます。

 事故から約1年半後、C病院が責任を認め、示談が成立しました。担当医は、ICUのA君の枕元で、A君とお母さんに対し、対応が遅れたことについて謝罪しました。

 それからさらに約1年半を経て、お母さんはさまざまな条件を整え、脳死状態のA君を自宅に連れ帰りました。約10カ月間、周囲の協力を得ながら、自宅で、2人で過ごしたそうです。

■九州合同法律事務所
福岡市東区馬出1の10の2 メディカルセンタービル九大病院前6階
TEL:092-641-2007


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