「認知症」世界的課題に

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国際アルツハイマー病協会国際会議 78カ国 4000人集う

 世界各国の認知症者やその家族、医療関係者が集う「第32回国際アルツハイマー病協会国際会議〜ともに新しい時代へ」(主催:国際アルツハイマー病協会、公益社団法人認知症の人と家族の会)が、4月26〜29日、国立京都国際会館(京都市)で開かれた。国内開催は、2004年の京都開催以来、13年ぶり。アジア諸国、アフリカ、南米など過去最多の78カ国から約4000人が集まった。

当事者も発信「理解と優しい地域社会づくりのきっかけに」

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シンポジウムで登壇した演者たち

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ブライデンさんと丹野さん

 同会議は、認知症当事者が運営や発表に積極的に関与するのが特徴。今回は、過去最多の約200人に上った。

 最終日の分科会で発表した、オーストリアのクリスティーン・ブライデンさん(68)は、政府高官だった46歳の時、アルツハイマー病だと診断された。認知症者本人が語ることの重要性を訴えてきた当事者のひとりで、04年の会議でも講演している。

 今回は、「日本の変化―外からの視点」と題して講演。「(前回は翻訳者に)痴ほう老人ではなく認知症の人と訳してほしいと要望した」などと振り返った。

 その後、来日するたびに交流してきた認知症の人や介護者の姿に「大きな変化を感じる」と話したブライデンさん。「日本は認知症者に優しい地域社会を作る世界の主導的立場になれるはず」と期待を込めた。

 同じ分科会では、4年前、39歳で若年性認知症と診断され、会社勤務を続けながら認知症の人たちからの相談にも応じている丹野智文さん(43)=仙台市=も発表した。

 「『認知症=人生の終わり』だと考え、泣き暮らした時期もあった」と振り返った丹野さん。職場に病気を伝え、営業職から事務職へと異動して働き続ける現状を「助けてくれる人が多かった」と話した。

 さらに、「認知症の人と接するときは、手助けしたいと思っても、少し待ってあげてください。できることと自信を、奪わないでください」と周囲の理解を訴えた。

第32回 国際アルツハイマー病協会国際会議
シンポジウム認知症にやさしい地域社会

 国内で13年ぶりに開かれた「第32回国際アルツハイマー病協会国際会議」は、認知症が世界的課題になっていることを強く印象付けた。

 さまざまな国の取り組みが紹介されたシンポジウム「認知症にやさしい地域社会」の発表の一部を紹介する。

ナイジェリア

キキ・エドワーズ氏(ロゼッテイ・ケア・リミテッド創立者)

 ナイジェリアには「認知症」という言葉はまだありません。その症状は「魔法にかかった」「狂気」などと言われ、殺されてしまうケースもあります。

 近代化が進み、村の若い世代は都市に流出。高齢者を敬うという意識が失われつつあります。このため、イギリスで作られた「認知症フレンズ」というプログラムを用いて高齢者の経験や知恵を見直し、人々の意識を変えようという試みを進めています。

 国内36の州のうちの19の州で優秀な指導者である「フレンズ」が生まれています。

イラン

ファラネ・カポリ氏(翻訳家)

 イランアルツハイマー協会では、テヘランの24の地区の小学生、約4500人に認知症啓発の教育プログラムを実施しました。専門の担当者が学校を訪れ、認知症に関する話をした上で、子ども向けパンフレットを渡しています。

 また、保護者向けの質問票も子どもたちに託します。回答では、認知症の疑いがある家族、親族がいるかという問いに、25%もの家庭から「はい」という答えが返ってきました。

 また、多くの保護者が教育プログラムを受けて、認知症の人への子どもの態度が変わったと回答しました。

 対象は小学5年生です。幼いときに情報を吸収することが、大人になってからのより良い行動につながると考えれば、コストも決して高くありません。

 質問票の回答では、「認知症とは物忘れのことだと思っていた」というものもあり、家族への情報発信にもつながっていると感じています。

アルゼンチン

ノエミ・メディナ氏(アルツハイマー病と関連障害と闘う協会副会長)

 当協会が運営する「カフェ・コン・アルマ」の活動を紹介します。

 ラテンアメリカの中では先駆的な取り組みで、認知症という病気のことを知ってもらうため、町のカフェなどに認知症の当事者や家族、地域の人に集まってもらい、食べたり、飲んだり、時にピアソラの曲で踊ったりながら、交流しています。

 地域の人たちは認知症を知ることができます。当事者や家族のQOL(生活の質)を上げることにもつながっています。

 NGOとして活動し、医療関係者も注目しているため、ウルグアイ、プエルトリコなどにも広がりを見せています。

インド

ミーラ・パッタビラマン氏(アルツハイマー病と関連疾患の協会議長)

 ケララ州では、2017年1月から1カ月間、屋外での舞台演劇による認知症啓発キャンペーンをしました。インドの有名な男優を主役にしたところ、多くの観客が集まりました。

 物語は、高齢の男性主人公が、住み込みのヘルパーから介護を受けるというもの。実子は仕事のため海外に移住。ヘルパーに親の世話を託した、という設定です。

 認知症者と介護者の会話をユーモアを交えて表現。笑いも多くあります。

 一般の方に認知症を理解してもらおうという試みに、市長や国の保健大臣など、行政からの見学者も訪れ、高い評価を受けました。

日本

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閉会式

松永美根子氏(介護老人保健施設 孔子の里副施設長=熊本県菊池市)

 熊本は全国有数の長寿県です。「熊本モデル」として認知症疾患医療センターの基幹型1カ所、地域拠点型12カ所を設置。2層式にしているのが特徴です。

 認知症の早期発見と、認知症の知識を持つ人の育成に力を入れています。県内にいる「認知症サポーター」の数は、人口比で8年連続全国1位です。

 菊池市では「認知症サポーター」養成講座を小学5年と中学2年で受講するようになっています。2回受講することで認知症を正しく理解できます。この子どもたちが、今後の地域にとって大きな力になると思います。

 サポーターになると腕に装着できるオレンジリングがもらえます。少し大きなリングもあり、これはサポーターのいるコンビニや薬局、家の玄関先などに付けていただいています。「オレンジリング街いっぱい運動」という取り組みです。

 認知症の人が行方不明になるのは、夜間が多いことから、菊池市では明かりがついている場所を夜間4回、見守る活動も続けています。新聞販売店にも早朝の見守りに協力をいただいています。地域の方、企業、事業所などの見守りが増えることが、優しい地域づくりにつながると考えています。


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