愛知医科大学 産婦人科学講座 主任教授/愛知医科大学 副学長/愛知医科大学病院 副病院長 若槻 明彦

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必要なのは「総合力」

【わかつき・あきひこ】 高知学芸高校卒業 1984 愛知医科大学卒業 高知医科大学医学部附属病院産婦人科研修医 1989米国アーバインカリフォルニア大学リサーチフェロー 1995高知医科大学医学部附属病院周産母子センター講師 2004高知大学医学部生体機能・感染制御学講座生殖・加齢病態学教室助教授 2005 愛知医科大学産婦人科学講座主任教授2010 同大学病院周産期母子医療センター部長 2011 同大学病院副院長 医療連携センター長 2014 同大学副学長

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◎愛知医科大産婦人科の特徴

 当科の大きな特徴は、救急手術や緊急入院に数多く対応していることです。これは、病院の大方針でもあり、受け入れを断らないからです。2016年の緊急入院は318件。一昨年度の母体搬送症例数は年間約380件でした。

 2006年に生殖・周産期母子医療センターを開設。2013年には地域周産期母子医療センターに認定されました。新生児科の医師と連携しながら診療に当たっています。

 年間約1000件の婦人科手術のうち460件ほどは腹腔鏡下手術です。良性腫瘍だけでなく、子宮体がんの腹腔鏡下手術もしており、今年、子宮頸(けい)がんの腹腔鏡下手術で先進医療を取得しました。

◎女性のトータルヘルスケア

 日本産科婦人科学会のサブスペシャルティーは、①周産期医学②生殖内分泌学③婦人科腫瘍学④女性医学の四つです。その中で私は、女性医学に特に力を入れています。

 女性医学とは、子宮内膜症や更年期障害、骨粗しょう症など、思春期から老年期にかけての女性特有の疾患を、予防医学の観点から取り扱うことでQOLの維持と向上を目指すものです。われわれは、これを「女性のトータルヘルスケア」と呼んでいます。

 これまで、学生時代に教えられることがなかった分野ですが、近ごろでは受診ニーズが高まってきました。

 厚生労働省の発表(2013年度)によると、日本人女性の平均寿命は86.61歳。男性の80.21歳と比べると6〜7年ほどの開きがあります。しかし、健康寿命を見ると、男性が71.19歳で女性は74.21歳と、あまり差がありません。つまり、女性の方が寝たきりや要介護状態で過ごす期間が男性よりも長いということです。

 寝たきりを防ぐには、原因となる骨折や脳疾患などの予防が必要です。閉経後、女性ホルモンが減少すると、骨粗しょう症になって骨折しやすくなり、コレステロール値、血管の拡張率も高くなります。また、女性の糖尿病は閉経後に発症しやすく、50歳を過ぎるとコレステロール値が高いと診断される人が約50%と、急激に高まります。

 閉経前後、体のほてりや大量の発汗といった症状で産婦人科を受診する患者を診る際、コレステロール値や骨密度の検査をして、その時の状態と、予防方法を伝えれば、生活習慣病の発症リスクを低減できます。しかし、そのことを考えて検査や治療をしている産婦人科医はまだ少ないようです。

 女性の健康寿命を延ばすには、閉経期の健康状態をスクリーニングすることが重要ですが、現在の保険制度では、予防医学に対する保険診療は確立していません。

 女性のトータルヘルスケア普及のためには、国が政策的に取り組むことが必要だと思います。

◎子宮内膜症と心疾患

 国内の子宮内膜症患者は、月経のある女性の10人に1人。約100万〜200万人にもなると言われています。強い生理痛を伴うだけでなく、不妊症にもつながる深刻な病気です。

 昨年、米国で、子宮内膜症の女性は心疾患リスクが最大約3倍に高まるとの研究結果が発表されました。炎症性疾患の子宮内膜症では、子宮内の炎症が閉経時まで慢性的に続きます。20〜30年もの間、炎症にさらされると、血管へのダメージが大きくなり、動脈硬化、心筋梗塞が引き起こされるのです。今後、対応が急がれる部分でしょう。

◎産婦人科医師不足

 日本産科婦人科学会は、今年、新専門医制度を開始しました。

 新しい専門医制度では、募集定員の上限が設けられていますが、われわれ産婦人科と外科、病理、臨床検査は除外されています。過去20年間で、医師数は全体的に増加していますが、この4領域は減少傾向だからです。

 地域医療を賄うには、産婦人科の新規専攻医は最低でも年間500人必要ですが、足りていません。

 当科の救急症例の約半数は深夜の搬送です。手術を要するケースがほとんどですから、当直医1人では対応できません。当直以外にも待機する人員が必要ですし、当直で分娩(ぶんべん)に立ち会っても、翌日は朝から勤務しなければならないのが現状です。

 本来は、救急医療にかかわる診療科にこそ多くの医師が必要なのに敬遠され、そのほかの診療科に若い医師が集中する傾向にあります。医師の地域偏在がクローズアップされていますが、診療科偏在も早急に解決すべき大きな課題です。

◎医療連携の取り組み

 国の方針で、急性期から慢性期まで地域で完結する医療が求められています。私は医療連携センター長でもありますので、定期的な会合や研究会を通して、周辺の病院や診療所、施設などとの連携を進めています。院内の各部署からも月に1回情報を集め、大学病院の運営方針を決めています。

 先日、連携病院の医師約2000人を対象にアンケート調査を実施。「当院に改善してほしいこと」をリサーチした結果、逆紹介が少ないという意見が多くありました。当院は特定機能病院の要件は満たしているとはいえ、逆紹介率が少ないのが現状です。

 そこで、疾患によっては、100%紹介元の病院に戻すことを徹底するなど、解決に向けた取り組みを始めました。まずは産婦人科で試みて、状況が良くなれば全診療科で実施したいと考えています。

◎今後の展望と教育方針

 長久手市は、2005年、日本国際博覧会(愛・地球博)のメイン会場になりました。住みやすく、住民の平均年齢が37・7歳(2010年国勢調査)と日本一若いことが特徴です。

 粕屋郡久山町(福岡県)には、住民を対象とした脳卒中、心血管疾患などの疫学調査「久山町研究」があります。長久手市でも、地域の特性を生かした研究ができないか検討しているところです。

 医師になったばかりのころは、子どもと一緒です。何かにチャレンジさせないと、その人の才能はわからない。それぞれが持つ才能を引き出し、伸ばすことが私の役割だと思います。

 今、医療現場で求められているのは、知識、技量、コミュニケーション能力のすべてがそろった総合力がある医師です。

 いくら手先が起用でも、研究的な背景がなければ、いい臨床医にはなれないし、本を読んでいるだけでは総合力は身に付きません。現場に出て、患者さんや同僚と意思疎通を図りながら治療を進めること、後輩の面倒をみることなども重要だと思います。

 当医局の最低限の到達目標は、専門医と学位を取得することです。この二つを取得してからが医師としての本当のスタート。どんな環境のもとでも困らないように、医師として実力をつけさせることが、私の教育方針です。

学校法人 愛知医科大学 産婦人科学講座
愛知県長久手市岩作雁又1-1
TEL:0561-62-3311(代表)
http://www.aichi-med-u.ac.jp/su06/su0607/su060703/22.html


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