琉球大学医学部 脳神経外科学講座 石内 勝吾 主任教授

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健康長寿は生き方そのもの

【いしうち・しょうご】 栃木県立足利高校卒業 1985 群馬大学医学部卒業 1999 群馬大学医学部脳神経外科学助手 2002同講師 同外来医長 2009 琉球大学医学部脳神経外科学講座主任教授

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◎脳機能温存手術

 当教室は、1984(昭和59)年、琉球大学医学部附属病院が那覇市与儀から現在の中頭郡西原町に新築移転した際、六川二郎先生によって創設されました。今年で33年目になります。

 六川先生は、「脳外科医は脳細胞を切除したり、神経活動の伝播(でんぱ)を遮断したりするだけではなく大脳神経細胞を正常化することを目的に脳機能の温存を重視した手術をしなければならない」との考えから、「脳賦活学」「脳機能温存手術」の発展に尽力されました。私が3代目教授に就任してからも、その意志を受け継ぎ、「脳科学を基盤とする脳神経外科の発展」を目指した教室運営をしています。

 医者は、ただ病気の治療をすればいいわけではありません。長年に渡り病気に苦しんできた患者さんの気持ちや社会的環境にまで、心を配ることができる医療人を育成していきたいと考えています。

 当院は、2014年、術中MRIを導入。PET画像や神経回路の情報をナビゲーションシステムに入力することで、術中の顕微鏡視野内に病変の位置などが示され、画像誘導による安全性の高い手術ができるようになりました。

 開頭手術の際は、脳がわずかに沈下してしまうため、術前に撮った画像と誤差が生じてしまいますが、手術中にもう一度MRIを撮れば、自動的にコンピューターがその誤差を判定し、ナビゲーション画像を修正してくれます。正確に手術できるため、腫瘍を取り残すこともありません。

 また、術後に運動まひや失語症などの後遺症を残さないために、術中は脳神経の働きをモニターし、安全で有効な手術を実施しています。

◎沖縄県の脳疾患の特徴

 沖縄県は、1945(同20)年からの27年間、米国の統治下にありました。そのため、本土よりも早い時期からライフスタイルが米国化されていて、ファストフードを食べる習慣が根づいています。

 また、戦前にあった鉄軌道(路面電車)は空襲や地上戦で破壊され、復旧されなかったため、県内には那覇市の一部にモノレールが通っているだけで電車がありません。日差しが強いこともあり、徒歩ではなく車で移動することが多く、運動不足になりがちです。

 高カロリー、高脂肪に偏った食生活と運動不足によって、沖縄県民8人のうち5人が肥満というデータも出ています。

 がん、心筋梗塞、脳卒中などの疾患が、30〜50代の働き盛りを襲っているという現状があり、かつて長寿県と呼ばれていた沖縄県は今、短命化が急速に進行しています。

 脳腫瘍の重症度も、本土の患者さんに比べると格段に高く、直径5cm以上の手ごわい巨大な腫瘍症例が多く見られます。

 脳神経外科の基幹病院は県内では本学が唯一。連携施設が4施設、関連施設が10施設、全部で15施設が一つのグループになっています。グループ全体で年間約2000例の手術を実施。当科では脳幹や頭蓋底にできた巨大な腫瘍の摘出など、難易度が高い手術を約200例実施しています。

◎健康長寿の秘訣

 2009年、前橋市(群馬県)から本学に赴任したころ、すでに沖縄県の短命化は始まっていました。一方で、90歳〜100歳の「スーパー高齢者」もたくさんいらっしゃることに興味を持ち、健康長寿の研究を始めたのです。

 県北部にある大宜味村に喜如嘉(きじょか)という健康長寿の地域があると聞き、その生活ぶりを見に行きました。そこには昔ながらの自然が残っていて、畑に植えられた糸芭蕉(ばしょう)の葉に埋もれるように民家が建っていました。

 その村に、芭蕉布の織物を作る、人間国宝の染織家・平良敏子さんが住んでいます。来年、数え年97歳の長寿の祝い「カジマヤー」を迎える彼女は、土日も関係なく働き、弟子よりも早く工房に行き、誰よりも遅くまで工房に残っているそうです。

 その元気の秘訣(ひけつ)を探るため、脳の検査をさせてもらいました。すると、脳をリフレッシュする「幹細胞」が若い人と同じくらいたくさん残っていて、まったく萎縮が見られない若々しい脳であることが分かりました。

 平良さんは地元で採れる野草、薬草、小魚、イモ類など、沖縄に昔からある食材を使った料理を食べているだけで、何か特別な"長寿食材"を食べているわけではありません。では、なぜ、「若い脳」でいられるのでしょう。

 彼女は「自分の作品が大嫌い」だと言います。それは、300以上ある織物の工程の一つひとつに手を抜かずやっても、いざ作品になってみると、「もう少しこうすればよかった」と後悔する箇所が必ず見つかるからだそうです。それが悔しいから、毎年新しい作品を作って作品展に応募しているとも聞きました。

 「いい作品を作りたい」という目的がはっきりしているから、現状に満足することなく、向上心を持って生きている。たとえ困難に遭遇したとしても、困難を克服し、何かを学び、前向きに生きているのです。

 食生活の改善や運動不足の解消はもちろんですが、健康で長生きするために最も重要なのは、どう生きるか。健康長寿は生き方そのものです。芸術家として現状に妥協せず、常に高みを目指す平良さんに会って、そう思うようになりました。

◎地域医療のあるべき姿

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 沖縄県は、私立病院、公立病院、大学病院の横の連携がしっかりできています。出身大学の偏りがなく、北海道から沖縄まで、全国各地の大学の出身者で構成されているため、学閥などもありません。

 現在、沖縄県医師会には医師2325人が所属し、各人の専門分野ごとの分科会に所属しています。私は医師会の脳神経外科分科会に所属していて、会員は全部で100人ほどです。横社会である沖縄の伝統に沿い、毎月第4金曜日にみんなで集まって、日常の診療で経験した症例を自由に議論する会として30年以上続いています。

 医療施設が垣根を越えてつながり、活動することは、本来あるべき地域医療の姿だと思います。

国立大学法人 琉球大学 医学部脳神経外科学講座
沖縄県中頭郡西原町字上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://www.nsrg-ryukyu.com/


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