国立病院機構 都城医療センター 冷牟田 浩司 院長

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守るべきものを守る
変化には柔軟に対応も

【ひやむた・こうじ】 ラ・サール高校卒業 1977久留米大学医学部卒業自治医科大学研修医 久留米大学内科学第三講座助手 1984 米国テキサスメディカルセンターvisiting physician 1993久留米大学内科学第三講座医局長 1998 国立病院九州医療センター(現:国立病院機構九州医療センター)循環器科長2003 九州医療センター副院長 2004 久留米大学客員教授兼任 2016独立行政法人国立病院機構都城医療センター院長

 2016年7月、都城医療センターに冷牟田浩司新院長が着任した。それまで、九州医療センター(福岡市)で副院長を務めてきた冷牟田院長は、「地域に欠かせない病院とは」を考え続けてきた1年だったと振り返る。

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◎温かな思い出の町

 高校時代は鹿児島で暮らしました。ラグビー部に所属していた私は、何度か都城市内の高校に交流試合に来ていました。

 夏の暑い時期でした。練習試合後、相手の高校のマネジャーが用意してくれた牛乳が、実においしかったのを鮮明に覚えています。道を歩いていると、地元の方から「どこから来たね」と気さくに声をかけてもらいました。その優しさ、温かさが強く記憶に残っていました。

 ですから、都城医療センターへの赴任が決まったとき、「縁だな」と即座に思ったものです。急な赴任決定で、不安やとまどいもある中、若いころのこの温かい思い出が、私の背中をそっと押してくれているようにも感じました。

◎歴史を守り、変化を恐れず

 都城医療センターは1909(明治42)年、都城衛戌(えいじゅ)病院として創設。今年で108年の歴史と伝統ある病院です。

 敷地内にある院長宿舎の中庭には、根元が太く、高さも10mはゆうにあろうかと思われる栴檀(せんだん)という樹木がそびえています。創設時に植えられた1本の小さな苗木が、風雪に耐え、100年を超える年月を経て成長した姿であろうと思います。幹の内部には歴年の年輪が刻まれているはずです。都城医療センターの歴史を改めて誇りに感じます。

 近年、そんな歴史ある都城医療センターの全面新築・改装が進みました。

 2008年の病棟新築に続き、2015年の新外来診療管理棟完成、昨年8月の剖検室完成。外来者駐車場の整備も終了し、真新しい病院に生まれ変わりました。

 昔を知る地域の皆さんからは、「これが本当にかつての都城病院か、と見違えるようになった」と喜んでいただいています。「歴史と伝統の病院が全面的に生まれ変わり、『箱』はできた。その中に『魂』を入れなければならない」と思いましたね。

 守るべきものは守り、必要なところは柔軟に変化させる。それが、井口厚司・前院長から引き継いだ入魂の教えです。

◎新しい命を守る

 極端な言い方をすると、医療圏内で1カ所しかできない必須の医療は、絶対に守らなければなりません。

 当院の機能で守るべき医療の第一は周産期医療なんですね。宮崎県の県南、県西、そして鹿児島県の一部を含んだ医療圏内で、周産期医療を支える施設が減少している。もう、われわれしかいないのです。

 日夜、奮闘していらっしゃるかかりつけ医の先生を支援し、一緒に周産期医療を守る。これは引き続きやっていかなければならないと思っています。

 都城地域には、1次施設と当院のような2次施設をインターネット回線で結び、胎児の心音もリアルタイムで共有できるシステムが整っています。異常の疑いがあれば、即座に連携が取れるようになっているのです。

 NICU(新生児集中治療室)6床、GCU(新生児治療回復室)12床で運営しており、稼働率はほぼ100%。2016年度1年間の当院での分娩(ぶんべん)件数は452件。そのうち予定帝王切開が79件、緊急帝王切開が143件でした。

 周産期医療への24時間対応には、大きなマンパワーが必要になります。現場スタッフの獅子奮迅の活動、小児科と産科のチーム医療、宮崎大学と熊本大学からの強力なご支援で対応していますが、前院長の時代も「人財確保」にはかなり苦労されたと聞いています。

 昨年4月の熊本地震で、熊本大学からの医師派遣が難しくなった時には、熊本大学と宮崎大学が連携してくださり、双方から支援をいただきました。それによって現在も県南の周産期医療を守ることができています。

◎増え続ける「がん」を診る

 当院は県南部の地域がん診療連携拠点病院です。内視鏡下治療を含む手術治療、化学療法、放射線治療のすべてを網羅し、包括的な診療をしています。今後もその責任を全うしていかなければなりません。

 5大がんはもちろん、血液がんや頭頸部・口腔がん、泌尿器系のがんなど幅広く診療しています。当院で対応できないがんもありますが、都城市内の専門病院や大学の医学部附属病院としっかり連携して、お世話しています。

 都城市には200〜300床規模の急性期型病院が、当院を含めて3カ所。1病院ですべての診療科をカバーするわけにはいきません。得意な診療機能を尊重しあい、地域全体で、あらゆる疾患の診療ができる形をとることが大事です。

◎地域でよく話し合う

 当院は急性期型病院です。それは、基本的に今後も変わりません。ただ、未曽有(みぞう)の超高齢社会となる2025年を前に、地域包括ケアシステム構築に向けて協議が続いています。これからは地域の需要に応じて柔軟に対応して、回復期医療にも力を注がねばならないかもしれません。

 地域の健康を、医療圏全体で守るためにはどうすればいいか。遠慮なく話し合い、可能な限り、地域の中で完結できる医療を目指していきたいと思っています。

◎いつか帰って

 課題は、「人財」。小児科医、麻酔科医、病理医をはじめ、医師不足はまだまだ解決していません。私の仕事は、「鉄下駄(げた)履いて、医者探し」と言ってもいいぐらいです。

 この都城盆地は、宮崎県にありますが、宮崎、熊本、鹿児島からの交通の合流地点。宮崎大学、熊本大学、鹿児島大学の三つの大学のほか福岡大学にも支援をいただきながら、医師確保に努めています。

 当院には附属看護学校が併設されています。看護師国家試験合格率は、5年連続で100%。「難易度が上がった」などの評判もある中、がんばってくれています。

 もっと勉強したいと、福岡、関西、関東へ行く子、大学への編入や助産師を目指して宮崎を出ていく卒業生も多いですね。県内に残るのは5割程度です。

 その気持ちもわかります。でも、ある程度の期間が過ぎ、自信がついたら帰ってきてほしい。外で刺激を受けた優秀な子たちが、いつか都城に帰ってきてくれるのではないか。それを信じて待っています。

◎患者の手を握る

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 地域の人に信頼され続ける病院であるためには、都会の病院に負けない知識・技術力を持つことが大切です。それがなければ、いくら思いを持っていても、ダメ。大病院に負けない知識・技術力をつける。そのための教育が大事です。

 ただ、職員に願うのは、高い技術を持ちながらも、「患者さんの手を優しく握る医療人であってほしい」ということ。ばたばたと走り回り、患者さんの顔も見ないようでは、医療者失格です。

 困っている患者さんを見たら、優しく手を握る。それができる医療人が求められていると思うのです。

 都会では、たくさんの患者をたくさんの医療人と機器で診ています。限られた人員、医療資材で、患者さんに信頼される病院であり続けるには、志と気概とともに、温かさを忘れてはならないと思います。

独立行政法人 国立病院機構 都城医療センター
宮崎県都城市祝吉町5033―1
TEL:0986-23-4111
http://www.nho-miyakon.jp/


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