福岡大学医学部呼吸器内科 藤田 昌樹 教授

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呼吸器疾患全般に対応できる医師を育てる
患者さんのニーズを基盤に

【ふじた・まさき】 鳥取県立鳥取西高校卒業1988 九州大学医学部卒業 1988 九州大学医学部附属病院研修医 1989 九州厚生年金病院臨床研修医 1990 九州大学医学部附属病院医員 1991 九州大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了 1995 西福岡病院1997 National Jewish Medical and ReseachCenter,Reseach Associate 1999 北九州市立医療センター呼吸器科部長 2000 九州大学医学部附属病院助手 2007 九州大学病院呼吸器科講師 福岡大学医学部呼吸器内科学准教授 2010 福岡大学病院呼吸器内科診療教授2017 福岡大学医学部呼吸器内科教授

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―4月に福岡大学呼吸器内科の教授に就任されました。これまでの歩みをお聞かせください。

 研究者としての転機があったとすれば、アメリカのNational Jewish Medicaland Reseach Centerに留学して自由に研究できる環境を体験したことになると思います。

 留学先は昔の結核サナトリウムを基盤に発展した病院で、呼吸器系疾患では有名な病院でした。さまざまな体験を積ませていただき、呼吸器病学全般で研究者としてやっていけるかもしれないという手ごたえを得て帰国することができました。

 帰国してからは九州大学に戻り、呼吸器感染症を中心に臨床経験を積みました。九州大学の呼吸器内科は細分化されていて、がんや感染症、あるいはびまん性肺疾患やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった分野でそれぞれ専門化が進んでいます。内科の一分野として呼吸器内科が分かれているにもかかわらず、さらに細分化されていることについて疑問を感じていたときに、福岡大学から声をかけていただきました。

 2007年に福岡大学に移ってからは呼吸器全般を扱うようになり、肺がんから感染症、移植まで含めて呼吸器の対象になる疾患のすべてに対応しようと10年ほど奮闘してきました。論文は感染症に関するものが中心ですが、COPDやがんの論文も書いており、自分の思うような方向に進んでこれたと満足しています。

―3代目教授として教室をどのように運営しますか。

 初代の吉田稔教授はCOPD研究で有名な方で、2代目の渡辺憲太朗教授は間質性肺炎の専門家でした。私はCOPDも間質性肺炎も研究しますが、感染症をもう一つの柱に置き、がんの研究にまで手を広げたいと考えています。

 臨床については九州大学との住み分けを意識します。九州大学病院はメガホスピタルであり、同じ福岡市内にあって、そこと競争することは得策ではありません。九州大学は福岡市東部にありますので、私たちは市内西南部地域と糸島市地域の呼吸器疾患をカバーしようと思います。

 臨床分野のもう一つの課題は、呼吸器領域をすべて診ることのできる医師を育成することです。専門化が進んだ弊害ともいえますが、自身の専門以外のことは診ない、正確には「診ることができない」医師が増えています。

 当教室が目指しているのは、その医師に相談すればある程度のことは解決できる医師であり、1人で診療を完結できる医師です。ほかの診療科のことについて相談を受けたとしてもある程度の対応ができる医師が理想であり、専門性を持ちながらも患者さんから要求されるすべてに対応できるというのが医師育成についての方針です。

 現在、教室のスタッフは私を含めて7人です。残念ながら内科の中ではあまり人気がありません。というのも、福岡大学の学生にとって「腫瘍を診る」行為というのはどうも苦痛らしいのです。なかなか治らないし患者さんも日々落ち込んで暗くなっていく...、そんな毎日にモチベーションが維持できないんですね。

 がんの治療は分子生物学的に大いに発展しており、一部の「エリート大学」の学生は腫瘍に目が向いていますが、一般診療家を養成する本学の性格上、学生には「やりがいのない診療科」と映っているのかもしれません。

 学生に対していかに呼吸器疾患治療のおもしろさ、醍醐(だいご)味を伝えていくか、今後はそこに力を入れなければなりません。学生は病棟実習でがんの患者さんばかり診る傾向にありますが、もっと外来診療を体験させ、呼吸不全や気管支喘息(ぜんそく)を治療させて「治す経験」も積ませるべきでしょうね。

 また、学生が「治らない疾患」とみているがんの領域でも、EGFR(上皮増殖因子レセプター)遺伝子の変異について解明が進んでいます。それがわからなかった時代、肺がん患者さんの5年生存率は1%程度でしたが、今では約30%まで改善しています。

 喘息に関しては、約20年前まで救急外来はほとんど喘息の患者さんだったものが救急外来受診が月間数人程度までコントロールできるようになりました。気管支喘息では吸入ステロイド薬の性能向上が進み、感染症領域も新薬でうまくコントロールできる時代になっているのです。

―診療方針について。

 福岡大学病院の井上亨病院長もおっしゃっていますが、呼吸器内科の方向性は、「断らない医療」を提供することです。つまり患者さんのニーズに沿った診療の提供であり、一人ひとりの患者さんが希望されることについて、ある程度は融通をきかせてかなえるということだと思います。

 現在、入院患者の半数以上が肺がんの患者さんです。残念ながら肺がんを完全に治療するのは難しいため、できるだけ長生きしていただく、それも痛みを感じないようにQOLをいかに高めるかというのが患者さんのニーズになっています。間質性肺炎も同じで、完全には治らないけれども症状をうまくコントロールするということです。

―地域医療の充実にも関心をお持ちですね。

 私は鳥取県の出身で、鳥取県内の医療レベルを知るにつけ、都会とそうでない地域の医療格差がかなり開いていると感じています。例えば鳥取市には約19万人が住んでいるのに、血液専門医は1人しかいないのです。つまり白血病になるとその人しか診ることができないわけで、その方がすべての白血病患者さんのレジュメを決めて、あとは中規模病院の医師に紹介して化学療法するという、とんでもない状況になっているのです。まさに危機的状況で、呼吸器内科医も10人ほどしかいません。

 私の実家は鳥取市郊外の田舎町で開業医をしています。人口1万5千人程度の小さな町で、開業医も4人だけ。往診にまわっていると道に猿が出てくるようなのどかな町です。大学進学で故郷を離れましたが、退官後に故郷に戻れば多少なりともお役に立てるのではないか、最近はそう考えるようになりました。

 福岡大学にもっと力があってスタッフが多ければ、鳥取と同様に困っている九州の各地域に医師を派遣することができるのですが、いかんせん教室を維持するのに手一杯というのが残念なところです。頑張って教室員を増やしたいと思います。

福岡大学医学部呼吸器内科
福岡市城南区七隈7-45-1
TEL:092-801-1011(代表)
http://www.med.fukuoka-u.ac.jp/respiratory/


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