地域での存在意義を確かなものに
特定医療法人社団同仁会金光病院の前身は、1957(昭和32)年に閉院した岡山大学医学部附属病院分院だ。閉院決定後、存続を願う浅口市の市民らが資金を集め、金光病院として診療を継続させた経緯がある。
地域の基幹病院としての役割を担ってきた同院の今後の取り組みなどについて難波義夫理事長・院長に聞いた。
―公的病院のような位置づけです。
歴史は今年でちょうど60年です。浅口市には公的な病院がなく、地域の有志が資金を出し合って、岡山大学医学部附属病院分院を引き継いで、金光病院をつくりました。
前身が大学の附属病院ということもあり、住民のみなさんには、地域のみんなで建てた病院という意識があるようです。
―介護老人保健施設「ケアリゾート金光」を4月に開設しました。
介護老人保健施設の運営を始めるのは大変不安でした。しかし、高齢化が進む一方で、地域には介護老人保健施設が少なく、必要性があるのはわかっていましたので決断しました。話を始めてから慎重に準備を進め、開設まで3年を要しました。
もともと病院の建物は2棟ありました。病棟は、1993年の建設ですので、耐震性には問題はないのですが、もう一方の外来棟は老朽化も進んでおり、建て替えの時期でした。
このため、外来棟のリニューアルに併せて、併設する形で、老健施設を建設しました。病院と同じ建物内である、また新築ということもあり「安心だし、きれい。利用したい」という地域の声もいただいています。
―外来棟も、2016年の秋に一新されました。力を入れたことなどを。
当院は、駐車場不足が長年の課題でした。病院前には160台分のスペースはありましたが、ここは同時に職員の駐車スペースでもあり、患者さんにご迷惑をかけることも少なくありませんでした。
そこで、外来棟の建設に併せて、駐車場の整備を進めました。200人を超える職員用の駐車スペースを周辺に確保。病院前はほぼすべてを患者さん用の駐車スペースに整備しました。
当院にはこの地区での市民病院的役割があり、県南西部の2次救急を担っています。最近増加しているのが、高齢者の心不全・誤嚥(ごえん)性肺炎であり、3次救急病院まで行かず近くで診るように努力しております。
当院の手術件数は、年間400件ほど。4分の1は全身麻酔です。遠方の病院に行かずに、当院で手術をして、在宅や施設に戻りたいというニーズに応えています。
今回のリニューアルでは、手術室を拡大。CT、MRIなどの設備もリニューアルいたしました。
急性期から回復期・慢性期の医療の対応は病院で、そして必要があれば介護施設で対応し、その後は開業医にお返ししていくような、地域の中心になる施設になりたいと考えています。
―在宅を支える地域での連携は。
浅口医師会では毎月研修会をしており、すでに400回以上を数え、当院の新しい研修室を利用してもらっています。医師、訪問看護師、ケアマネジャーなどが集まる研修会も頻繁にあります。
開業医の先生方や患者さんからも、できるだけ地元で診てほしいという要望が多く聞かれます。うちで受け入れなければ、次は遠方の倉敷の大きな病院になり、患者さんを支える家族にどうしても負担がかかります。
今後もわれわれがどれだけ地域の需要に応えているのかを検証しながら、努力しなければなりません。「いざとなったら任せてください」と常に言えるようなポジションになれば、当院の地域での存在意義も確かなものになるでしょう。
―医師になったきっかけは。
叔母が、岡山大学の医学部生を対象とした下宿を営んでいました。それを見て、医者という選択肢もあるのかな、と考えるようになりました。
長男でしたので、私が医者になればずっと地元にいてくれるのでは、と考えた親の勧めもありました。
もともと、幼いころからさまざまな土地に暮らす人々の生活に興味がありました。祖父の代までは農家でしたので、患者さんから聞く、米作りや桃の栽培の話などは興味深いですね。私がいろいろなことを尋ねると、患者さんも喜んで話してくれますよ。コミュニケーションは、信頼関係の構築にも役立っています。
―職員に伝えていることは。
やはり、患者さんや仕事仲間とコミュニケーションを取れることが一番大事だと伝えています。
知識、技術はあとからでもついてきます。特に地域の病院では、コミュニケーションを通して患者さんや家族との信頼関係ができているかが特に大切なことです。
治療方針について患者さんと話し合うときに、関係ができているか、そうでないかで、方針は大きく変わってきます。信頼関係ができていれば、医師からの提案を、自然に受け取っていただけると思います。
特定医療法人社団同仁会金光病院岡山県浅口市金光町占見新田740TEL:0865-42-3211
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