兵庫県立柏原病院 秋田 穂束 院長

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"医学教育"で勝負する病院を目指す

【あきた・ほづか】 大阪府立今宮高校卒業 1976 神戸大学医学部卒業1980 同第一内科医員 1983 米国St Louis Washington大学循環器内科1985 神戸大学第一内科助手、講師 2000 同医学部附属病院総合診療部(現:総合内科)初代教授 2010 同総合臨床教育・育成学分野教授兼務 2013 兵庫県立柏原病院院長 2017 柏原赤十字病院院長(兼務)

 山々に囲まれた自然豊かな町、丹波市の基幹病院、兵庫県立柏原病院。2004年の新臨床研修制度の開始から4年後、医師数がほぼ半減するなどの危機に直面した。

 2013年に就任した秋田穂束院長は「大学ではできない医学教育をする教育拠点病院を目指す」ことで、その危機を脱し、地域医療のモデルともなる新たな病院づくりを具現化する。

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◎医療崩壊という危機に直面

 丹波市は人口が約6万7000人。市内には、公的病院として64年の歴史を持つ当院と、柏原赤十字病院があります。

 もともと、当院は結核病院として始まった経緯がありますので、都心部からは少し離れ、周辺には自然が残っています。それが良さではありますが、若手職員は魅力を感じにくい場所とも言えます。

 新臨床研修制度が始まった2004年、当院は303床。43人の医師がいました。

 しかし、翌2005年には医師が減り始め、2006年には、1次救急制限の協力を地域に呼びかけざるを得ない状況になりました。

 2007年には小児科の存続が危ぶまれる事態になり「県立柏原病院小児科を守る会」が立ち上がりましたが、2008年には、医師18人、稼働する病床数は146床。研修医は1人もいなくなってしまいました。

◎診療機能崩壊の背景

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 私は、2013年に、院長になりました。職員にヒアリングし、柏原病院の診療機能崩壊の理由を考えた時、まず研修医の減少が挙げられました。

 当時の研修医への教育は残念ながら時代遅れのものと言わざるをえませんでした。研修医が減ると、彼らが担っていた仕事が内科医へ集中し負担が増えます。これに伴って、過重労働となった内科医が減少しました。

 術前術後の患者さんを診ていた内科医がいなくなったことで、脳外科、整形外科、泌尿器科、耳鼻科も医師が離脱するという悪循環でした。

 新専門医制度によって大学からの人材派遣が容易にできなくなったこと、大学教育で、医療の専門分化によって臓器別の診療体制が進行していたことも影響しました。

 臓器別の診療に偏重すると、総合的な診療力が低下します。都心の病院では臓器別体制でも運営可能ですが、地方の病院で必要なのは、総合的に診療できる医師なのです。

◎大学では教育できない医学教育を

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秋田穂束院長による無線聴診器を使用した教育回診

 私のミッションは柏原病院の診療機能を立て直し、地域の基幹病院として再生させることです。そのための戦略として掲げたのは「地域医療の拠点病院」であり「教育拠点病院」を目指すことでした。

 まず、研修医、専攻医の獲得のため、研修医が病院でどのような研修を望んでいるか、研修病院を選ぶ際に、どのように情報を得ているのかなどを細かく精査しました。

 その結果、研修医は、教育・指導体制がしっかりしている病院で、一般的な疾患を中心に、幅広い検査や治療手技の経験を積むことを望んでいることがわかりました。

 当院がある丹波市は、高齢化率が31.7%(2015年)。臓器別の診療体制では、多疾患併存の高齢者を診ることは不可能で、総合的な診療体制が求められています。

 こうしたニーズを考慮すると、現場で必要とされ、当院が養成すべき医師は、私が「日本型ホスピタリスト」と名付けた、病院総合診療医(総合内科医)という新たな概念の医師という結論に至りました。

 アメリカでは臓器別診療という考えではなく総合内科医という考えが主で、幅広い臨床能力と教育能力を併せ持つクリニシャンエデュケーター(臨床指導教員)の養成も重要視されています。日本型ホスピタリストもこれに近いものです。

 「教育や指導はしたくない」と発言する医師が時々いますが、教育という文化こそが、医師の臨床の能力を引き上げることにつながると考えます。ですから私は、当院でも臨床能力と教育能力を持つ医師を数多く、永続的に増やしたいと思っています。

◎カンファレンスの重要性

 2014年、院内に地域医療教育センターを設置しました。センター長には元自治医科大准教授の見坂恒明・神戸大学特命教授が就任。研修医、専攻医の指導や県の就学資金で学ぶ県養成医の教育を担当しています。

 力を入れているのが教育カンファレンスです。教育の姿勢を病院長自ら見せることは大事です。私が主催し、週2回実施しています。

 今の若い医師は、検査に頼りがちで、病歴と身体観察の訓練をあまり受けていませんので、これにも力を入れています。

 多職種のカンファにも参加させます。大学病院などでは、患者さんが退院した後について知る機会がほとんどありません。しかし、地域の病院では、むしろその先が大事です。

 老老介護の問題、高齢者の心不全による再入院の問題、食事、経済的な問題など、地域ならではの課題を、見聞きすることができます。

 時には「カンファが多い」という声も耳にしますが、私は「いつの間にか力がついていた」というのが、理想的な教育システムだと考えています。

 地域住民と直接対話する機会も設けています。研修医や県養成医には、自分たちが地域の人にどう思われているのか、期待されているのかを感じてほしいのです。

 医師の養成のためには、地域が一体となる必要があると思います。柏原にはその雰囲気があり、それも、研修医にとって魅力のようです。

 就任時は0人だった研修医の数が2年目は2人、2015〜6年は各10人にまで増えました。

◎新病院建設

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 柏原赤十字病院と統合し、新病院を建設する計画が進んでいます。それに向け、今年度から同院の院長も兼務しています。現在地から車で5分程度の場所に、50000㎡という広大な敷地を確保し、2019年に開院する予定です。

 丹波市では、医師の高齢化もあって、在宅医療を担う開業医が多くありません。地域に回復期の病院が少ない事情もありますので、病院完結型に近い状況を目指して、サービス付き高齢者向け住宅などを病院近くに誘致できればという夢も持っています。

 まもなく着工する予定です。赤十字病院ともうまく連携しながら、診療機能を上げた新病院をつくりたいですね。

兵庫県立柏原病院
兵庫県丹波市柏原町柏原5208-1
TEL:0795-72-0524
http://www.kaibara-hp.jp/


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