岐阜市民病院 冨田 栄一 院長

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時代が変化する前に動き出す

【とみた・えいいち】 1973 京都大学医学部卒業 岐阜大学医学部附属病院 1988 同助教授 1989 岐阜市民病院消化器内科部長 1992 岐阜市民病院消化器病センター長併任 2000 岐阜市民病院副院長2005 同院長

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◎方向性の共有

 2005年、病院長に就任してから、新年度の初めには、私から全職員に向けて、当院の方向性を発信する場を設けています。3日間に分けて、どこかで参加してもらいます。

 これまでの地域における当院の役割をはじめ、医療機器や設備に投資する意味も伝えました。地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院のことも同様です。

 「なぜ、今、当院がこれをやるのか」が理解できなければ、どのような指定を受けても、そのニーズを満たす医療はできません。私が直接語りかけることで、方向性をしっかりと共有しています。

 当院は地域の中核病院、特に高度急性期病院の役割を果たすために、さまざまな取り組みを進めています。

 昨年はHCUを稼働させ、最新鋭のPET│CTを導入しました。今年の秋頃には、低侵襲治療のけん引役として手術支援ロボット「ダビンチ」が稼働する予定です。

 またソフト面では、電子カルテに在院日数の表示機能を持たせ、医師に退院までのスケジュールを意識してもらうなど、平均在院日数の適正化に向けて工夫しました。

 昨年4月から、当院はDPCⅡ群病院(大学病院本院に準じた診療密度と一定の機能を有する病院)の指定を受けることができました。全職員が方向性を理解した上で取り組んだ成果だと考えています。

◎働きやすさを高める

 当院の理念は「心にひびく医療の実践」です。この理念は患者さんだけに向けた言葉ではありません。

 どのような思いで医療をしたか、それを知っているのは医師本人です。誰も見ていない場所でどんな掃除をしたか、そこにいた清掃スタッフだけが分かっています。

 「心にひびく」の真の対象は、この病院で働く全職員です。「『医療』をそれぞれの仕事に置き換えて考えてみてください。あなたの仕事が自分の心に響くのなら、患者さんも感じ取ってくれるはずです」。そんなメッセージを込めています。

 私たち管理職が果たす責任は、職員が生き生きと働ける環境づくりであると認識しています。

 日本医療機能評価機構の評価内容の多くは、提供する医療に関する項目です。そこで、2010年から、特定非営利活動法人イージェイネットの「働きやすい病院評価」の認証を取得しました。「働きやすさ」と「働きがい」の両立に注力していることや、多くの職員が「ここで長く働きたい」と感じている点などを特に評価していただきました。

◎10年後の中心世代

 大学では、すでに教授をはじめスタッフの世代交代が進んでいます。

 一方で、どの病院も、管理職の平均年齢が上がっているのが現状です。私たちが2025年に向けた地域医療を議論しても、その時期には働いていない。現場にいない人間ではなく、次の世代が考えるべきことです。

 2015年、研修医の指導担当者の若返りを一気に進めました。平成に入ってから医大を卒業した医師を研修医の担当者にして、研修医たちの意見を吸収し、新しい感覚を取り入れています。

 年齢が高い管理職には、大所高所から見守ってもらい、若い世代が困っている時には、知恵を出してほしいと伝えました。10年後、当院の中心となる医師たちのアイデアを尊重したいと考えています。

 幸いなことに、当院は6年間、研修医フルマッチを続けています。引き続き、ここで働いてみたいと思える病院を目指します。

◎能動的に動く

 「早く動き出すこと」。私が常に心がけていることです。2012年から岐阜県病院協会の代表理事を務め、県内外のつながり、医療界の詳細な動向を注視するようにしています。

 幸い、DPCの開発を手掛けた産業医科大学公衆衛生学教室・松田晋哉教授には毎年のように岐阜にお越しいただき、今後の方向性などを教わっています。

 病院の管理者として実感しているのは、それぞれの立場で、自分で考えて行動を起こすべきだということです。

 それを教えていただいたのが、私が副院長を務めていた2002年に参加したあるセミナーです。

 九州大学の信友浩一教授(当時)が開いた「アドミ塾」に入塾。高知県・高知市病院組合の瀬戸山元一理事(当時)や済生会熊本病院の正木義博副院長(当時)から、2泊3日3セットのプログラムで指導を受け、病院経営の考え方をたたき込まれました。

 以降、毎年、看護部長や事務局長など、当院から2人ずつ入塾して厳しく指導してもらいました。参加すると、「アドミニストレーター(管理者)」の意識が根付き、考え方が受け身から能動的に変わります。

 岐阜県は多数の地域医療連携パスが運用されています。肝炎のインターフェロン治療の連携パス作成の取り組みを評価する仕組み。その基礎となったのは岐阜地区の手法です。先進的な研究や治療への取り組みが注目され、厚労省の職員が岐阜を見学し、作成が進みました。

 これは、アドミ塾の成果の一つです。国がある制度を作ろうとするとき、必ずモデルとなる民間の事例があります。塾では、制度に振り回されるのではなく「そのモデルとなる病院を目指すべき」と教わりました。

◎医療資源をどう使うか

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 現在、副院長や地域連携部長を中心に、定期的に症例カンファレンスを開いています。

 当院の患者さんが退院後、在宅医療に移り、最終的にお亡くなりになるまでの間に何があったのか、プロセスを共有することが目的です。

 退院後の患者さんに関わったみなさんに当院に集まってもらい、それぞれの立場からディスカッションします。

 「入院中、当院の主治医や看護師はこのように治療した」「訪問看護師は患者さんの自宅でこんな診療をした」「ケアマネジャーは家族の要望を聞いて、どうケアプランを作ったのか」など、多職種が直接話し合う中で、改善点を洗い出します。

 鮮明なイメージを持つことで、もっと質の高い医療、連携につながるはずです。

 高度急性期病院が持っている医療資源は、非常に豊富です。在宅医療の資源とは大きな差があります。

 今、この差を、もう少しなだらかなグラデーションにできないかと、思案しているところです。

 退院後も数週間、看護師などが自宅でサポートできる体制などがあれば、地域内の医療の円滑化が進むでしょう。

 地域のニーズを的確に把握するため、当院は市民や医療機関へのアンケートを実施しました。変化し続ける要望に応えられるよう、機能の充実に努めていきます。

岐阜市民病院
岐阜市鹿島町7-1
TEL:058-251-1101(代表)
http://gmhosp.jp


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