急性期を軸に慢性期、在宅まで幅広く対応地域の医療ニーズに応えるために
下田メディカルセンターは前身である共立湊病院の建物老朽化などに伴い、2012年に南伊豆町から現在病院がある下田市に新築移転した。
畑田淳一病院長に病院の特徴などについて聞いた。
◎地域の救急を担う
当院は伊豆半島南部の賀茂医療圏にある公立病院です。運営は、静岡メディカルアライアンスが、この医療圏の1市5町(下田市、河津町、松崎町、西伊豆町、東伊豆町、南伊豆町)で設立する一部事務組合から指定管理を受けて運営しています。
賀茂医療圏は下田市・南伊豆町エリア、西伊豆町・松崎町エリア、河津町・東伊豆町エリアという三つのエリアに分けられます。
下田市・南伊豆町エリアの当院と西伊豆町・松崎町エリアの西伊豆健育会病院と河津町・東伊豆町エリアの伊豆今井浜病院で2次救急の輪番制を採用。その内の4割、年間約1200台の救急車を当院が受け入れています。
重症の患者さんはドクターヘリなども活用し て、順天堂静岡病院に 送っています。
この地に新築移転し て、もうすぐ5年。当院 は伊豆急下田駅近くの一 等地にあります。17,128㎡という広 大な敷地を自治体から 提供してもらっているの も、当院が、地域から期 待されている証しです。
地域のみなさまから は救急に対する期待が 特に高いと感じていま す。その期待に応えるた めにも救急の砦(とりで) としての役割を果たさ なければなりません。
◎医療ニーズに応える
賀茂医療圏の高齢化率は40%を超えています。静岡県内の各市町村の高齢化率ランキングでは、西伊豆町の42%を筆頭に10位以内に賀茂医療圏1市5町すべてが入っているのです。
この地域は2025年どころか30〜40年後の日本の縮図だと言えます。地域医療に興味を持つ人にとって、当院はとても勉強になる環境ではないでしょうか。
当院のファーストミッションが救急医療であることに変わりありません。しかし慢性期の医療リソースも不足しているこの地域では、公立病院である当院には慢性期医療への対応も求められています。
2年前に回復期リハビリテーション病棟、昨年は地域包括ケア病床を設置。これにより急性期から慢性期、在宅までをシームレスに診られる環境が整いました。
昨年、院内に賀茂地区在宅医療・介護連携推進支援センターを設立しました。同センターでは、地域住民の方に在宅医療や介護に対する理解を深めるための講演会を開催したり、医療・介護・福祉などの専門職の勉強会、研修会を開いたりしています。
また年に3回、開業医の先生方を招いてのメディカルイブニングセミナーを院内で開催。一緒に勉強をすることで顔の見える連携の構築を図っています。
◎系列法人との連携
当院の運営母体は医療法人社団静岡メディカルアライアンスです。
静岡メディカルアライアンスはジャパンメディカルアライアンスが、医療資源が十分でないこの地区の地域医療貢献のために2010年に設立しました。
ジャパンメディカルアライアンスの職員は約3000人。海老名総合病院(神奈川県海老名市)、座間総合病院(神奈川県座間市)、東埼玉総合病院(埼玉県幸手市)などを経営。他にもクリニックや老健施設など幅広い展開をしています。
系列法人ということで非常勤医師が来てくれていますし、希望すればジャパンメディカルアライアンス法人内の病院での勤務が可能です。
◎医学以外の知識も
私と話すと元気をもらえると言ってくれる患者さんがいます。そう言われると医者冥利(みょうり)につきます。
若い人には病気だけでなく、患者さんの背景がみられる医師を目指してほしいですね。
最近、医学以外の話が下手な人が増えてきたように感じます。医学以外のことも幅広く学び、人間としての懐の深さを身につけてもらいたいですね。
医師は人を相手にする職業です。単なるテクニシャンになってほしくはありません。
◎あいさつを徹底
常に職員に言っていることがあります。それは職員同士によるあいさつの徹底です。
笑顔であいさつすることで、チームワークの向上が期待できます。職員同士のチームワークの良さや雰囲気は患者さんにも伝わるものです。今後も徹底していきたいですね。
◎同期の絆
私は防衛医科大学校の1期生です。後輩たちのために自分たちが頑張らねば、との使命感が強いですね。
同期の絆は強く、毎年1回、配偶者同伴の同窓会を開きます。ゴルフをしたり宴会をしたり、とても仲が良いですね。
◎脳外科の魅力
専門は脳外科です。脳外科を選択したのは、尊敬する先生の存在と、若いうちから生命に直結するさまざまの経験が積めるのに魅力を感じたからです。
急性硬膜外血腫という外傷があります。頭部外傷としては極めて重症で、放っておくと数時間後には亡くなってしまいます。しかし開頭して血腫を取れば、ほとんどの場合、後遺症もなく、元の元気な生活に戻ることができるのです。
脳外科は難しい手術が多く、10〜20年経験を積まないと一人前とは言えません。ただ急性硬膜外血腫に関しては1、2年目の若手医師でもできる手術です。
数時間後に亡くなってしまう患者さんを自らの手で手術することで1週間後には後遺症もない状態で退院させてあげられるのです。若いうちから、こういう経験ができるところは脳外科の魅力の一つだと思います。
◎災害への対応
防衛医科大学校を卒業後、海上自衛隊自衛艦隊司令部時代に阪神淡路大震災を、自衛隊横須賀病院の病院長時代に東日本大震災を経験しました。東日本大震災の時は、護衛艦で横須賀から病院スタッフを派遣しました。
私は現在、静岡県の災害医療コーディネーターを務めています。
この地域は南海トラフ地震が来ると、かなり大きな津波がくることが予想されていて、当院も2階まで浸水すると予測されています。
もし南海トラフ地震が起きた場合は、これまでの経験を生かして最善の対応で、最小限の被害にとどめたいですね。
医療法人社団静岡メディカルアライアンス 下田メディカルセンター
静岡県下田市6-4-10
TEL:0558-25-2525
http://shimoda.s-m-a.or.jp/