島根大学 医学部整形外科学教室 内尾 祐司 教授

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患者さんにフィードバックできる研究を公立病院だからできる治療で市民に還元を

【うちお・ゆうじ】 島根県立横田高校卒業 1986 島根医科大学医学部卒業1998 英国Leeds大学留学 2002 島根医科大学整形外科学(現:島根大学医学部整形外科学教室)教授 2009~2011、2013~2015 同医学部副学部長兼務

 島根大学医学部は、1976(昭和51)年に島根医科大学として開設され2003年に島根大学と統合、現在に至る。2002年、3代目として整形外科学教室を引き継いだ内尾祐司教授。講座運営への思いなどを聞いた。

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◎エキスパートを育成

 就任したばかりのころ、当教室には、各分野のエキスパートがあまりいませんでした。

 大学病院は、地域医療の最後の砦(とりで)です。その役割を果たすために、専門的で高度な技術、知識を持つ、専門家を育てることが私の使命だと考えました。

 そこで、まずは腫瘍、脊椎、手など、それぞれの分野の先端医療を学んでもらうため、教室員を国内各地に留学をさせました。それぞれが学んできたことを講座にフィードバックしてもらうことを通して、当講座全体の知識や技術を高めてきたのです。

◎へき地や離島の声を聞く

 県内の関連病院への医師の派遣も重要な役割です。それぞれの病院の設備や人事面、各医局員のキャリアなどを含めて考えるよう心掛けています。

 島根県は東西に約230km。中国山脈が走り、離島もあるなど、交通の便が悪い場所もあります。

 私は、若い医師にへき地や離島で生活している方の生の声を聞いてほしいと考えています。その経験は決して無駄にはなりません。

 隠岐島は境港などから船で約3時間。私たちの講座から1年交代で医師を派遣しています。

 この島では、医師が離任するとき、住民の皆さんが港を離れる船を岸から見送ってくれます。中学校のブラスバンドが演奏し、漁船が大漁旗を翻しながら医師が乗るフェリーに帯同してくれるのです。

 島への赴任が決まった時には迷っていた医師でも、1年間の島での生活とこの最後の見送りを経験すると、みんな感動して帰ってきます。医者冥利(みょうり)に尽きるのではないでしょうか。

◎ものづくりの延長にある「研究」

 先端医療のための重要な使命の一つが研究です。われわれは、臨床家ですから、臨床に役立ち、患者さんにフィードバックできるような研究をしなければならないと考えます。

 2003年に開始したのが、骨でねじを作る研究です。骨折後の骨を固定するのに、自分自身の骨を使えないかという発想から、手術室内で患者さんから取り出した骨を加工する機器を開発しました。

 骨折治療の際、よく使われるのは金属や生体性吸収素材です。しかし、患者さんによっては異物反応が起こることがありますし、金属は後々、手術によって取り出す必要があります。

 その人自身の骨を加工したねじならば、異物反応がなく、一定期間経過後には骨同士が一体化するため、取り出す必要もありません。

 研究段階では、牛など の骨を使って加工精度を 上げました。畜産が盛ん な地域ですから、骨が手 に入りやすかったのです。 人間のどの部分の骨に強 度があって安全に取り出 せるかも、理工学部と共 同で調べました。

 臨床例はこれまでに 11 例。2005年には産学 マッチングイベント「イノ ベーションジャパン200 5」の医療・福祉部門賞 を受賞しました。

 現在は、この技術を応 用し、3次元プリンター を使った新たな「骨形成 支援装置」の開発に取り 組んでいます。

 私たちの研究は、医学というより、「ものづくり」に近いかもしれません。

 私は、島根は日本のものづくりの発祥の地だと思っています。県内には、古墳時代後期に鉄作りがされていたことを示す遺跡が残っています。たたら製鉄は、映画「もののけ姫」のたたら場のモデルにもなったといいます。

 われわれの研究も、その歴史の延長線上にあると感じています。

◎少子高齢社会に貢献

 島根県の高齢化率は現在31.8%。国内の10年後、20年後を"先取り"している形になっています。今、島根で取り組んでいることはいずれ日本のモデルにもなるでしょう。

 これからの時代、高齢者は、長く働き続けることが求められます。そのためには、健全な肉体が必要です。

 当講座では、市町村などの住民健診に出向き、レントゲンやエコー使って検査を実施。健康な肉体を保つため、積極的にアドバイスしています。

 子どもたちの健康に関与していくことも大事だと考え、2005年に、スマート(Shimane SportsMedicine And RehabilitationTeam)という取り組みを始めました。

 狙いは、子どもたちの運動器の健康的な発達をサポートすること。医師や理学療法士など多職種が学校健診の場で背骨や手足の障害も診る試みです。子どもたちが、間違った運動法で、障害を負うことがないよう、情報発信もしています。

 日本は、世界のどの国 も経験したことのない超高齢社会を迎えていま す。うまく乗り越えられ るよう、当講座も役割を 果たし、地域に貢献した いと考えています。

国立大学法人 島根大学 医学部整形外科学教室
島根県出雲市塩冶町89-1
TEL:0853-23-2111(代表)
http://www.med.shimane-u.ac.jp/orthop/


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