今年4月、がんサポートセンター始動 日本一の健康長寿県を目指して
◎がんサポートセンター開設
当院は、高知県のがん診療連携拠点病院としての機能を充実させるため、4月、本館西側に4階建ての「がんサポートセンター」を開設しました。開設にあたっては、たくさんのご支援、ご協力をいただき、心から感謝しています。
当センターは、1階が「放射線治療部門」、2階が「核医学検査部門」、3階が「外来がん化学療法部門」、4階が「がん相談支援・緩和ケア部門」です。
最新機器の導入をはじめ、地域の皆さんに高度ながん診療を安心して受けていただけるよう、トータルケアに努めていきたいと思います。
◎放射線治療部門
体にメスを入れることなくがん治療ができる放射線治療は、低侵襲な治療として注目されています。外科治療、化学療法と並び、現代のがん治療の3本柱の一つです。
放射線治療部門には、治療室を2部屋設け、それぞれに高精度放射線治療装置を1台ずつ導入しました。
そのうちの1台、「ElektaVersa HD」は、STI(定位放射線治療)、IMRT(強度変調放射線治療)、IGRT(画像誘導放射線治療)に対応した新機種です。最小幅2.5mmの範囲で放射線をピンポイント照射できるため、ターゲットとなる病変の周囲にある正常組織へのダメージが少なく、より安全性の高い治療をすることができます。
今年10月の稼働を目指して現在調整中で、国内にまだ数台しか導入されていません。もう1台の「Elekta Synergy CTon Rail」も、STI、IMRT、IGRTに対応しています。CT装置と連動しているので、照射位置を確認しながら精度の高い治療をすることができるシステムです。
稼働予定は今年7月。放射線治療専門医2人、診療放射線技師8人、看護師3人の体制で診療にあたります。
◎核医学検査部門
がんサポートセンターの開設に伴い、これまで本館にあった核医学検査科をセンターの2階に移しました。核医学というのは、微量の放射線を放出する薬剤(放射性医薬品)を患者さんの体に注射し、薬剤が体内で分布していく様子を専用装置「ガンマカメラ」で画像として見ることができるものです。
放射性医薬品は、体の外からは見ることができない、がん病巣の場所を特定し、心臓、肺、腎臓、脳など、さまざまな臓器の血流状態や機能状態を見ることができます。
従来当院で使用していた「SPECT」2台のうち、1台をセンター内に移設し、もう1台は最新機種と入れ替えました。
また、「PET/CT」の導入によって、これまでの検査では見つけることができなかった小さい病巣を早期に見つけられるようになりました。高知県内でこの装置を導入しているのは、高知大学医学部附属病院に次いで当センターが2施設目です。
◎外来ケアルーム
外来による抗がん剤治療をする「外来ケアルーム」も当センター3階に移しました。最近は外来で化学療法を受ける患者さんが増加傾向にあります。当院の2015年度の外来化学療法実施件数は約4400件です。そこで、21床(ベッド18台、チェア3台)だった病床数を35床(ベッド28床、チェア7台)に増やし、それぞれの占有スペースも広くしました。
落ち着いた環境で治療を受けていただくために、室内の窓を大きく取り、明るく解放感のある空間づくりを心掛けています。
新たに抗がん剤治療を始められる患者さんや、使用薬が変更になる患者さんに、薬剤の説明・指導をする専任の薬剤師も配置しました。
フロア内の薬剤準備室では、薬剤師が抗がん剤を調剤し、処方された抗がん剤の容量や休薬時間をチェック。安全で確実な薬物治療に努めています。
◎がん相談支援と緩和ケア
緩和ケアというと、終末期のがん医療をイメージされるかもしれませんが、実際はそうではありません。がんと診断されたときから、患者さんにとって精神的、経済的、社会的な問題が起きてきます。これらの相談に乗ることも緩和ケアには求められているのです。
患者さんの心のケアを充実させるために、「がん相談支援センター」には県内で唯一、認定を受けたがん相談員を2人配置。患者さんやご家族、地域の方からの相談や質問に対応できる体制を整えました。
緩和ケアセンターには緩和ケア内科の外来も開設し、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど多職種連携チームが、入院から外来まで、継続的な治療に取り組んでいます。
治療やケアだけでなく、必要に応じて地域の連携病院や診療所、各種施設と連携して、患者さんとご家族のQOL(生活の質)向上をサポートしていく考えです。
フロアの奥にある、「がん患者サロン(池の会)」には、パソコンやテレビ、ソファ、給湯室、図書館などを設置しました。当院以外の地域のがん患者さんや、ご家族にも自由に交流できる場として利用していただきたいですね。
放射線治療自体はそんなに時間がかかるものではありません。治療が済めば自宅に帰り、また翌日来院される患者さんもいらっしゃいます。高知県の東側や西側の地域からここに来るには、車で3時間はかかってしまうため、遠方に住む患者さんにとっては、時間的にも経済的にも大きな負担となります。その負担を軽減するために、将来的には当センターの近くに宿泊施設を造りたいとも考えています。
◎今後の課題
現在、全国で進められている地域医療構想に沿った形で病院を動かしている状況です。地域医療センターの看護師や事務職員の方々に、地域の病院、診療所、各種施設の状況を聞いたり、当院の状況を説明したりすることで、患者さんの受け入れや転院をスムーズにできるようなりました。2015年度までは12.9日だった平均在院日数も、2016年度は11.6日と短くなっています。
当院はDPCⅡ群病院です。2016年度、140あったDPC病院Ⅱ群の中で、当院は全国3位にランキングされました。広範囲な疾患に対する高度医療、周産期医療を提供している点、地域への医療貢献度が高い点などが評価されたことは、大変誇りに思います。
最新の設備や診療体制をいくら整えても、それを運営していくのは"人"です。効率的で質の高い医療を実践するため、多職種で構成された「トータルクオリティーマネジメント委員会」の活動を従来以上に活発化していきます。
現在、病院が抱えている問題を横断的に取り上げ、解決に向けて取り組んでいます。これからも、「医療の主人公は患者さん」という理念を実践していきたいと思います。
高知県・高知市病院企業団立 高知医療センター
高知市池2125-1
TEL:088-837-3000(代表)
http://www2.khsc.or.jp/