朝倉書店の定番シリーズ「〜のはなし」最新刊は、花粉が飛ぶこの季節にぴったりの話題「アレルギー」に焦点を当てた。
本書は専門、専門外に限定せずに初学者向けに編まれたアレルギー疾患の解説書。読者として、アレルギー相談に対応する看護師や薬剤師、さらに自治体職員や学校教員などを想定している。
厚労省の統計によれば、国民の2人に1人がなんらかのアレルギー疾患にり患しているという。本書はアレルギー疾患を「国民病であると同時に生活習慣病」と捉え、同疾患を自己管理すべき(できる)疾患であるとする。自己管理してQOLを向上させるために、アレルギー疾患の正確な情報を伝えるのが本書のねらいだ。
3章「アレルギー疾患の原因物質―身の回りのなんでも原因アレルゲンとなる」によると、原因アレルゲンとして近年報告例が増えているのが、キシリトールなどの人工甘味料だという。ダイエット食品に多く含まれる物質で、健康志向が逆にアレルギーを引き起こしているのは皮肉だ。
当欄担当者が日々悩まされている花粉症については、8章「鼻のアレルギー」で多くの紙幅を割いている。花粉症は、くしゃみや鼻汁、目のかゆみから襟足や顔面の赤み、頭痛、倦怠(けんたい)感まで症状が幅広いのが特徴だ。花粉抗原と果実・野菜の共通抗原性によって、リンゴやキウイなどの果物も抗原になる可能性がある(合併率10%)というからやっかいだ。
国内で一番多い抗原であるスギは、2月から4月に花粉を飛散させる。予防として抗原回避が最も効果があることから、花粉情報などを参照して外出を控えるほか、外出時にはマスクやメガネを着用し、帰宅後の洗顔やうがいを推奨している。
花粉症の治療法として抗原回避のほかアレルゲン免疫療法や、当欄担当者も経験のあるレーザー手術による粘膜凝固術をあげている(とても効果がありました)。
各論では、食物や薬物のアレルギー、さらにラテックスなどの職業アレルギーについても、医学的に担保された情報を掲載している。専門用語は多いが、アレルギー疾患の予防、治療、管理について系統的に学びたい方にとっては適切な入門書となるだろう。(大)