愛媛県松山市で開催
第53回日本医学放射線学会 秋季臨床大会 9月8日(金)~10日(日)
◎モダリティの知識を強化
9月8日(金)~10日(日)の「第53回日本医学放射線学会秋季臨床大会」(ひめぎんホール:松山市)で大会長を務めます。放射線科医の教育を主眼に置いています。
若手の医師は知識を蓄える場として。中堅やベテランの医師は、最新情報にアップデートして、頭をリフレッシュする場として活用してもらいたいと考えています。
今回のテーマは「マルチモダリティで迫るRadiology」です。CT、МRI、PET、透視台、血管造影装置など、画像診断機器のことをモダリティと言います。
放射線科は、実に多様なモダリティを扱います。疾患によって検査方法を使い分けるために、モダリティ全体の知識を持っておくことが求められます。臨床では、「私はこの領域は弱い」などと言っていられないのですから。
異なるモダリティを組み合わせることで、新しいアイデアが生まれることもあります。幅広い知識の上に、自分の専門性を築いていく。これが理想だと思います。
大きなシンポジウムを五つ予定しています。放射線科の現状や未来、AI(人工知能)による診断など、放射線診療の全体像が見える内容や、心臓のイメージングを取り上げます。
各分野のスペシャリストによる、多数の教育講演とリフレッシャーコースを用意します。まさに、放射線診療のすべてを網羅していると言ってもいいでしょう。自分が強化したい領域の知識を吸収できるはずです。
市民のみなさんへのおもてなしとして企画した、市民公開講座にも注目していただきたいと思います。
青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞された、愛媛県出身の中村修二先生にご講演いただきます。開発や研究の進め方など、多くの気づきが得られるのではないかと楽しみにしています。
研究や臨床を続けていく中では、必ず疑問や壁にぶつかるでしょう。それを打開するための姿勢、考え方などを身に付けるヒントになればうれしいですね。
◎画像診断の次のステップ
1996年に私が心臓CTを開発したこともあり、医局としても心臓の画像診断に力を入れています。
当時のCTはシングルヘリカルCTと呼ばれ、検出器が1列で、撮影できる画像は1回転につき1枚でした。
2000年代に入ると4列、16列、64列、256列、320列と、1回転で複数枚撮影できるマルチスライス化が進みました。広範囲にわたる高精細な画像の撮影が可能になり、撮影時間も大幅に短縮されています。
高速撮影が特徴で心臓の撮影に有利なマルチスライス+2管球というタイプも登場しています。心臓は動き続けていますから、カメラに例えるとシャッタースピードを速くすることで、静止画の質が上がります。心臓のごく細い血管を逃さず、目で状態を追いかけることができるのです。
進歩する画像診断技術を活用して、新たなアプローチの研究を進めています。
心筋梗塞は、心臓の冠動脈の内側が狭くなり、血栓などが詰まることで起こります。冠動脈で最も太い部分は3〜5mmほどです。
治療法の一つとしては、金属の「ばね」状のステントをカテーテルで挿入し、血管を拡張させることで血流を回復する冠動脈形成術があります。
研究では血管の構造を解剖学的な評価のみではなく、流体力学の観点から捉えようと試みています。
血管がどの程度狭いと、どれほど血流が落ちるか。圧がどれだけ下がるか。血管の狭窄(きょうさく)が及ぼす影響を、画像解析で算出するのです。
メーカーと共同で、心臓の血管1gあたり、1分間に何㏄の血液が流れているかを定量的に解析するソフトの開発も進めています。狭窄が起こっている血管が影響を及ぼす範囲で、血流の絶対量の不足などを調べることができます。
単に見た目として狭い、狭くないということではなく、圧較差(血圧の差)やFFR(血流予備量比)などの生理学的な情報に基づき、狭窄がどの程度「悪さ」をしているのかが分かるのです。
従来の形態的な情報を中心にした診断では、どの治療法を選択したらいいのか医師が悩んでしまう「中間」があったわけです。
研究の成果は、この血管は冠動脈形成術をした方がいい、薬を使った方がいいなど、診断や治療の判断材料になると思います。
医療の個別化にも貢献するでしょう。個々の患者さんに適した治療ができるよう、このソフトを使い、高い精度でゲートキーパー(門番)の役割を果たすことを目指しています。
循環器内科の先生とカンファレンスし、協力的に連携して開発を進めています。気の遠くなるような解析作業も、放射線技師や大学院生たちが汗をかいて取り組んでくれています。人がやっていないことをやるからこそ、手間暇をかけなければならない。そう放射線科のメンバーには話しています。
◎ソフト面の開発に注力
忙しくとも楽しい。私はそんな毎日を過ごすことを心がけています。
最新のモダリティを使用するとき、私たちはある側面では「遊んでいる」と言えます。どこまで性能をフルに引き出せるか、解析を繰り返しながら、楽しんでいるわけです。
機械の進化は加速しています。私たちが「ここまでできる」と示せば、メーカー側も、もっと機能を高めようと努力する。実際、開発者たちとそんなやり取りをする場もあります。
ハード面の向上を求めるだけでなく、ソフト面の開発にも努めています。学会などでソフト開発の成果を発表するとメーカーに興味を持ってもらうきっかけになり、新たなコラボレーションに結び付くこともあります。
遊び心と発想を大切にするためにも、放射線科のメンバーが「やってみたい」と発案したことには、決して反対しません。失敗は勉強につながりますし、次の成功の糧になります。「やってみたら」と言うのが、私の大事な仕事の一つです。
プログラム(予定)
・シンポジウム
「虚血性心疾患の画像診断、マルチモダリティ:私ならこう使う」
「腎腫瘍 Up to date」「認知症の画像診断Up to date」
「マルチモダリティ時代の胸部単純写真の役割」
・特別シンポジウム:「放射線科の現状と未来、AI」
・市民公開講座
演者/中村修二(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
大会事務局:愛媛大学大学院医学系研究科放射線医学
TEL:089-960-5371 FAX:089-960-5375
学会HP:http://www.congre.co.jp/jrs53/
大会事務局:愛媛大学大学院医学系研究科放射線医学内