医療法人わかば会俵町浜野病院 浜野 裕  理事長 / 浜野 敦子 常務理事

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地域全体で認知症患者と家族を支えたい

【はまの・ゆたか】 1979久留米大学医学部卒業大阪大学医学部附属病院第1内科入局 1986 桜橋渡辺病院循環器内科医長(大阪府循環器系3次救急病院) 2001 俵町浜野病院院長 2002 医療法人わかば会理事長

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―2025年には、認知症患者が700万人を超えると予測されています。

 日々認知症治療に携わっている私の実感でも、認知症患者さんの数が増えていることは間違いないと思います。

 当院には物忘れ外来もあり、かなり重症の認知症患者さんが「見つかる」ことがあるんです。

 子どもさんたちは遠くに住んでいて、たまに帰ってきた際に自宅のひどいありさまに驚き、当院に連れてこられるのですが、そもそも病院に連れてくるまでがたいへんで、なかなか本人が同意しない。やっと連れてきてもらってお話を伺うと、2年間お風呂に入っていない。

 まるで30年間ルバング島に潜伏していた小野田さんのような風体で現れる、認知症の現場ではそんな患者さんに遭遇することもままあるのです。

 現段階で462万人から525万人の認知症患者さんがいると推計されていますが、その推計に乗らない患者さんもいますので、2025年に700万人を突破するというのはとても現実的な数字だと思います。

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浜野裕理事長

―アウトリーチと呼ばれる、認知症患者さんを「探す」といった取り組みも必要になりますか。

 たしかにそういったことも必要になりますが、そういうところで可視化された認知症患者さんたちが自ら病院に来るようになるかというと、これは別の問題なのです。病院に行かずに自力でなんとか生活していた方たちを、いったんは医療と介護でサポートしたとしても、その後、定期的に適切なケアを受け続けてくれるような状態にもっていくのは非常に難しい。

 それを実現するには、医療や介護だけではなく地域の民生委員の方や近所づきあいなども含めた地域ぐるみのサポートが必要になります。医療や介護の枠を越えてサポートの網が地域や社会に広がる必要があるわけで、それこそが地域包括ケア構想であり、実現が待たれているのだと思います。

―法人として、地域包括ケアの構築に向けた取り組みを始められていますか。

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里山療法で稲を刈る認知症患者

 今、やろうとしているのは、認知症の方々やご家族に集まっていただいて、自分の抱えている悩みや思いを語りながら認知症患者の世話でたまった疲れを取り除く「認知症カフェ」です。この試みでは、地域の方にも参加してもらえるように間口を広げていこうと考えています。

 現在の医療・介護という枠組みの中では、それを受ける必要のない地域の方々が集まり、その方々が抱える心配事を話し合う機会がありません。だから地域の方々が地域の認知症患者をサポートする、巻き込む場をあえて作る必要があるのです。

 認知症患者さんとご家族、そして地域の方々が交わることによってサポートの網が広がる、そんな化学反応が起こることを期待しています。

―行政が担当すべき課題に取り組まれている印象を受けました。

 たしかに、そういう面はあるでしょうね。行政に関連していえば、今年3月に道路交通法が改正されました。これは認知症患者が車を運転することで起きる事故を防止しようという狙いがあり、認知症の方の運転免許を取り消し、あるいは自主返納を促そうというものです。

 私の患者さんも、免許を取り消されることに落ち込んでいました。私は「それなら自主返納しましょう」と提案しました。実は免許を自主返納すると運転経歴証明書がもらえるので、免許証と同じように身分証明書にもなるのです。

 佐世保市では免許を自主返納するとタクシーの運賃が1割引きになる特典もあります。しかしメディアが伝えている改正道路交通法の話題は認知症の方が運転できなくなるということだけで、これは逆効果にしかなりません。運転経歴証明書を使って銀行口座を開設することもできるので、こうした自主返納することの特典についてもっと情報を伝えるべきだと思います。

 運転免許を自主返納したその方は、どうしても車が必要な地域に住んでいるため、買い物にも行けなくなりました。本来ならバスの停留所を増やすなど行政が関係する手当てが必要なのでしょうが、それには時間がかかります。

 そこで、その方はデイケアに参加しているため、その際に屋外歩行訓練で商店街に行って卵やトイレットペーパーを買うことをケアプランの中に組み入れました。患者さんに必要なものを追求して生まれたアイデアですが、ほかにも制度面の不備はあります。

 代表的なものが、「デイケアに出かけたついでに病院にかかることはできない」というものです。デイケアの送迎バスで医療行為を受けることが禁じられているのですが、今後は運転免許を返納した方に限定してでも可能になるような法律改正が必要ではないでしょうか。車の運転ができなくなったため、病院を受診しなくなる、といったことが起こらないようにしなければなりません。

―里山療法に代表される非薬物療法に力を入れています。

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 認知症の方は服薬だけで症状を改善することがなかなかできません。認知症の自然悪化を食い止めるのが薬の効果で、その効果をさらに延ばすためには非薬物療法が有効です。

 当院で取り組んでいる里山療法は、患者さんと医師や医療・介護スタッフがみんなで一緒に田んぼに入って泥まみれになって田植えをして、稲穂が垂れてくれば「もうすぐ収穫だね」と楽しみを共有する。収穫したお米で餅つきをして正月を迎えるとみなさんとても良い笑顔になります。笑うということは自然に脳の血流が増えるということであり、効果が限定的な服薬よりもこうした活動を積極的に取り組むべきだと考えています。

 ご家族の方は認知症患者の「できなくなったこと」

ばかりに気をとられて落ち込むことが多いのですが、たとえば魚の煮つけを自分の口に合うように切り分けて食べることができる認知症患者もいます。

 われわれがこういった「まだできること」の素晴らしさを伝えて、介護に追われる日々に少しでも光を与えたいと思います。

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浜野敦子 常務理事

 老人医療は通常の医療と質が違います。どんな長寿の方でも必ず死を迎えますので、終末期の老人医療の在り方については国民参加型の議論が必要だと思います。

 かつては自宅で亡くなるのが普通で、かかりつけ医の「ご臨終です」の言葉で死を実感するという形があったと思います。住宅環境の変化もあり、自宅で看取るのが難しい時代になりました。家で看取るのが無理であれば施設で看取る、そこには応分の費用が発生することもわかっていただきたいし、広くそうした意識を醸成していく必要があると思います。

医療法人わかば会 俵町浜野病院
長崎県佐世保市俵町22-1
TEL:0956-22-6548(代表)
http://www.wakabakai.or.jp/


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