医療法人 徳隣会 つつみクリニック 堤 光太郎 理事長

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チーム全体が24時間365日 手厚く良質な在宅医療を目指して

【つつみ・こうたろう】 ラ・サール高校卒業 2007 福岡大学医学部卒業 2009 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科入局 2014 医療法人徳隣会つつみクリニック開院

 2014年、30代の若さで在宅療養支援診療所「つつみクリニック」(鳥栖市)を開設した堤光太郎理事長。昨年6月には福岡市にも開院した。

 思いやりを意味する「恕」の精神と、豊富なアイデアで、新たな在宅医療を切り開こうとしている。

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◎チーム医療とスピード感

 在宅医療に特化しているということが、1番の特徴です。訪問診療や往診が中心。ほぼ在宅に専念しています。

 対象は、小児を除くすべての患者さん。心不全、がん、認知症...。人工呼吸器がついている方、褥瘡(じょくそう)の管理が必要な方など、さまざまな疾患、状態の人に対応します。

 訪問診療エリアは半径16km。鳥栖の本院では市内だけでなく、近隣の福岡県久留米市、小郡市、筑紫野市、太宰府市、大野城市、福岡のクリニックでは福岡市、福岡県粕屋郡、春日市などに訪問しています。

 往診は24時間365日可能です。ただ、患者さんやご家族をサポートするには、われわれだけでは不十分です。私たちが連携している訪問看護ステーションや薬局、検査会社は、どこも24時間対応。この「チーム医療」の体制を整えたのが、私たちの強みの一つです。

 本来ならば、入院が必要なぐらい重症の方を、在宅で診ているのがわれわれの在宅医療です。病院にはナースステーションが同じフロア内にあり、何かあれば、看護師がすぐに病室に行き、処置することができる。しかし、機器も限られている在宅では、そうはいきません。

 そこで、このクリニックでは毎朝の会議で、状態が気になる患者さんをピックアップ。看護師やソーシャルワーカーが電話連絡し、状態を把握します。必要があれば医師に連絡があり、日中のうちに治療計画を立てる。そのスピード感と手厚さは、「入院とそん色ない医療状況、密度を提供したい」という思いで生まれました。

 これによって、夜間の対応も、少なくなりました。夜間に往診などが必要になる事態は、患者さんやご家族にとって不安なこと。負担も大きくなります。医療者側も、夜間に動くことが多くなれば、疲弊してきてしまうかもしれません。工夫によって、質を保ちながら、患者さんやご家族、医療者双方の負担を減らしています。

◎「緩和をやりたい」から在宅へ

 私は、福岡大学医学部を卒業し、腫瘍・血液・感染症内科教室に入局しました。この教室は、悪性腫瘍全般に関する診療、研究のほか、進行がんで化学療法が必要となった患者さんへの治療にも、積極的に取り組んでいました。

 手術ができず、残された時間がある程度決まっている患者さん、「いかに痛みなどを緩和して、日々を送るか」に重点を置くべき患者さんを診ることも多く、次第に「緩和医療をやりたい」と思うように。まず、頭に浮かんだのは「ホスピス・緩和ケア病棟」でした。

 でも、1人で有床のホスピスを始めるのは難しい。九州の在宅医療のパイオニアである武富賢治先生の下で週1回お手伝いする機会に恵まれたことで、一人一人のお宅にうかがうテーラーメードの医療に魅力を感じるようになりました。

 「在宅医療は、ホスピスとは違うが、緩和ケアも看取りもできる」。そう実感し、2014年2月、在宅に特化したクリニックの開業に至ったのです。

◎早期から在宅医の介入を

 開業した後、何人もの患者さんを看取ってきました。そんな中、患者さんやご家族から「もっと早く在宅医療、終末期医療を知っていたら」という声を聞くようになりました。

 一方で、病院を退院することを「見放された」と感じてしまう患者さんやご家族もいます。治癒を求めて積極的に治療するのが難しくなり、終末期医療に切り替える時期になったとき、在宅を拒みたくなる患者さんやご家族の気持ちを、どう解きほぐすのかは、課題だと思いました。

 終末期のもっと前の段階から、在宅医が患者さんと繋がれる形を作りたい。そう思って、出身医局でもある福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科の髙松泰教授に相談しました。

 福岡大学のご理解もあり、今年に入って、同大学病院での外来化学療法の後、患者さんに副作用が出た場合、われわれが自宅に向かって対処するという取り組みを、始めることができました。

 抗がん剤治療では、骨髄抑制が起こり、発熱や貧血の副作用が出る人がいます。発熱の場合には1〜2時間以内の対処が必要な場合もあります。

 私たちがサポートすることで、大学病院側はこれまで避けなければならなかったような、効果が高いけれど副作用のリスクも高い抗がん剤治療が可能になるかもしれません。遠方に居住している患者さんは、発熱などでつらいときに病院まで行って受診する必要がなくなります。

 この体制は、大学病院にとっても、患者さんにとってもメリットがあると思うのです。

 在宅医が、治癒を目指した医療の段階にも関わるという新しい役割を見いだすことで、患者さんやご家族に存在を知ってもらえる。仮に終末期医療が必要になった時にも、在宅を選択してもらいやすくなるとも考えています。

 さらに、「この人にだったら診てほしい」と思ってもらえる関係をつくっていきたいという希望もあります。今はまだ1人の患者さんに対して始めたところです。今後、さらに広げていきたいと思っています。

◎在宅の未来

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 在宅移行が進んでいますが、自宅で療養する人が急激に増えるかというと、なかなか難しいと考えています。金銭的にも介護する人にも恵まれていれば可能ですが、家族が一緒に暮らしていなかったり、同居していても、仕事をしていたりしたら、困難です。

 施設は、体制が整っています。かつては、施設を"姥(うば)捨て山"のように感じていた人も少なからずいたかもしれません。でも、今は食事などにも配慮され、診察や看取りの体制もしっかり整っているところが多くあります。

 在宅医の増加も難しいかもしれません。在宅療養支援診療所を開設する場合、初期投資はそれほどかかりません。しかし、診療報酬改定の先行きが不透明です。新しく始めようという時、二の足を踏むケースもあると懸念しています。

 今、鳥栖のクリニックでは260人ほどの患者さんを訪問。福岡のクリニックでは140〜150人の患者さんの在宅を支えています。

 同じ思いを持つスタッフたちを鼓舞しながら、1日1日、質の高い医療を積み重ねていきたいと思っています。

医療法人 徳隣会 つつみクリニック
佐賀県鳥栖市弥生が丘6-82
TEL:0942-82-4400
つつみクリニック福岡
福岡市博多区神屋町2-26-103
TEL:092-273-2222
http://www.tsutsumiclinic.net/index.html


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