久留米大学医学部内科学講座 消化器内科部門 教授 会長 鳥村 拓司

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第109回日本消化器病学会 九州支部例会
消化器病学のNew Frontierを求めて

【とりむら・たくじ】 1982 久留米大学医学部卒業 同第二内科入局 2004 同助教授 2006久留米大学病院肝癌センター長 2011 久留米大学先端癌治療研究センター教授 2014久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門教授 2016 久留米大学病院副院長

 第109回日本消化器病学会九州支部例会が5月19日(金)、20日(土)、福岡市のアクロス福岡で開かれる。

 会長は鳥村拓司・久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門教授。第103回日本消化器内視鏡学会九州支部例会(植木敏晴会長)と合同開催となる。

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―テーマに込めた願いを聞かせてください。

 われわれは、これまで消化器疾患に関わる、さまざまな研究や治療に取り組んできました。幅広い分野で、その成果が見えてきています。

 肝疾患で言えば、国民病とも言えるC型肝炎に新薬が登場し、90%以上が治る時代になってきました。

 これまで、C型肝炎の治療や研究に情熱を注いできた人が非常に多くいます。その病気が治るようになった今、次に取り組むべき仕事は何なのか。どういう病気にターゲットを絞っていけばいいのか。今は、みんなが模索している時代だと言えます。

 肝疾患以外の分野もそうです。これまでの取り組みが実を結び、新しかった治療方法が、当たり前のものになってきました。

 そこで、今回のテーマは「消化器病学のNew Frontierを求めて」としました。参加者の皆さんが、消化器病学における"未開の地"を見つけるためのヒントを、提示できればと考えています。

―プログラムの目玉は。

 専門医セミナーの内容を、従来のものと大きく変えました。

 これまでは、ある特定の疾患について、症例検討やディベートを通してエキスパートの方に解説していただく方法でした。今回は、肝臓、消化管、膵臓を専門とされる3人の先生方に、それぞれが考える「New Frontier」を述べていただきたいとお願いしています。

 肝臓がご専門の向坂彰太郎・福岡大学医学部消化器内科教授、消化管の村上和成・大分大学医学部消化器内科学講座教授、膵臓の植木敏晴・福岡大学筑紫病院消化器内科教授にお話しいただくこのセミナーに、今回の学会の狙いが集約されると考えています。

 特別講演は、千葉大学消化器・腎臓内科教授を退官され、今は独立行政法人地域医療機能推進機構船橋中央病院の院長を務めていらっしゃる横須賀收先生にお願いしました。

 タイトルは「B型肝炎治療の基礎から臨床まで」。B型肝炎治療の領域で、今後取り組んでいくべき事柄をご示唆いただけると思います。

―そのほかのプログラムは。

 「生活習慣と消化器疾患」というワークショップを設けています。

 これまで、生活習慣と関わりがある疾患として関心がもたれてきたのは動脈硬化などの循環器疾患。生活習慣と消化器疾患の関連は、注目されてきませんでした。しかし、近年の食の欧米化で脂肪肝などが増加し、生活習慣が消化器に与える影響にも関心が集まっています。正しいかどうかはまだわかりませんが、肝臓から出た物質が動脈硬化を促進するという論文も出ています。生活習慣と消化器疾患の関係は、今後の消化器病学のトピックスになってくると思いますね。

 このほか、シンポジウムや男女共同参画企画など、多彩なプログラムを用意しました。

―日本消化器内視鏡学会との合同開催のメリットは。

 かつては別々に開催していましたが、内視鏡治療の普及で、消化器病学会と消化器内視鏡学会との線引きが難しくなってきました。

 胃がんを例にとると、昔はどんなに小さながんでも開腹していましたが、今は内視鏡で切除できるようになっています。内視鏡の守備範囲が広がってきているのです。

 地方会は、若い先生の参加や発表が多いのが特徴です。若いころは、自分でも、どの分野に興味があるのか分からないことも多くあります。合同開催の学会は、幅広く学び、自分の進路を考える参考にできる良い機会だと思います。

 今回の学会は演題応募数が約320。参加人数は900人ほどを予定しています。

―ご専門は肝がんです。この分野も新天地を求める時期でしょうか。

 北部九州は、肝がんの患者さんが日本で最も多い地域です。人口当たりの肝がんの死亡者数は、国内で佐賀県が最多。福岡県も常に5番以内に入っています。

 患者さんが多い理由の一つに挙げられているのが、「日本住血吸虫症」という風土病の存在。その治療で使われた注射が原因ではないかと言われているのです。

 当時は、注射器も針も使い捨てではなく、煮沸消毒して何度も使っていました。消毒が不十分だったためにC型肝炎が広がり、その結果、C型ウイルスに起因する肝がんも、多くなったのではないかと考えられています。

 ただ、治療法がなかったウイルス性肝炎が、インターフェロンの登場で治療できるようになり、肝がん死亡者数も、ピークだった2002年の3万2千人から、3万人を切るまでに減少してきました。

 C型肝炎の新薬の登場で、肝がん発生がさらに抑えられる可能性があり、肝がんの分野も転換期を迎えつつあると言えるでしょう。

 最近、特に九州ではウイルス性肝炎以外に起因する肝がんが増加し、肝がん全体の4割を超えてきました。飲酒によるアルコール性肝障害や、肥満を原因として発症する「NASH(Non-alcoholicsteatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎)」からの発がん。糖尿病も肝がんの危険因子になりますし、高齢化も肝がんだけでなくがん全体の罹患者数を押し上げています。

 NASHの患者数は200万〜400万人と言われ、B型肝炎の患者数、C型肝炎の患者数と比較するとかなり多くなっています。肝がんになる確率はウイルス性肝炎より低くても、母集団が大きいため、かなりの人が肝がんになる恐れがあります。

―対策はあるのでしょうか。

 肝がんのリスクが高い人たちを掘り起こす作業が必要になるでしょう。

 肝がんになる可能性が高い肝炎の患者さんの全員が医療機関を受診していると考えるのは、大きな間違いです。病院に行かない人だけでなく、自分が肝炎だということさえ知らない人も多い。ある統計だと、20%しか医療機関を受診していないというデータもあります。

 肝臓は細胞の8割以上が壊れないと自覚症状が出ない。慢性肝炎では、ほとんど症状がありません。

 だからこそ、肥満や糖尿病の患者さんが訪れる、消化器科以外の診療科の医師の方々にも、肝がんのリスクがある人について理解してもらい、肝臓に関する定期的な血液検査やエコー検査をしていただくことが重要です。

 久留米大学病院では、どの診療科に入院した患者さんに対しても肝炎ウイルス(C型、B型)の検査を実施しています。

 これまでは、抗体が陽性であっても、肝機能の数値が正常であれば、入院の目的となった治療だけして、退院となっていました。しかし、C型は昨年から、B型はこの4月から、陽性だった場合に医療連携室を通して主治医に連絡がいくシステムに変更しました。

主治医から患者さんに「入院治療が終わった後、肝臓の専門医療機関を受診してください」とお願いすることで、「知らないうちに肝がんになってしまった」という人を、減らしたいと考えています。

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特別講演「B型肝炎治療の基礎から臨床まで」演者/横須賀收(独立行政法人地域医療機能推進機構 船橋中央病院)
司会/鳥村拓司(久留米大学医学部 内科学講座消化器内科部門)

シンポジウム「消化器癌(がん)診療への基礎研究からみたアプローチ」
司会/古賀浩徳(久留米大学医学部 内科学講座消化器内科部門・消化器先端医療研究部門)
沖 英次(九州大学大学院 消化器・総合外科)
「colitic cance(r 炎症性腸疾患に合併するがん)に対するサーベイランスのあり方
司会/江﨑幹宏(九州大学 病態機能内科学) 芦塚伸也(宮崎大学医学部内科学講座 循環体液制御学分野)ほか

ワークショップ「ウイルス性肝炎治療の残された問題点」
司会/宮瀬志保(くまもと森都総合病院 肝臓・消化器内科)
馬渡誠一(鹿児島大学大学院 医学総合研究科消化器疾患・生活習慣病学)
「生活習慣と消化器疾患」
司会/伊藤鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)
清家正隆(大分大学医学部附属病院 肝疾患相談センター)
ほか

消化器病学会九州支部専門医セミナー
「消化器病学のNew Frontierを求めて」
司会/鳥村拓司(久留米大学医学部 内科学講座消化器内科部門)
演者/向坂彰太郎(福岡大学医学部 消化器内科)
村上和成(大分大学医学部 消化器内科学講座)
植木敏晴(福岡大学筑紫病院 消化器内科)

第109回日本消化器病学会 九州支部例会(鳥村 拓司 会長)
第103回日本消化器内視鏡学会 九州支部例会(植木 敏晴 会長)
会期 2017年5月19日(金)・20日(土)
会場 アクロス福岡(福岡市)
運営事務局 コンベンションリンケージ
学会ホームページ http://www.c-linkage.co.jp/jgesk109-103/


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