大阪大学大学院 医学系研究科医学専攻外科学講座 呼吸器外科学 奥村 明之進 教授

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伝統を引き継ぎ科学的な外科医を育成

【おくむら・めいのしん】 甲陽学院高校卒業 1984 大阪大学医学部卒業 同附属病院第一外科研修医 1993 同助手 米国セントルイス・ワシントン大学病理学教室 ハワード・ヒューズ医学研究所研究員 2005 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座助教授2007 同呼吸器外科学教授

 大阪大学医学部の源流は、医学者・緒方洪庵(1810-1863)の適塾までさかのぼる。呼吸器外科の本格的な臨床と研究は、1930年代、旧第一外科の小澤凱夫教授に始まった。2007年に臓器別に講座が再編成され、初代奥村明之進呼吸器外科学教授が誕生。今年、10年目を迎える奥村教授に話を聞いた。

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―呼吸器外科は伝統ある講座ですね。

 もともとは心臓外科をはじめとした第一外科の一分野でしたが、10年前の再編成で独立しました。

 旧第一外科の時代から諸先輩方が先進的な仕事をしてきました。1930年代後半には、国内で初めて肺がんに対する肺全摘術に成功し、4年以上の長期生存が得られています。

 胸腺の腫瘍「胸腺腫」「胸腺がん」の症例数も伝統的に多く、1980年代には正岡昭先生(後の名古屋市立大学第二外科教授)が、臨床病期分類を提唱。その分類法「正岡分類」は現在でもグローバルスタンダードとなっています。

 肺移植は、1980年代の川島康生教授時代に研究が本格化しました。1983年に世界初の脳死肺移植を成功させたカナダトロント大学などに多数の医局員が留学し、1997年の臓器移植法施行以降の生体肺葉移植(2000年、国内2例目)、脳死片肺移植(2000年、国内初)などにつながりました。

 肺移植は今も当科の重要なテーマの一つです。研究面では現在、虚血再潅流障害、移植免疫などに取り組んでいます。

 2009年には、本学心臓外科の澤芳樹教授とともに、国内初の心肺同時移植を成功させることができました。2013年と昨年にも成功し、これまでで計3例。2017年2月現在、心肺同時移植に成功しているのはわれわれの大学だけです。心臓外科との緊密な連携が背景にあります。

―10年間を振り返り、変化した点などを。

 就任時は48歳。初代ということでプレッシャーもありました。

 臨床面で力を入れてきたことは肺がんなどの手術症例数の増加と低侵襲手術の推進です。就任当時の手術症例数は年間200例程度でしたが、現在は300例以上。高齢化に伴い肺がんの患者さんも右肩上がりで増加してきました。

 10数年前までは開胸手術が主でしたが、今は胸腔鏡手術がほとんどです。技術の向上に加え、胸部CTなど画像診断技術が格段に進歩し、早期発見されるがんが増加しているためです。

 早期であれば低侵襲手術で根治可能です。われわれもやりがいがありますし、患者さんのメリットも大きい。手術支援ロボット「ダビンチ」による手術も進めています。

 肺がんの死亡率は男性の場合、がんの中で第一位。切除できない進行病期で見つかる患者さんが多いこと、再発の頻度が高いことが主な原因です。肺がんの手術を受けた患者さんの50%以上が70歳以上で、治療成績向上のためには高齢者への安全な手術も必要です。

 この20年間で女性の患者さんが増えていることも大きな変化です。昔は、肺がんというと、「喫煙する男性の病気」というイメージで、多くは扁平上皮がんでした。

 現在、喫煙人口が減少し、扁平上皮がんは減少。一方で腺がん、特に女性の腺がんが増加しています。たばこ以外の環境因子として注目されているのは大気汚染です。中国では猛烈な勢いで肺がん患者が増加し、若年の肺がんの患者も増えているという情報もあります。PM2.5の影響も疑われます。

―肺がん症例を登録・解析する「肺癌登録合同委員会」の事務局長ですね。

 1980年代に始まったデータベース研究です。現在、日本肺癌学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会の4学会で運営されています。

 全国の専門医修練施設の協力を得て、肺がん患者の情報を無記名で登録・分析。治療から5年後の生死や再発状況などを長いスパンで追っています。

 現在は、2012年の非切除症例と2010年の外科治療症例の2016年での治療成績を解析するために、第6次と第7次のデータベース事業を行っており、3万例以上が登録されています。今年中に結果を公表できる予定です。

 一つの疾患をこれだけ詳細に多数の症例で追ったデータベースは、国内ではほとんどないと思います。第5次事業までの登録数は約5万例で、世界肺癌学会のデータベースにも活用されました。世界的な学会で、われわれ日本人の研究が高い評価を受け、大変うれしく思っています。

 データベースは、協力いただいている病院の若手医師などが、診療の合間に入力しているものです。大変な作業で、真面目な日本人だからこそできる事業ではないかと思います。

―どのような医師の育成を目指していますか。

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 当教室では、がん幹細胞、がん転移機序、再生医学、胸腺の基礎的免疫学的研究などの基礎医学研究にも力を入れており、科学的な知見を外科治療に取り入れる努力をしています。

 最終的に目指すところは"外科医であり科学者"の育成です。研究の指導力や臨床の能力も養ってほしいと思います。

 しかし、まずは、若い方が多数入局する講座にしなければなりません。外科離れが進む中、なかなか難しいことですが、当講座には継続的に入局者が集まってきています。外科治療の魅力や、外科医の将来性などを伝えていきたいと考えています。

 学生教育には教室を挙げて取り組んでいます。まずは、胸腔鏡の機器の操作や豚の肺を使った肺切除の練習などの実習を通して、学生たちに外科診療の魅力を感じてもらいたいと思っています。

大阪大学大学院医学系研究科 医学専攻外科学講座 呼吸器外科学
大阪府吹田市山田丘2-2
TEL:06-6879-5111(代表)
http://www.thoracic.med.osakau.ac.jp/jp/index.html

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