近畿大学医学部 整形外科学教室 赤木 將男 主任教授

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人工関節が目指すもの

【あかぎ・まさお】 1983 京都大学医学部卒業 1984 京都大学医学部整形外科で研修後、関連3病院に勤務 1995 京都大学医学部附属病院整形外科学教室助手 2000 米国カリフォルニア州ロマリンダ大学人工関節摩耗学研究所留学 2001 近畿大学医学部整形外科学教室講師 2009同教授 2012 同主任教授 2014 同附属病院副病院長

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◎年を取らない人工関節

 1974年の開講以来、当整形外科学が得意としているのが関節リウマチの診療です。

 現在も多くのリウマチ専門医・指導医の資格を持つスタッフが在籍していますし、京都大学でリウマチや変形性関節症を専門にしていた私が2001年にここへ来ることになったのも、そうした伝統があるからです。

 ここ十数年で劇的に変化したことといえば、やはり人工関節(インプラント)の進化でしょう。中でも、軟骨の役割を担うポリエチレンの品質が非常に高まったことと、耐久性の向上には、目覚ましいものがあります。

 私が医師になったころは、膝の人工関節置換術をすると、痛みはなくなるけれど、直角までしか膝を曲げられませんでした。それが今や、しゃがむことだってできますし、ゴルフだって、軽く走ったりすることだってできます。

 インプラントを設置すると、どうしても日常生活が制限されたり、QOLが低下したりといったことが避けられません。

 確かに歩けないよりはいいし、痛みに苦しむよりはマシだけど、不自由を強いられる。そんなイメージは、大きく変わりました。

 かなり使い込んでも、インプラントがいたむことはまずありません。私が手術をした患者さんを15年以上、定期的に検査していても、何の変化も起こっていませんから。患者さんは年を重ねていくけれど、人工関節は年を取らないのです。

◎進化する「原点」

 昔は、インプラントの形状といえば数種類しか存在しませんでした。現在では、小型のものから大型のものまでバリエーションが広がり、さらには、より自然に動くタイプなども登場しています。

 選択肢が増えたことで、以前は関節をすべて取り払ってインプラントに置き換えなければならなかったケースも、靭帯(じんたい)を部分的に残す、あるいは小さなインプラントを用いれば完全に温存したまま治療することが可能になりました。

 その次の段階として、今、大型の人工関節でも靭帯を残そうという試みが活発化しています。それを実現する海外製のインプラントが、去年あたりに日本にも上陸しました。当整形外科でも、今年の春ごろから実際に使っていく予定です。

 面白いことに、できるだけ靭帯を残すインプラントを開発したいという考え方そのものは、半世紀以上も前からあったものです。文献をひも解いてみると、黎明(れいめい)期には、すでに現在につながるようなインプラントが作られていましたし、ありとあらゆるデザインを試みていたことがわかります。

 当時はデザイン性や設置技術、素材などさまざまな問題があり、ひざの動きに関する理解も乏しいものでした。そのため、人間のひざとインプラントが「けんか」をしてしまい、開発されたインプラントのどれも長持ちしなかったわけです。ただ、その一方では、圧倒的に数は少ないものの、手術がうまくいった例も報告されています。

 インプラントの改良がなされ、手術が一定の成績を収めるようになった今、ある意味、原点をもう一度見つめ直そうというわけです。もちろん、ただ同じ場所に戻るわけではなく、いわば螺旋(らせん)的な進化が起こっているのが近年の状況です。

◎満足度をどう高めるか

 膝関節、股関節を合わせて、ここでは年間で約230例の人工関節の手術をしています。

 テーマは、病態に合わせた治療を最小限のリスクでやっていくことに尽きると思います。特に高齢の方は、内科的な併存症がある場合も多いですから、できるだけ負担がかからない手術で、最大限の効果を上げることが必要です。

 私が小さなインプラントを好んで使用しているのも、骨を切る量が少なくて済み、手術時間が短く、かつ回復が早いためです。手術の翌日からは歩行器による歩行が可能ですし、2週間あれば、9割程度の方が退院できます。その後はリハビリの必要もありません。早く動けるようになるための手術をする、技術を開発する、最適なインプラントを選択する。それが当科の方針です。

 高齢になってもスポーツ活動をしたいという欲求が高まっているように、ニーズのレベルはかつてとは比較になりません。手術がうまくいった、歩けるようになった。それで満足してもらえる時代ではないのです。

 今後は患者満足度を引き上げていく努力が、より私たちに求められるでしょう。振り返れば医師になった当初、私がまず感じたことは「医師は極めて地味な仕事である」ということでした。

 患者さん一人一人が違う考え方や訴えを持ち、異なる人生を送り、さまざまな疾患を抱えている。それらを丁寧に拾い上げていく作業の積み重ねという意味で「地味」だということです。

 ですから、術前の説明にしても、そもそも関節とはこういうもので、あなたの術後はこのような見通しになっている。インプラントを入れたら関節の痛みは軽減されるが、筋肉痛がなくなるわけではない。

 そうした大事な事実をスタッフがしっかりと患者さんに伝え、個別の要望に応えられるよう、体系化していくための取り組みを進めているところです。

◎正しいコンセプトを

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 いい品質のインプラントを使っても、すぐれた手術の技術を持っていても、失敗したという話を聞くことがあります。その要因として考えられるのは、コンセプトが間違っていたということです。

 最新のインプラントが、いいものとは限りません。飛びついてしまいたくなる気持ちも理解できますが、車のモデルチェンジなどとは違うということを認識しなければなりません。

 だからこそ、歴史の勉強が欠かせないのです。黎明期のインプラントにはどんな種類があったのか。それが、どんな経緯で淘汰(とうた)されていったのか。今のインプラントのデザインは、なぜこうなっているのか。

 また、ポリエチレンとはどういうものでできていて、どのような工程を経て作られているのかを知ることも重要です。実際、過去には粗悪な素材だったために異物反応を起こして、骨が溶けてしまった事例もあったのですから。

 こうした知識を深めて初めて、適切なインプラントを選択し、正しいコンセプトの手術ができると思うのです。常に批判的な気持ちを持てるかどうか。インプラントを扱う外科医の実力を測る、一つの物差しでしょう。

近畿大学医学部 整形外科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377-2
TEL:072-366-0221(代表)
http://www.med.kindai.ac.jp/ortho/

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