京都大学医学部附属病院 稲垣 暢也 病院長

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先達の思いを引き継ぎ京大でしかできない医療を

【いながき・のぶや】 1984 京都大学医学部卒業 同附属病院内科研修医 1992 京都大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)千葉大学医学部附属高次機能制御研究センター助手 1996 同助教授1997 秋田大学医学部生理学第一講座教授  2004 同大学バイオサイエンス教育・研究センター長 2005 京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学(2013内科学講座再編により糖尿病・内分泌・栄養内科と改称)教授 2015 京都大学医学部附属病院病院長 2016全国医学部長病院長会議理事・副会長 日本専門医機構理事

 1899(明治32)年、京都帝国大学医科大学開設と同年に設立され、120年近い歴史を持つ京都大学医学部附属病院。地域の医療を支える高度急性期病院であると同時に、国内で新たな医療の開発をけん引する中核的な役割を担う。第40代目の稲垣暢也病院長に話を聞いた。

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―2015年に院長就任。注力してきたことは。

 京大病院の基本理念は「患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する」「新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する」「専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する」の三つ。「診療」「研究」「教育」を柱とした病院運営を進めています。当院の関連病院は、東は静岡県、西は福岡県まであり、広域にわたって連携を進めています。一方、患者さんの70%が京都府在住。地域の病院としての役割も担っています。

 院長となり、丸2年経ちました。当院は職員数3000人。大人数にも関わらず、職員間の風通しの良さを感じてきました。それは、患者さんに対する情報開示についても同じです。

 その文化を大切に引き継ぎながら、患者さんの目線に立ち、安全で質の高い医療を提供する開かれた病院づくりを推進することが私の役割の一つです。

―病棟など新病院の整備が進んでいます。

 2010年、任天堂の相談役だった山内溥氏から寄付をいただき新病棟「積貞棟」を造り、がんセンターとして整備しました。

 2015年には、「南病棟」が完成。ここには糖尿病などの生活習慣病や、耳鼻科、眼科、皮膚科、整形外科といった感覚器や運動器の疾患を持つ患者さんが入院されています。

 取り壊しが進む旧南病棟の跡地には、2019年に急性期病棟を中心にした8階建ての新病棟「中病棟」を建設。iPS等臨床試験センターもつくり、研究の臨床への応用を進めます。

 そのほか、2019年から2020年には「北病棟」を改修し、小児科や精神科を集約。4年後には新病院の最終形ができあがる計画です。次々と新しい建物が完成し、職員ともども、大変楽しみにしています。

―iPS等臨床試験センターではiPS細胞の臨床応用が進みますか。

 iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)の山中伸弥所長をはじめ、スタッフと極めて密に連携しながら進めています。

 現在、研究が先行しているのが、高橋淳教授が行っているパーキンソン病への治療です。iPS細胞から神経幹細胞、さらにはドーパミン産生神経細胞を作り、脳の中に移植するというものです。

 江藤浩之教授はiPS細胞から巨核球を作り出し、血小板を産生する技術を確立しました。献血に依存しない輸血システムに発展させようと考えています。

 妻木範行教授は、iPS細胞から関節の軟骨を作る研究を進めています。軟骨細胞の移植により、軟骨疾患の根治的治療につながると考えています。

 iPS細胞の臨床応用は、日本の国家的なプロジェクトでもあります。その中心にサイラの存在があります。従って、サイラとの連携は京大病院にとっても非常に重要と考えています。一方で、新しい医療だからこそ、患者さんに使う時には慎重に、安全に進めることが使命になります。

―研究を進める役割も担います。

 当院には、大学病院でしかできない医療を提供する使命もあります。昔は、全国から患者さんが大学病院へ治療に訪れていましたが、医療技術が進化し、がん医療などは次第に均てん化しています。

 今後、大学病院が患者さんの期待に応えていくためには大学にしかできない医療を展開していくことも重要です。そこで、2001年、全国に先駆けて、基礎研究を臨床に橋渡しをする施設「探索医療センター」を立ち上げました。

 同センターは2012年、当院が厚生労働省から臨床研究中核病院に選定されたのを受け、他部門と合併。「臨床研究総合センター(iACT)」となりました。現在、約100人のスタッフが医師主導の治験や臨床研究を支援しています。

 2015年に医療法が一部改正され、「臨床研究中核病院」が医療法で位置づけられるようになりました。要件も一層厳しくなりましたが、当院は今年3月8日に厚生労働省より「臨床研究中核病院」の承認を受けました。

 今後も臨床研究のレベルを国全体で上げていかなければなりません。

―研究を行う人材の育成も重要ですね。

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 私たちの大学は、国立大学附属病院長会議で、将来像検討ワーキンググループの研究に関する主担当校です。そこでも人材育成は大きなテーマですね。

 一致した意見としては、学部学生の時から人材育成は始まっているということです。京大は、幸いなことに入学する時点で研究をしたいというモチベーションを持った学生が多くいますので、彼らのモチベーションを下げることなく、研究のおもしろさを日々、伝えていくことがとても重要であると考えています。

 最近では、国が応用研究ばかり進めようとしているとの見方もあります。基礎研究が大事だということもきちんと伝えていかなければなりません。

 京大でしかできない医療をやっていく、それが重要な課題です。

京都大学医学部附属病院
京都市左京区聖護院川原町54
TEL:075-751-3111
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

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