長崎大学大学院医歯薬学総合研究科/展開医療科学講座 形成再建外科学 田中 克己 教授

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創傷治療における外科的アプローチのいま

【たなか・かつみ】 鹿児島県立鶴丸高校卒業 1984 長崎大学医学部卒業同大学医学部形成外科学教室入局1992 同大学医学部形成外科助手1999 同講師 2003 同大学大学院医歯薬学総合研究科発生分化機能再建学講座構造病態形成外科学助教授2015 同研究科医療科学専攻展開医療科学講座形成再建外科学教授

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―2019年7月4日から開催される、第11回日本創傷外科学会の学会長に就任されました。

 九州規模のものは学会長経験がありますが、全国規模の学会長就任は初めてです。2年先とはいえ、今から楽しみですね。

 日本創傷外科学会は、今年7月で9回目を迎えた比較的新しい学会で、形成外科医が中心になって、創傷をより良い状態にもっていくことを目的としています。

 形成外科が対象とする傷や傷跡は、患者さんの生活(QOL)や時として生命にも関わることにもなりますので、外科的治療を組み込むことでより早く治すことを目指しています。早く治るということは、機能維持に大きく関わるとともに、見た目もきれいに治るということでもあります。

 同学会は、形成外科手術や外科的処置などをうまく組み合わせることで、患者さんのQOLをより早く良い状態にするという目的で9年前に設立されました。

 それまでも同じような学会がありましたし、現在も日本創傷治癒学会などのさまざまな学会があります。こうした学会では、治療方法について創傷部分の環境を良くすることや薬を使うこと、あるいは創傷被覆材と呼ばれる衛生材を駆使することを目的としていました。

 ただ、そういった治療だけではやはり限界がありますので、外科的手法、手術を組み合わせることで、さらに一段良い状態に持っていきたいと考えているのです。

―外科的アプローチの患者にとってのメリットとは。

 外科的処置を組み込むことにはもちろんマイナス要素はありますが、プラス要素が圧倒的に大きいんです。傷を治すためにはその傷の原因などの本質的な問題があります。それを十分に調べた上で小さな手術も可能ですし、従来の保存的な処置、薬や軟膏などと手術を組み合わせることでそれぞれが相乗効果を生むこともあるのです。

 壊死組織のような死んだ組織があるとすればそれをきれいに切り取ると、その部分の環境が良くなります。これを取るだけで終わらせるのか、そこに何か組織を移植するのか。移植できないのであれば、その部分に何らかの別のツールを使って傷を閉じるなどすると見た目などの治り方に大きな違いがあります。

 あるいはリハビリを中心としている方には、大きな手術ではなくて小さな手術や処置を組み合わせて、その方に応じたオーダーメードの治療ができます。これが外科的アプローチの大きなメリットですね。

 対象とするのは皮膚が中心ですが、たとえば足の傷の治りが悪い場合などには、皮膚の状態を良くするために他の組織を移植するだけでは不十分で、血管を広げたり新しい血管を移植するなどの処置も必要になります。そういう場合には循環器内科とコラボレーションしますし、心臓血管外科の先生とコラボすることも形成外科の範疇(ちゅう)です。

 広範囲熱傷や巨大な有毛性母斑、いわゆる大きなあざですが、そういった方には自分の皮膚を培養して移植することが保険診療で可能になりました。最近もやけどで移植が必要になったケースがあり、皮膚を採取して愛知県の培養施設に送ったところです。3週間程度かけて培養して、広くなったものを移植します。こういったことはもう普通にできるようになりました。

―まだ先の話ですが、学会長を務めるにあたって何かテーマを考えていらっしゃいますか。

 まだその段階にはないですね。正直なところ、今年7月に第9回学会が開催予定なので、それを見なければ何も手をつけられないでしょう。また、新しい分野ですので2年後のことを考えてみても、すぐに古くなってしまうんです。

 現時点で注目されているテーマとして、再生分野でいえば、幹細胞は注目度が高いと思います。

 血液外科に限らずさまざまな分野の科、たとえば心臓や肝臓でも幹細胞が使えれば失うものが少なくなります。最初は自分の体のものを増やして移植するということになるでしょうが、将来的にはほかの方の幹細胞で増やすことが可能になるでしょう。

 たとえば乳腺手術の後にふくらみを再生医療で作ることなどが考えられますが、医療以外、すなわち法律面でのしばりがあるので、なかなか先を見通すのが難しいと思います。

 法律面での障壁を大まかに言えば、取り出したものを培養してそれを使うとなった時に、決められたシステムを持った施設であることが必須になるということです。それをクリアしないと臨床に使うための質的な担保がとれず、合併症などの問題も大きくなるんですね。

―教授就任から1年3カ月が経ちました。

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 臨床や研究もそうですが、教育に関してもそれぞれ難しい内容に直面しているというのが正直な感想です。ただ、やはりやりがいのある仕事であることは実感しています。

 まず臨床面ではかなり多くの患者さんに受診していただいているので、形成外科の得意分野をより一層進化させていきます。もう一つは、他の診療科との連携をさらに密にしていくことですね。

 実現のために必要なのは、やはり人材です。幸い昨年は6人が形成外科に入り、今年も4人が入局していますので、彼ら彼女らの形成外科への熱意をしっかりと受けとめるような研修制度を考えているところです。

 研究に関しては私たちがずっと抱えているテーマである再生医療、あとはケロイド治療などの研究について取り組みを進めています。

 私が専門とするマイクロサージャリー(顕微鏡下手術)では患者さんの数がかなり増えてきました。こういった技術は若い方が私よりもどんどん上手になっていきます。そうすると、臨床で安定した成績を得るための対策を編み出したり、基礎的なものにもう一度立ち返ってさらに臨床にフィードバックするなどの研究テーマが生まれてくるでしょう。

 最近の医療界では、専門化というよりも細分化といったほうが正しいくらいに専門分野に特化した診療をする医師が増えてきました。形成外科分野でも、「手は診るけど顔はできない」とか、「下肢の血行障害は最初から診ないと決めている」といったような、にわかには信じがたいような話も耳にするようになっています。

 あまりにも細かく裁断されたようなあり方が医療本来の姿なのか。また、医療の地域格差もみすごせないレベルになっています。自身の医師としての在り方を顧みながら、教室運営にあたってはこうした問題意識も常に念頭に置きたいですね。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 形成再建外科学
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200( 代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/plastics/

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