届け!パンの缶詰「救缶鳥」国内外の被災地と世界の飢餓地域に
パンの缶詰を通して、被災地や海外の飢餓地域の支援に取り組む"パン屋さん"がある。
栃木県那須塩原市にある「パン・アキモト」(秋元義彦社長)。災害備蓄が社会貢献につながり、購入した側にもメリットがある「救缶鳥プロジェクト」が評判となり、賛同する企業・団体等はすでに約2000社・団体。病院やクリニック、薬局などにも広がっている。
缶詰開発のきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災。届けたパン約2000個の半分ほどが、カビなどを理由に廃棄処分になったことからだった。
「乾パンのように日持ちして、バターロールやデニッシュのようにおいしいパンを作りたい」。防腐剤を入れないポリシーはそのままに、保存できる期間を延ばそうと、作ってはやり直す日々。1996年秋、パンの缶詰を完成させた。
しかし、思いがけないジレンマが襲う。災害用備蓄として、購入する団体などが少しずつ増えていた2004年、同社の缶詰を備蓄していた自治体から、新規購入と引き換えに賞味期限が切れそうなものの処分を依頼された。
「災害がなかったのは喜ばしいこと。でも、私たちはパン屋。パンを食べてほしい、という気持ちがありました」(秋元信彦営業部長)。
そんな思いを抱える中、スマトラ沖地震が発生。届けた在庫品の缶詰が喜ばれたことなどもあり、缶詰を被災地や飢餓地域で「リユース」することを思いついた。
2009年、「救缶鳥プロジェクト」として始動。団体や自治体、企業、個人などが購入したパンの缶詰(賞味期間37カ月)の賞味期限が1年後に迫ったころ、新たな缶詰の購入と回収を案内し、回収と同時に購入すると、一定額が割り引かれる仕組みにした。
新たな缶詰の納品時に、それまでの備蓄缶詰を回収。回収した缶詰は、NGOなどを通じて、国内外の被災地や海外の飢餓に苦しむ地域に届けられる。
2011年の東日本大震災時には震度6弱の揺れに見舞われた同社。それでも、東北各県へパンの缶詰を届け続けた。
発生2日後には在庫1万5000缶を発送。その後も社内に残る原料を使って生産を続け、原料が少なくなれば、原料メーカーの工場までトラックで取りに向かった。
会社が資金不足になると、期限前の顧客にもダイレクトメールで協力を依頼して缶詰を集め、被災地に送った。資金難を知った国内外の人から寄付も、支援を後押しした。
2013年から現在までに、海外の飢餓地域、国内外の被災地に送られた缶詰は、2014年の広島豪雨、昨年の熊本地震の被災地などを含めて約11万缶。うち、救缶鳥プロジェクトによるものは、8万3000缶余りに上る。
今年2月、同社は米国の提携パン工場でパンの缶詰の製造を始めた。救缶鳥プロジェクトも近くスタートさせる計画だ。
NGO日本国際飢餓対策機構によると、世界人口の6人に1人が飢餓に苦しみ、5歳未満の子どもが6秒に1人、飢えで命を落とす。「私たちは、地球人。パスポートなく国境を越える鳥のように、パンの缶詰が国境を越えて、人を救ってくれたら」。同社が"救缶鳥"の名前に込めた願いは、少しずつ実現している。
救缶鳥(賞味期限37カ月)
価格:1万2420円(税込)
数量:15缶
内容量:200グラム(およそ2食分)
味:オレンジ味/ブルーベリー味/ストロベリー味
回収:2年後(回収缶数×102円でディスカウント)※そのほか24缶(1缶内容量 100グラム)入り1万778円(税込)でディスカウントなしの救缶鳥Jr.もあり
パン・アキモト http://www.panakimoto.com/