大阪市立大学大学院 医学研究科脳神経外科学講座 大畑 建治 教授(大阪市立大学医学部長)

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さまざまな個性を評価できる社会こそが理想

【おおはた・けんじ】 島根県立益田高校卒業 1980 大阪市立大学医学部卒業 同附属病院臨床研修医 1982 同臨床研究医 1987大阪市立大学大学院医学研究科外科系専攻卒業 同医学部助手(脳神経外科学講座) 1988 アメリカ合衆国バージニア医科大学リサーチアソシエート(脳神経外科研究部門) 1990 ドイツ・マーブルグ大学フルダ市民病院医師(耳鼻咽喉科顔面形成外科部門) 1991 大阪市立大学医学部助手(脳神経外科学講座) 1992 同講師 1999 大阪市立大学医学部脳神経外科学教室助教授 イタリア・ベローナ大学客員教授 2003 世界初の頭部結合双生児(成人)の分離手術で世界選抜チームの主執刀医として参加(シンガポール、ラッフェル病院)手術の経過はCNNで生放送された 2005 中華人民共和国・首都医科大学海外科学評議員 インド・ムンバイセス・ゴードハンダス・サンダーダス医科大学・エドワード王記念病院生涯名誉客員教授 2006 大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科主任教授 2008 東京医科大学医学部脳神経外科兼任教授 2016 大阪市立大学大学院医学研究科長・医学部長兼任  世界髄膜腫学会理事長

 大阪市立大学脳神経外科学講座は1968(昭和43)年開設。来年50周年を迎える。

 同講座の大畑建治教授は2003年に世界初の頭部結合双生児の分離手術で世界選抜チームの一員に指名され、頭部の静脈を分離させてバイパスを作る最難関部を担当した世界的名医。

 大畑教授に教室の特徴や人材評価の考え方について聞いた。

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◎世界をリード

 当教室は脳・脊髄・末梢神経疾患治療の日本トップの施設として発展してきました。

 当教室が得意としているものの一つに頭蓋底外科が挙げられます。頭蓋底外科では、難しい脳腫瘍や脳動脈瘤に対する脳底面からの手術を確立しました。脳腫瘍や脳動脈瘤の治療成績はこの手術法により飛躍的に向上し

ました。現在では世界のスタンダードとして広く実施されています。

 また、脊椎脊髄手術の分野でも日本の草分けであり、脊椎脊髄手術の基礎をつくり世界に普及させました。

 昨年6月に第7回世界頭蓋底外科学会連盟国際会議の会長を務めました。この学会は4年に1度、各大陸で開催されています。昨年はアジア開催ということで日本、中国、韓国、インドの4カ国がプレゼンテーション。日本代表の私が選ばれて主催することになったのです。

 今年6月8日(木)、9日(金)には第32日本脊髄外科学会の学会長を務めます。また第8回アジアスパイン ASIA SPINEを6月9日(金)、10日(土)に同時開催させていただきます。

 このような大規模な学会を主催することができるのも当教室が高い評価を得ているからだと思います。大変名誉に感じますね。

◎グローバル化

 当教室では35年前から英語でカンファレンスをしています。ただ、いつもやっていたわけではなく、外国人がいる時は英語で、それ以外は日本語で、という感じでした。しかし、私が教授になってからは、すべてのカンファレンスを英語でしています。

 今は否が応でもグローバリズムの潮流に乗らざるを得ない時代です。今後、英語でのカンファレンスを医学部全体にも取り入れていくつもりです。

◎外科医不足

 脳外科は、慢性的なマンパワー不足です。仕事がハードで、リスクが高いため、どうしても敬遠されてしまうのです。

 日本はいい意味でも悪い意味でも平等な社会です。医療においても同様で、仕事がハードでリスクの高い科も、そうでない科も報酬に差はありません。そうなると費用対効果を考えてワークライフバランスが保てる科に人が集中してしまうのは致し方ないことかもしれません。

 一方、欧米は日本とは違い、外科系の診療科は報酬も高く、社会的ステータスも高いのです。

 私は医療崩壊とは外科医が減ることだと考えています。それを食い止めるために何らかの貢献をしていきたいですね。

 教室員の健康を守るのも教授の役割です。しかし、私たちの仕事は毎日8時間労働というわけにはいきません。医療安全の観点から言えば、スタッフが疲弊しないようにしっかり休ませることが理想です。しかし、スタッフがいないので、救急車を断るといったことを全国の病院がやり始めたら、たちまち医療は崩壊してしまうでしょう。

 いかにして若い人たちが健康で生き生きと働ける環境を提供するか。最近はそんなことばかりを考えています。

◎患者さんにとってベストな治療法を

 一般の人だけでなく、医療者も誤解しがちですが、いわゆる低侵襲治療が必ずしも正しい治療というわけではありません。

 低侵襲治療をした次の日に患者さんが麻痺(まひ)を起こしては意味がありません。傷の大きさで低侵襲かそうでないかを言っていますが、それは完全に間違いです。

 大事なのは傷が小さいかどうかではありません。合併症がなく完治することが患者さんにとって最も低侵襲な治療法なのです。

◎論文執筆の重要性

 教室員には大学院に進んで学位を取得してほしいと思っています。学位をとる過程では論文を書かなければなりません。自分の研究してきたことを外に発信するための方法が論文なのです。

 多くの人は英語の論文であればすべて金科玉条のように正しいと思いがちですが、それは間違いです。研究をすれば、いろいろな論文の正誤を評価する力が付きます。他者の論文を評価する能力をつけるには、まず自分が論文を書くことです。

◎世界初の手術を担当

 2003年、私が48歳の時に世界初の頭部結合双生児(成人)の分離手術で世界選抜チームの一員に選ばれました。

 患者さんは当時27歳のイラン人姉妹でした。それぞれジャーナリストと弁護士になる夢を持っていた2人は、日常生活に支障をきたしていたので、手術を受けることを決意したのです。ロンドンに倫理委員会が設置され、シンガポールのラッフェル病院で手術を受けることになりました。

 世界中から各分野のスペシャリスト25人が集まりチームを編成。私は最難関である静脈分離を担当することになりました。選ばれたことを、光栄に感じましたね。ちなみにチームリーダーは昨年のアメリカ大統領選で共和党の候補だったベン・カーソンでした。

 手術は合計で50時間以上かかりました。私が担当したのが、そのうちの12時間。手術の様子はCNNで生中継されました。

◎個性を生かして

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 文部科学省は高大接続改革を推進しています。これまでの知識つめこみの得点重視の試験から、主体的・協同的に学ぶアクティブラーニングを導入し、自発的に考える人材を養成するのが、この改革の目的です。

 今後求められているのは、自分自身で考えて、自分自身で危機を乗り越え、今までになかった新しいものを生産する人材です。それはまさに脳外科医に求められる能力でもあります。

 手術は回答のない問題集で、術中はさまざまなトラブルがあります。リスクマネジメントを1秒単位でできる人間が優れた脳外科医なのです。

 しかし、ここで言いたいのはそんな人間ばかりでは医療はできないということです。トップの言うことを忠実に聞くフォロワーシップのある人も必要です。また手術はさほど上手ではないけれど、患者さんへの対応に長けたコミュニケーション能力が高い人も必要です。

 野球チームを例にあげると分かりやすいでしょう。1番から9番までが全員4番バッタータイプのチームは強いチームではありません。それぞれの個性を生かしているチームが強いチームなのです。

 私はいろいろな個性をもつ人間がいてもいいと思っています。多様な人材に対して多様な評価をすることが日本の社会には必要だと思うのです。

大阪市立大学医学部附属病院
大阪市阿倍野区旭町1-5-7
TEL:06-6645-2121(代表)
http://www.hosp.med.osaka-cu.ac.jp


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