急性期から在宅までトータルで診るために
1986(昭和61)年に四條畷(しじょうなわて)市に開設された畷生(てっせい)会脳神経外科病院。同市や大東市、交野市には公立の病院がないため、地域の公的病院としての役割を担ってきた。西村進一院長に話を聞いた。
―特徴などを聞かせてください。
脳神経外科の専門医が4人いるなど、脳神経外科が柱です。ただ、開設者の吉川幸弘前理事長には、専門的な分野に特化するだけでなく、地域のニーズに合わせ、市民病院的な役割を担う病院を目指したいという思いがあったようです。現在も、内科や眼科など15の診療科を擁しています。あわせて、24時間の救急病院としての役割もあります。
私は、1992年に脳神経外科部長として着任。2010年に院長になって、今年で6年目となります。
2005年に現在の地に新築移転、患者さんに気持ちよく過ごしてもらいたいという吉川前理事長の思いから、エントランスは天井が高く、広々として開放感があるのが特徴です。
2006年には、脳卒中などの治療を経た患者さんが、リハビリテーションを行った後に、在宅にスムーズに戻れるようにと、回復期リハビリテーション病棟42床を開設しました。地域の高齢化に対応するためです。法人内に、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどを開設し、介護サービスも提供できるようにしました。
それによって、急性期から回復期、そして維持期まで、信愛会グループ内の施設で、途切れることなく患者さんを診ることができるようになりました。患者さんにとっても、安心して、治療やリハビリができる環境が整ったと思います。
2011年には、社会医療法人に移行することもできました。
―セラピストの確保も課題では。
リハビリテーションに力を入れていますので人材の確保は重要です。しかし、作業療法士や言語聴覚士は各所で求められている職種ですので、なかなか難しいのが現状です。
このため、セラピスト養成校の臨床実習を積極的に受け入れています。学生さんには、当院の状況や雰囲気を知ってもらえる機会となります。実習に来られた学生の多くが、最終的に入職しています。
入職後は、職員には研修や学会などにはなるべくたくさん行ってもらうようにしています。勉強にもなりますし、みんなのやる気にもつながります。
当院の理念は「誠実と信頼の医療」を提供すること。これを実現するための四つの基本方針がありますので、職員は紙に書いたものを常に名札に入れて携帯しています。
また、月に1回全体朝礼がありますので、当院の理念とその月の医療安全の標語を唱和しています。行動の規範として、職員みんなで、日頃から意識付けしておくことが大事だと考えています。
- 基本方針
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- 患者様の権利の尊厳
- 地域医療に貢献
- より良い医療サービスの提供
- 知識・技術の研鑽
―脳神経外科医のやりがいは。
脳神経外科医になったきっかけは、先輩方の働く様子が格好よく、憧れを抱いたからです。
やりがいは、患者さんが見事に回復される様子を見られること。救急で運ばれてきた時には、意識のない患者さんでも、一生懸命治療することで、急速に回復していく姿を見られるのは何よりうれしいですね。
脳卒中などは、いつでも起こる可能性のある病気ですから、われわれは、即座に対応しなければいけません。時間との勝負のなかで、治療がうまくいくと喜びもより増します。
―今後の課題は。
高齢社会が進むなか、今後、社会保障費もますます増加するため、医療業界にとっては厳しい時代が続きます。医療経営上も、今後どう対応するのか模索しています。
しかし、経済的な制約があるからと言って、医療の質が、今後低下していくようでは困ります。
現状の医療レベルを落とさずに、質を維持するためにはどうしたらいいのかを考えなければいけません。
もちろん、個々人が手間暇かけて一生懸命に仕事をすることは大事です。しかし今後は、若い人が減少していきますので、より効率の良い働き方が求められていくのかもしれません。
―国は在宅医療にシフトしようとしています。
社会保障費を抑えるために、在宅医療を推進したいと考えているようですが、現場を見ると、果たして、国民のみなさんが在宅での介護を望んでいるのかは疑問ですね。
今後は、地域の病院だけでは高齢者を支えることはできないので、できるだけ力を結集していく必要があります。当院は、在宅後方支援病院でもあるので、地元開業医の先生方との連携は特に大事にしていかなければいけません。
社会医療法人 信愛会 畷生会脳神経外科病院
大阪府四條畷市中野本町28-1
TEL:072-877-6639(代表)
http://www.tesseikai.jp