神戸大学大学院 医学研究科外科系講座 脳神経外科学分野 甲村 英二 教授

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「神の手」よりも「人の心」

【こうむら・えいじ】 大阪府立三国丘高校卒業 1979 大阪大学医学部卒業同脳神経外科教室入局 1984 Neurochirurgische Klinik,KrankenhausNordsatdt,Hannover, Germany (Chefarzt:Prof.Dr.med. M.Samii) 1988医誠会病院脳神経外科部長 1990 大阪大学医学部脳神経外科助手1991大阪労災病院脳神経外科部長 1999 大阪大学大学院医学系研究科神経機能制御外科学講師 2000 同助教授 2002 神戸大学大学院医学系研究科・器官治療医学講座脳神経外科学教授 2008 神戸大学大学院医学研究科・外科系講座脳神経外科学分野(組織変更による名称変更)2011 神戸大学医学部附属病院副病院長

 1964(昭和39)年、兵庫県立神戸医科大学から移管された神戸大学医学部は、高度かつ地域に根差した医療を実践してきた。学生育成の面では、「Physician Scientist(臨床と研究を両立させる医師)」の育成に力を入れている。脳神経外科学分野の甲村英二教授に話を聞いた。

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―一昨年、高磁場3テスラのMRIを導入されました。

 2014年1月、神戸大学医学部附属病院に低侵襲総合診療棟ができ、同3月末に診療を開始しました。新診療棟は、地下1階と1階に放射線部、2階に光学医療診療部と腫瘍センター、3階には手術部、4階には周産母子センター、5階が病理部となっています。

 高磁場3テスラMRIを手術エリア内に入れているのは、国内では京都大学医学部附属病院と当院の2施設だけです。これによって、術中の高解像MRI撮像が可能になり、より安全で精度が高い手術が可能となりました。

 この装置は主にグリオーマ(神経膠腫)や経鼻内視鏡手術などに活用していて、この装置を使って実施した手術の症例数は昨年末までで100例ほどになりました。

 例えば、グリオーマの場合、術前のMRI検査で腫瘍の位置を特定してい ても、術中は脳の形が少 しゆがむため、肉眼では 脳と腫瘍の境目がわかり づらくなってしまう。術 前の画像だけでは正確な 手術ができないのです。

 患者さんの予後を考慮 すると、機能障害を出さ ずに腫瘍を残さず取って しまいたい。そのギリギ リのラインまで攻めるに は、手術中にMRIを撮り、改めてナビゲーション をセットアップすることが 必要になってくるのです。

―治療をする上で大切なことは。

 常に心掛けているのは、低侵襲であるということです。どんな手術もモニタリングも、それ自体は手段であって、あくまでもゴールは患者さんの状態を良くすること。決して手術が目的であってはいけません。

 同じ病気でも、治療にはさまざまな方法があります。一つの型にとらわれるのではなく、患者さんの状況に応じて最適なものを柔軟に選択することが大切だと思います。

 ただ、低侵襲であっても、腰の引けた治療はしたくないですね。やり過ぎは良くないけれど、やり足りないのはもっと良くない。脳腫瘍の手術で、リスクを恐れるあまり腫瘍を取り残してしまったら、数年先には大変な後悔をすることになります。侵襲を少なくすると同時に、患者さんのQOL(生活の質)を維持できる治療を進めていきたいと考えています。

 また、この人は80歳だから手術はしないとか、年齢だけで治療の可否を決めるのではなく、病気を発症する前の生活状態までを含めて検討する必要があると思います。

―新専門医制度について。

 日本脳神経外科学会は現行の方法で実施する方針です。基幹病院と連携病院が協力して専門医養成に取り組む「プログラム制」が特徴で、すでに2011年から実施している方法です。

 専門医制度の本来の目的は良質な専門医を育成すること。領域ごとに専門医の質を高め、統一することです。そのためには、専攻医を一つの施設にとどまらせるのではなく循環させて、幅広い経験をさせることがポイントになります。その循環システムを構築するには、プログラム制の実施が不可欠ではないかと思います。

 現在、本学でトレーニングしている専攻医は兵庫県を広く回っていて、兵庫県北部の豊岡市や南部の淡路島にもローテーションで勤務しています。

―今後の展望は。

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 研究面においてはいくつか的を絞って先進的な医療の研究・開発に力を尽くしていきたいと考えています。

 当医局には毎年平均3、4人ほどが入局しています。人材を育成し、地域における脳神経外科のレベル向上につなげることが、われわれにとって最大の責務です。

 外科系の仕事は拘束時間が長く、下積み期間も長いというイメージから、全国的に外科医不足が深刻です。そんな中、脳神経外科を選んで来てくれた学生たちは、皆さんとても意欲的に取り組んでいます。

 一般的に、外科医は手先が器用でないと務まらないと思われがちですが、実際はそうではありません。むしろ不器用さをわきまえている人の方が外科医に向いていると思います。不器用な分、一生懸命に練習するし、どうすれば手術がうまくいくかを必死に考える。器用さよりも、そうした向上心、周囲とチームワークをつくるためのコミュニケーション能力が大切なのです。

 最近では、外科手術というと手先のことだけが注目されがちですが、実際、手術室でやっていることは、全体の20%ほど。その手術が成功するかどうかは、術前の診断と下準備で決まります。その工程をおろそかにしては、いくら「神の手」を持つ医師が執刀したとしても、その手術は50点、60点止まりでしょう。

 医療に最も必要なのは、「神の手」よりも「人の心」。手術というものは手でするのではなく頭でするものです。CT画像やデータだけを見るのではなく、いろいろな話をしながら患者さん本人をしっかりと診ることも大事です。

 近ごろはコミュニケーションをとることが苦手だったり、安定志向だったりする若者が増えたように感じます。留学希望者も少なくなりました。確かに国内で経験できることは増えましたが、海外へ出て行くことで得るものが必ずあります。つらいこともありますが、時が経てば忘れてしまう。私自身も、留学当時の恩師や同僚との交流に今でも助けられていますよ。

 そういった意味でも、学生にはもっと夢を持ってほしい。国家試験に合格することだけを目標にしてほしくはないですね。

神戸大学医学部附属病院
神戸市中央区楠町7-5-2
TEL:078-382-5111(代表)
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp


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