医療法人社団 秀峰会 川村病院 川村 武 院長

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チーム医療の充実で働きがいのある職場に

【かわむら・たけし】 静岡県立富士高校卒業 1973 東京慈恵会医科大学卒業 国家公務員共済組合連合会虎の門病院外科研修医 1982 同消化器外科主任 川村外科医院(現川村病院)副院長 2016 同院長

 1964(昭和39)年現在の場所に川村外科医院として開院した川村病院。消化器・乳腺疾患を中心に地域医療に貢献してきた。川村武院長に病院の現状と今後の展望などを聞いた。

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―内視鏡検査・治療の合計件数が年間約8000件と伺いました。

 当院は病床数60床の小規模病院ですが、病院規模の割には内視鏡による検査・診療件数が多いことが特徴です。兄の川村統勇理事長が東京慈恵会医科大学内視鏡科の客員教授をしていることもあり、「胆管ステント留置術」

「ESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)」などの技術を持つ医師を医局から派遣していただいています。

 2016年に実施した内視鏡検査・治療の件数は約8000例。上部消化管内視鏡検査4366例、下部消化管内視鏡検査3767例、上部消化管ESD17例、下部消化管ESD35例、内視鏡的大腸ポリープ切除は785例です。

 がん手術の症例数もこの規模の病院としては多く、昨年は胃がん36例、結腸直腸がん70例、肝胆膵がん5例、乳がん31例。胆石症65例、肛門手術93例、ヘルニア手術116例、虫垂炎23例など、その他の手術を含めると約500例になります。乳がんを除く約8割に腹腔鏡下手術を実施しました。

 また、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎、クローン病などの難病にも対応しています。必要な患者さんには、インフリキシマブ(抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤、商品名:レミケード)の投与や血球成分除去療法などを行い、昨年は潰瘍性大腸炎約140人、クローン病24人の難病申請をしました。

 超音波(エコー)と内視鏡の検査件数も年々増加しています。検査が約2カ月待ちという状態を改善するために、昨年6月、超音波検査機器を1台から2台に、9月に内視鏡検査用のベッドを2台から3台に増やして対応しています。

 昨年1年間に実施したエコー検査は4331件。乳腺エコーは、910件だった一昨年の1.7倍(1582件)に、腹部エコーは1655件から約1.5倍(2609件)になりました。

 2016年8月には病院全体の医療の質の向上と維持、医療安全を目的に病院機能評価(3rdG:Ver.1.1)を受審し、認定されました。今回の更新で認定は3度目。そのほか日本外科学会教育関連施設、日本消化器外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本乳がん学会の認定施設としての役割も担っています。

 小さい病院ではありますが、消化器疾患に関しては、大学病院や大規模病院に比べても見劣りしない医療を地域の皆さんに提供したい。その実現に向けて、職員全員で努力していきたいと思います。

―KM-CART(腹水ろ過濃縮再静注法)を導入されていますね。

 KM-CARTは、がん性腹水や肝性腹水など利尿剤治療では改善しない難治性腹水に対する新しい治療法です。1年ほど前に導入しました。

 がん性腹水は、単に腹水だけをせん刺排膿すると、腹水に含まれるアルブミンやグロブリンなどのタンパク成分までを廃棄してしまうため、低タンパク血症がより進行し、腹水がたまりやすくなってしまいます。従来もCARTはありましたが、廃液できる量が限られているため、大量の腹水に対応できず、発熱やショックなどの副作用があることが問題でした。

 一方、KM-CARTでは抜いた腹水から細菌やがん細胞を取り除いてろ過。その後、アルブミンやグロブリンなどの有用なタンパク成分を濃縮して静脈内に戻すことができます。これによってタンパク質低下を来すことなく、腹水を大量に廃棄することができます。

 CART研究会(※)によるKM-CART認定施設は当院が中部地方唯一。全国的に見ても14施設しかありません。※CART 研究会は、2009年、難治性腹水に対する腹水ろ過濃縮再静注法(CART)の普及と発展を目的として設立。日本医科大学消化器外科の太田惠一朗教授が代表世話人を務める。

―今後の取り組みについて聞かせてください。

 当院は輪番性外科系2次救急病院ですので、急性期病院としての機能は維持していきたいと思います。

 しかし、超高齢多死社会を見据えて、地域医療構想が進められ、地域包括ケアシステムの構築が始まりました。

 当院は、機能強化型在宅療養支援病院でもあります。訪問診療を行い、地域の医療機関と連携しながらさまざまな看取りの要望にも応えています。

 近年、最期の迎え方に対する考えは多様化し、ご自宅での看取りを希望される方も増えてきました。当院では、日本緩和医療学会、日本サイコオンコロジー学会の「PEACE(緩和ケアのための医師の継続教育プログラム)」の受講医が病院や在宅での緩和ケアに取り組んでいます。将来的には、急性期病棟の一部を「地域包括ケア病棟」に移行し、終末期の患者さんの受け入れもできるようにしたいと考えています。

 さらに、先月着工したばかりの職員宿舎の1階には、がん患者さんやその家族、友人の不安な気持ちや孤独感に寄り添い、サポートできるスペースを設ける予定です。

 建物のデザインは、国内外の地場産業や教育、公共などのプロジェクトを手掛けるデザイナー・太刀川瑛弼(えいすけ)さんにお願いしました。イギリスの「マギーズセンター」のコンセプトに近いものになると思います。

 ここ、富士市がある静岡県東部は、県西部や県中央部に比べると医師も看護師も不足しています。すべての職種において人材確保が難しい状況です。

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 以前は浜松医科大学から医師の派遣がありました。その後、虎の門病院(東京)から医師を何人かご紹介いただき、現在は東京慈恵会医科大学から派遣していただいています。十分なマンパワーを確保できていますので、これからも各病院・大学とのつながりを密にしていきたいですね。

 また、将来看護師を目指す学生を対象に、月額10万円の奨学金制度を設けています。奨学金の貸与を受けた期間と同じ期間、当院で看護業務に従事した場合は奨学金の返済が全額免除されるシステムです。

 一人の患者さんをきちんと診るには、医師だけがどんなに頑張っても無理があります。医師、看護師、メディカルスタッフがチームとなって患者さんを診ていくことが大切です。そのためには、マンパワーを確保し「チーム医療」を充実させることが必要となります。

 すべての職員が各自の持つ能力を発揮することによって、患者さんに感謝され、喜ばれる病院をつくること、職員が働きやすく、働きがいのある病院をつくることが、院長である私の使命だと考えています。

医療法人社団 秀峰会 川村病院
静岡県富士市中島327
TEL:0545-61-4050
http://www.kawamura-jp.jp/wp


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