患者さんの変化とともにマイナーチェンジで需要に応える
山口県南東部に位置する柳井市。穏やかな気候と豊かな自然に恵まれたこの場所は、江戸時代、岩国藩の商都としてにぎわった。
今、中核病院として地域を支える周東総合病院の母体となる病院が誕生したのは1939(昭和14)年。80年目を前に、馬場良和院長を訪ねた。
―病院の特徴は何でしょう。
山口県には、八つの医療圏があります。当院がある柳井医療圏は人口8万1062人(2015年国勢調査)。65歳以上の高齢者が占める割合は40.3%(2015年現在)に上ります。
柳井市内には、神経難病などが強みの国立病院機構柳井医療センターと、ケアミックス型の医療法人松栄会坂本病院がありますが、DPC対象病院で急性期を担い、7対1入院基本料を維持しているのは当院だけ。2次救急を担うのもここだけとなり、24時間365日当番という状態です。
3次救急は、隣接する岩国医療圏の岩国医療センター(岩国市)、周南医療圏の徳山中央病院(周南市)にお願いしています。私たちの病院は2次救急までをしっかり受けることが、地域で求められている役割です。
―課題は。
患者さんに選んでもらえる病院となるためには、救急が大切です。救急車や救急の患者さんを断らず、良い状態にして帰っていただくことが、もっとも大事なことです。
しかし、人員不足は否定できません。2004年の新医師臨床研修制度の導入によって、当院の医師は50人弱から大きく減りました。今、少し持ち直してきて37人です。
特に困っているのが、脳疾患を診療できる医師の不足です。私が当院に赴任してきた20年ほど前は、脳外科医3人、神経内科医2人で、脳血管障害などを診ていました。今は、神経内科医がゼロ。脳外科医は1人しかいません。
1人の医師で、24時間365日、脳血管障害の患者さんすべてを診ることができず、救急の患者さんに岩国や周南に行ってもらうことが起きてしまっています。
小児科医不足も深刻です。かつて3人いた医師が現在1人。柳井医師会の協力と、子どもの数が少ないという地域事情で、何とか小児救急を診ることができています。
医師不足と偏在は、山口県全体の問題でもあります。特に45歳以下の若い医師の割合が少なくなっています。医師の高齢化も進んでいるのです。このことが、何年か後には、大きな問題になってくると思います。
―2016年、地域医療支援病院を取得されました。
これについては、前院長のころからの悲願だったと言っていいと思います。取得したいと思っていたものの、わずかな差で基準の紹介率・逆紹介率を満たすことができずにいました。
そんな中、高齢化を背景に、整形外科を受診される患者さんが急増し、対応が困難になってきました。そこで整形外科を紹介外来制にしたところ、一気に基準を超え、申請に至ったのです。
当院にはかなり以前から地域連携室があり、スタッフも熱心に取り組んできていました。開業医の先生方との連携が密に取れていると思います。私も、院長に就任した後、医療圏内で常勤医がいるすべての診療所にうかがってきました。開業医の先生方と助け合う重要性をいつも感じています。
―院長就任から2年。経営面で大変だったことは。
国の政策に合わせて、右往左往している、という実感ですね。当院は、2008年の新築後、しばらくは赤字が続きましたが、減価償却が少なくなってからは黒字を続けています。
就任直後の2015年の中心課題は7対1入院基本料を維持することでした。当院はそのころ、7対1病棟328床、回復期リハビリ病棟32床で運営していました。
ところが、7対1入院基本料の要件である重症患者割合をクリアできなくなってきていたのです。2016年の診療報酬改定で要件がさらに厳しくなることは見えていました。そこで7対1病棟のうち54床を地域包括ケア病床へ転換しました。現在は、改定後の要件を満たしています。
この地域の人口減少は続き、医療需要も今後、減っていくでしょう。一般的な「商売」ならば、お客さんが少なくなったらお客さんの多い商圏に移ろうという話になると思います。でも、医療はそうはいきません。患者さんの変化とともに、病院も少しずつマイナーチェンジしながら、運営していくことが大切だと感じています。
そして、日用品なら何でもそろうスーパーマーケットのように、よくある疾患をきちんと診ることができる、そんな地域に根付いた病院であり続けたいと思っています。
山口県厚生農業協同組合連合会 周東総合病院
山口県柳井市古開作1000-1
TEL:0820-22-3456
http://www.hsp-shuto.jp