新院長に聞く 今春、「あいちせぼね病院」開院
椎間板ヘルニアなど、腰痛の原因となる疾患の低侵襲な手術を中心に、国内で有数の症例数を持つあいち腰痛オペクリニック。2017年4月にあいちせぼね病院を隣地に開院する。医療法人全医会伊藤不二夫理事長・院長の息子で、新病院の院長となる、あいち腰痛オペクリニックの全哉副院長に話を聞いた。
―あいち腰痛オペクリニックの特徴は。
1997年に父が開設したあいち腰痛オペクリニックは、間もなく20年を迎えます。
これまで、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄(さく)症、脊椎圧迫骨折の三つの疾患を中心に、低侵襲な手術に取り組んできました。なかでも、腰椎椎間板ヘルニア内視鏡手術(PELD法)は、切開創が6mmと、大変小さい手術ですので、1泊2日の入院で手術を実施。翌日には自宅に戻れるとあって、多忙な社会人や高齢の患者に、大変ニーズの高い術式として実績を伸ばしています。
この10年間でみると全手術で、症例数は1万959 件(右下表)。脊椎(せぼね)に関する症例数でみると、全国トップレベルです。この実績が評価され、愛知県のみならず、全国、あるいは海外からも多くの患者さんがお越しになっています。
昨年の10月からは、新たに、仙骨内視鏡下腰椎ヘルニア摘出術も始めています。すでに、10例ほど行い、さらに新しい機器も導入。針を刺す位置も変わり切開創もこれまでの半分の3mmになり、より低侵襲となりました。このままでいけば、日帰りでできるのではと考えています。
しかし、クリニックでの手術は国内では保険適用となっていないため、自費での診療となります。最先端の手術ではありますが、誰もが受けられる手術ではないという課題もありました。
―あいちせぼね病院はどのような病院になるのですか。
整形外科医が7人、内科医が2人の体制をとり、48床でスタートします。クリニック同様に、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎圧迫骨折の三つの疾患を主に扱いますが、保険適用の手術も行っていきます。
また、以前勤務していた名古屋大学での経験を生かして、背骨の腫瘍、脊椎側弯(わん)症、難病指定である後縦靭(じん)帯骨化症など、これまでクリニックでは扱っていなかった疾患も治療していきます。
病院とクリニックが力をあわせて、背骨の病気はここに来ればすべて解決できるようにしたいと思っています。
―あいちせぼね病院での新たな取り組みは。
電子カルテの導入とともに、「ドクタークラークシステム」を取り入れます。これは、医師事務補助というスタッフが、診察する医師の横に付き、患者さんとのやりとりをすべて、カルテに入力するというものです。
医師は、カルテの入力をする必要がないので、患者さんときちんと向き合いながら、診察や治療に集中できます。
また、診察をしている隣の診察室では補助スタッフが次の患者さんに問診をしています。医師がそこへ移動すると、すでに簡単な問診は終わっていますので、次の診察にスムーズに入ることができます。
患者さんの待ち時間がぐっと減らせますし、よく言われるように「患者さんの顔も見ずにパソコンの画面ばかり見ている」というようなことがなくなります。加えて、多くの患者さんを診ることができます。何より、患者さんとじっくり話すことができると思っています。
すでに、愛知県下でも3、4軒の病院で導入されています。実際にこの方法を使っているある医師の方に話をうかがうと、「カルテ入力がなくなって、午前中200人診ても疲れない」とおっしゃっていました。新病院には診察室が5、6室あるのでこのスタッフは5、6人は採用する予定です。今月からは職員の教育もスタートします。
―他には。
最新のMRI機器を導入し、次世代の分析器「トラクトグラフィー」も取り入れます。トラクトグラフィーで描きだされる画像は、神経の見え方が微細ですので、より科学的に解析でき、医師が痛みの程度や重症度をより分かりやすく理解できるようになります。
手術室も3室設けますが、100㎡と大変広く、見学もできるようにします。手術の様子を、会議室のモニターで見ることもできますよ。
また、患者さんの心を癒やすため、待合に水槽を設置します。美しい魚たちを見て楽しんでほしいですね。整形外科の病院ですから、患者さんの痛みを治療でとることはもちろんですが、スタッフの心遣いも大切にしたいですね。患者さんには体も心も良くなって、ご自宅に帰っていただきたいと思っています。