強みを生かして地域医療を支える
津山慈風会は慢性期から在宅までを担う津山中央記念病院、急性期の津山中央病院のほか、クリニックや福祉施設、看護専門学校などを備えている。
津山中央記念病院の和仁孝夫院長(以下:院長)と透析センターの堀家英之センター長(以下:堀家)に話を聞いた。
◎歴史
院長 1954(昭和29)年7月に岡山県北初の総合病院である津山中央病院(以降、中央病院)が当時津山市街地中心部であったこの地(津山市二階町)に開院しました。その後1999年12月に中央病院は市東側の郊外である川崎地区に移転しました。さらに中央病院移転後の2002年に新築リニューアルオープンする形で津山中央記念病院が当地に開院しました。
法人内で急性期は中央病院、慢性期は当院というすみ分けができており、当院は中央病院で急性期治療後の患者さんや比較的病状の安定した慢性期の患者さん、また自宅退院前のリハビリ目的の患者さん、さらにターミナルケアを要する患者さんなどを中心に受け入れています。法人内には病院や多くの施設がそろっていて、特に中央病院は津山地域周辺医療圏の基幹病院として医療を支えている状態です。しかし、そうは言っても地域の他の病院・診療所との協力は必須です。法人内だけでなく、地域の医療機関との連携がこれまで以上にスムーズにいくように地域連携強化に取り組んでいます。
◎透析センター
院長 当院の強みの一つに挙げられるのが透析センターです。2年半前には川崎医科大学の腎臓・高血圧内科学教室(柏原直樹教授)から堀家英之先生に来てもらいました。
堀家先生は透析のスペシャリストで、同センターのセンター長を務めてもらっています。今後ますます充実したセンターになることを確信しています。
堀家 当センターは岡山県北部で最も患者数の多い透析施設です。ベッド数は47床でOn-LineHDFを18台備えています。スタッフは看護師が15人、臨床工学士が10人、医療アシスタントが2人の27人体制です。
透析センターでは、外来透析、入院透析、透析導入、腹膜透析などをしています。また透析導入前の療法選択説明もしています。
回診には私と看護師長、薬剤師、栄養士たちが一緒に回り、検査結果を見ながら治療方針をその都度きめています。一緒に回診をすることで密な情報共有ができているのではないでしょうか。
◎美作CKDネットワーク
堀家 2015年2月に県北の先生方と一緒に「美作CKDネットワーク」を発足させました。
慢性腎臓病(CKD)の予防・早期治療および腎不全進展の抑制、透析治療の回避・遅延を目的に専門医と非専門医が連携を図るネットワークです。年2回の学術講演会と情報交換会を開催しています。
同ネットワークの構築により、当院のCKD紹介患者も増えてきました。CKDがこの地域で認知されてきたのではないかと感じています。
今後は市民への啓発活動に力を入れなければなりません。CKDネットワーク内でも議題に挙がっていて、今後の課題ですね。
岡山市や倉敷市のような大きな自治体と同じような活動は難しいですが、県北地域で可能な活動を模索している最中です。
◎ポリシー
堀家 透析治療においては、患者さんの検査データだけを見て診療を行ってはいけないと思っています。生活スタイルや家族背景、生活環境などを考慮し、その人にとって、最も良いと思われる治療の提供を心がけるようにしています。そのためには患者さんにしっかり説明し、じっくり話を聞くことが重要です。
「これはだめ、あれもだめ」と言い過ぎると患者さんのストレスが増え、透析治療もうまくいかなくなってしまいます。患者さんそれぞれの性格・生活に合わせた指導が重要だと考えています。
◎リハビリ
院長 リハビリテーション強化の必要性を感じ、リハビリ強化のプロジェクトチームを立ち上げました。また隣接する津山中央クリニックとも連動したリハビリの運用を考えています。
この地域は高齢者が多く、独居や老老介護世帯がとても多いのが特徴です。当院でしっかりリハビリテーションをし、ADL(日常生活動作)を向上させて自宅に戻っていただきたいのです。
◎地域医療構想
院長 地域医療構想では、病床稼働率が低い病院の病床を削減すると言われています。たしかにベッドや医師、看護師を減らせば医療費は削減できるでしょう。しかし、これまでも同様の取り組みをして、その都度医療崩壊が起こってきました。
都会では、それほど大きな問題にはならないでしょう。しかし、地方は違います。岡山県北部の大規模病院は中央病院だけです。大都市と医療資源が少ない地方とを同じ物差しで測るべきではないと思うのです。
政府には、もう少し地域性を考慮した構想を練ってもらうことを期待したいですね。
◎願い
院長 最近、自分の専門領域の疾患しか診ることができない医師が増えていると感じています。同じ法人の中央病院には救命救急センターがあります。救急に携わると幅広い領域を診られる医師になれると思うので、ぜひ中央病院で研修を受けてもらいたいですね。
若いうちは数多くの患者さんを診て経験を積むことが大事なことだと思います。