正しく、品よく、心をこめて 質の高い医療と心のこもったケアを提供する
◎正しく、品よく、心をこめて
当院のモットーである「正しく、品よく、心をこめて」は、病院のシンボルマークでもある3枚の葉でも表現されています。
「正しく」というのはつまり、正しい医学的な知識であり、正しい技術や医療の質を指します。この点について、医療においては多くの疾患治療ガイドラインが存在します。もちろん、ガイドラインを学ぶことは非常に重要なことですが、それがすべてではありません。
というのも、ガイドラインの基礎になっているデータの多くは、大規模臨床試験の結果から抽出されたものであることに留意してほしいのです。これらのデータはさまざまな合併症を有する患者さんを排除したものであり、いわゆるチャンピオンデータ(望ましい結果に合致するデータ)と呼ばれる可能性のあるものです。
患者さんにはそれぞれに個人差があるので、すべての人にガイドラインが当てはまるとは限りません。ガイドラインやクリティカルパスについて無批判に受け入れるべきではなく、患者さんそれぞれにとって最適な治療法を考える必要があるのです。
「品よく」というのは、少し理解しにくい表現かもしれません。私はこの言葉に、医療倫理という意味を込めました。医療倫理の4原則は、自律尊重原則、無危害原則、善行原則、正義原則からなり、この原則を意識しながら診療を行うことが重要です。
三つ目の「心をこめて」とは、心をこめて患者さんを診療し、ケアにあたることを指します。熱意が患者さんに伝わり、闘病心を鼓舞するような医療者になることが理想だと考えます。
昨年4月の入職式の際には三つのモットーの意味を説明するとともに、桜の話をしました。桜は非常に美しいが、一瞬で散ります。そのはかなさが日本人に愛されるゆえんでもありますが、ちょうど4月1日は桜が満開でした。院内や近隣の桜の名所を紹介しつつ、入職した方は当院で大きな花を咲かせてほしいとエールを送りました。
職員それぞれが大きな花、すなわち自分の目標を常に意識しながら活躍することが、そのまま大阪医療センターが地域に愛される病院に成長することにつながるということでもあります。そういった日々の積み重ねの先に、名実ともに国内でも有数の病院になるという未来があるのです。
国立病院機構は2015年に非公務員化されましたが、国が提供すべき医療、すなわち政策医療を担っていることになんら変わりはありません。
当院では、三大疾患である、がん、心臓病、脳卒中をはじめとした広い領域の疾患に対応しており、患者さんに高度で総合的な医療を提供するため、病院すべての能力を結集して職員が昼夜を問わず取り組んでいます。
その中には、エイズやC型肝炎などの感染症や高度救命救急医療、災害医療も含まれています。
これから提供される地域包括ケアシステムにおいては、地域における高度急性期医療や急性期医療を提供するとともに、地域とのつながりをますます深めたいと思います。
このミッションを達成するために、医師や医療者向けの「法円坂地域医療フォーラム」や「緩和ケアセミナー」、さらに市民向けの「大阪健康セミナー」などを定期的に開催しています。
また、未来の医療人を育てるために、中学生・高校生向けに「アドベンチャーHospital in 大阪医療センター」を毎年開催しています。
さらに、医師をはじめとする多くの医療職の育成にも力を注いでいます。医師の臨床研修病院の指定を受けており、数多くの大学医学部、医科大学、薬科大学、看護系大学などの養成機関から学生を受け入れ、実習の場を提供しています。加えて、複数の学会から専門医養成のための研修施設としての認定も受けています。
◎臨床研究を重視
臨床、教育とともに当院がはたすべき欠かせない機能として、臨床研究があります。
医療の発展のためには臨床に深く根差した研究を進めることが必要なことは言うまでもありません。当院は臨床研究センターを有しており、新薬や新しい医療機器の開発に欠かすことのできないプロセスである治験に積極的に取り組んでいます。国立病院機構140あまりの病院群のなかでも有数の研究センターでもあり、多くの国際的臨床試験にも参加して診療に役立つエビデンスを蓄積しています。
◎新病院の建設へむけて
今後の課題として、まずは地域医療構想のなかで当院が占める役割(高度急性期・急性期の医療センター)を果たすべく、病院機能をさらに充実させなければなりません。
2015年5月から救急当直体制を見直し、3次救急だけでなく2次救急についても全日診療可能としました。さらに同じ年の11月からはこれまで縦割りだった救急体制を一体化し、より多くの救急患者さんを受け入れることができるようになりました。
平日の外来紹介については、今年の1月から登録医や連携医の方々がインターネット予約できるシステムを導入します。
現在、古くなった病院建物の新築工事を進めていますが、敷地内の発掘調査によって新築計画区の一部に難波宮(なにわのみや/奈良時代、聖武天皇の皇居)の遺跡が発見されました。その影響で設計を一部見直しています。2019年には新病院が完成する予定でしたが、やや遅れるかもしれませんね。