福岡大学医学部 腫瘍・血液・感染症内科学 髙松 泰 教授

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がんの在宅医療を担う医師の育成を

【たかまつ・やすし】 福岡県立修猷館高校卒業 1987九州大学医学部卒業 同第一内科入局 1988 宮崎県立宮崎病院内科 1989 九州大学医学部第一内科 1993 宮崎県立宮崎病院内科 1996 豪州アデレード大学ハンソンがん研究所留学 1999 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科 2015 同教授

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―教室の特徴を教えてください。

 当科は、臨床腫瘍学、血液内科学、感染症学を専門とする内科学教室です。腫瘍・血液部門では、抗がん薬の感受性が高い血液腫瘍には治癒を目指した薬物療法を行っています。固形がんには外科、放射線科と協力して集学的治療を実践。感染症部門は、病院内で発生した重症感染症患者の治療に介入し、院内の感染制御に務めています。

 前任の田村和夫教授は血液内科の専門医であると同時に、固形がんに対する薬物療法を日本に広めようと、日本臨床腫瘍学会を立ち上げた中心メンバーです。私は白血病の抗がん薬治療と骨髄移植を専門にしていましたが、最近10年間で固形がんの抗がん薬治療が進歩し、需要が高まってきました。このような状況下、当科の役割は血液疾患中心の治療から固形がんの治療にシフトし、現在は血液疾患と固形がんを半々の割合で診療しています。固形がんも、消化器、呼吸器、乳腺など、全臓器のがんに対する治療を行っています。このような診療科は全国でもかなり珍しいと思います。

―固形がん治療の傾向は。

 私が研修医のころは、胃がんであっても肺がんであっても、転移があり、切除不能と言われた固形がんの患者さんの平均余命は3~6カ月。有効な治療法がなく、本人に病名を告知しないことも珍しくない時代でした。しかし、現在は抗がん薬治療によって、がんに伴う症状を緩和し、患者さんのQOL(日常生活の質)を良くすることができます。生存期間も抗がん薬治療を行うことで6~12カ月まで延長しました。さらに分子標的薬が開発され、肺がんや大腸がんでは2~3年を超えるようになっています。

 生存期間が延長することは素晴らしいのですが、がんを患った状態で治療を続けながら日常生活をすることになります。無症状で普通の生活ができるわけではありません。また、抗がん薬治療の大半は外来で行いますので、患者さんは自ら自宅で副作用を管理しなければなりません。

 治療期間が長くなると医療費もかかりますし、その間の生活費も必要です。抗がん薬治療を行う病院だけでは、がん患者の治療を担うことはできず、在宅医や訪問看護師、ソーシャルワーカーなど多職種が協力してサポートすることが求められています。

 現在、がん患者に対して行われている在宅医療は、がんに対する積極的な治療を終了した後に開始されることが一般的です。しかし、本来はがんと診断されて精神的苦痛を覚えているときや、抗がん薬治療中でさまざまな身体的苦痛を感じているときなど、もっと早い時期から病院と地域の医療者が連携して患者をサポートするシステムが必要です。われわれは、がんと診断されたときからの地域連携に取り組んでいます。

 しかし、終末期医療を行う在宅医、訪問看護師は増えていますが、抗がん薬治療中の患者に対する診療経験は少なく、このような連携に二の足を踏まれることが多いのが現状です。

 福岡大学医学部には実家が開業医である学生が多く在籍しています。大学である程度の経験を積むと実家を継ぐことが多く、なかなか大学に残ってくれないことが悩みです。でも、逆に考えると地域医療を担う医師を輩出できるという利点があります。

 学生時代からがんの治療や緩和医療、がん患者に対する対処の仕方を学んでいれば、がん患者だからといって臆することなく診療できる医師になれます。がん患者が安心して在宅医療を受けられる医師を育てることが本学の役割だと考えています。

―九州にはHTLV-1キャリアが多いと聞きました。

 HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス―I型)は、一度感染すると生涯ウイルスを持ち続けることになります。HTLV-1キャリアが成人T細胞白血病リンパ腫を発症する危険性は4~5%。40歳を過ぎたキャリア1000人のうち1年間に1人程度の割合で発症し、平均発症年齢は60~70歳です。

 白血病や悪性リンパ腫など血液の悪性腫瘍の形態をとって突然発症し、治療をすれば、いったんは病気が消えますが、残念ながら必ず再発します。治療しなければ数週間~数カ月で命を落とす病気で、抗がん薬治療で治すことは困難です。

 主な感染経路は性交渉、輸血、母子感染。特に母乳による感染率が高いため、母子感染を防ぐ目的で、妊婦さんがこのウイルスを持っているかどうか、抗体チェックをすることが必要です。検査の結果、陽性であれば、そのことを本人に伝え、母乳を与えずに育てるようにすれば子どもに感染する危険性は限りなくゼロに近づきます。

 子どもへの感染を予防できることはいいことですが、母親にとっては、つらい告知になります。母乳を与えられないこと、将来自分が白血病やリンパ腫を発症する危険性があること、しかも発症を予防する方法や発症後の有効な治療法がないことなど、厳しい宣告を受けるからです。その不安を和らげるためには、母親に対するカウンセリングも重要となります。

 九州地区のHTLV-1感染者数は40~50万人ほど。世界的に見ても多い地域です。キャリアの方に自分の状態や病気について十分に知ってもらい、不安を解消していただくために、本学では2010年に「HTLV-1キャリア外来」を開設しました。一人でも多くの患者さんに利用していただきたいですね。

―エイズ患者も増加していると耳にします。

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 新たにHIVウイルスに感染する人の数は、ここ数年増えていません。ただ、ウイルスの増殖を抑える有効な治療薬が開発されたことで、昔であればエイズを発症して亡くなっていた方でも、治療を受けながら通常の生活を送ることができる時代になりました。それによって、感染者の数が年々増えているのです。

 エイズに限らず、がん、糖尿病など、さまざまな疾患に対する特効薬が開発され、病気をコントロールしながら長生きできるようになりました。しかし、治癒するわけではなく、治療を長期間続けなければなりません。これらの新規薬剤は高額なものが多く、国の財政を圧迫する一因になっています。今後、医療が目指すべきことは、病気を未然に防ぎ、予防医学を発展させることです。

 そのために重要なのは「教育」だと思います。最近は小学校や地域での啓発活動がさかんになり、われわれも地域の小学校や公民館に出向いて、がんの話をしています。その時に問題となるのは、どの程度具体的な話ができるかどうかだと思います。

 例えば、エイズや子宮頸がんは性交渉が原因で発症します。予防のためには、避妊具の使い方について教えることも必要です。これまで日本では性教育はタブー視されてきたと思いますが、これからは子どもに対してだけではなく、親や社会に対しても性教育の重要性を伝えることが必要なのかもしれませんね。

 予防医学に関する教育、啓発活動は、医療者だけでなく、学校やマスコミなど、さまざまな職種の人が協力して取り組んでいかなければならない問題だと考えています。

福岡大学病院
福岡市城南区七隈7-45-1
TEL:092-801-1011(代表)
http://www.hop.fukuoka-u.ac.jp

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